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N.G397年 ラフィン戦争⑧
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ダムに突入し無事制圧したザクスの元に一本の通信が入る。
「ザクス貴様何してるかわかっているのか!? 貴様のせいで私の作戦がめちゃくちゃになったんだぞ!」
「マーヴェリック大佐、俺はただ虐殺を止めただけだ。あんたがしようとしていたのはただの虐殺だ。あんな物戦術でもなんでもない」
マーヴェリックがザクスの動きを察知し文句を言うがザクスは勿論そんな事は歯牙にもかけない。
それでもマーヴェリックは作戦を強行すべく兵全体に通信を流した。
「私はここラングレーの指揮を任されているマーヴェリック大佐だ。ザクス・グルーバー大佐がダムを占拠し我々の作戦を妨害している。誰でもいい、ザクスを排除し作戦を続行させるんだ」
殆どの兵は作戦の全容など知らされていない為、全体にどよめきが起こった。
『ザクス大佐を排除? 誰が出来るか!』
『あのザクス大佐が作戦の妨害? 何故?』
『そもそも作戦とはどんな内容なんだ?』
基地全体に動揺が広がっていく。
「ラングレーに駐屯している全ての兵よ。私はザクス・グルーバー大佐だ。マーヴェリック大佐がしようとしていた作戦はダムを破壊し数十万の犠牲者を出してでもセントラルボーデン軍を殲滅しようとする作戦だ。そんな物は作戦や戦略などではなく、ただの虐殺であり殺戮行為だ。私は人道的観点からこのマーヴェリック大佐の作戦を許すつもりはなく、この作戦に加担する者は容赦なく断罪する。マーヴェリックの命令により仕方なく付き従っていた者も私の意見に賛同するなら私の元へと来て欲しい。必ず命令違反にはさせない。私が守ろう」
ザクスが全兵士に向けて行ったこの通信は兵士達から賛同を受けるには十分であり、ザクス達の行動を邪魔する者などいなかった。
殆どの兵士がザクス側に立ち、逆にマーヴェリックは虐殺を企てたとし拘束される事となる。
「大佐、ひとまずダム崩壊という最悪のシナリオは回避しましたが、セントラルボーデン軍が迫って来てます。どうしますか? マーヴェリック大佐がダム破壊しか考えてなかったせいで今から打てる手は限られています」
ヴェルザードがザクスの傍らに駆け寄り次の作戦を仰いだ。しかしザクスは穏やかな笑みを浮かべ首を振る。
「ヴェルザードの言う通り今から打てる手なんか殆ど無い。今更足掻いた所で悪戯に兵を消耗するだけだ。不本意ながらここラングレーを放棄し一旦下がろう」
ザクスがそう決断してからの動きは早かった。重要なデータ等は次々に破壊し兵達は退避行動に移った。
「姉さん、あいつら基地を放棄するみたいだ。ばたばたと荷物まとめて出て行こうとしてやがる」
狙撃場所となった高層ビルでリオが鷹の目で見ながらクリスに語り掛ける。
「そう……あっちは上手くいったのね。じゃあ私達も仕上げに入りましょうか」
そう言ってクリスは腰を上げるとリオと共に街の外れに向かってザクス達から託された車両に乗り走り出した。
ラングレーの街から少し走った所でセントラルボーデン軍に合流したクリス達は司令官へ面会を求めた。作戦行動中に司令官への面会など本来なら叶うはずもないのだが、「ラングレーに関する重要な情報」という事を伝えると特別に許可が下りた。
「今我々はラングレー奪還作戦の真っ只中だ。そんな時に私に面会を求めるとは余程の事だね?」
セントラルボーデン軍ルーシェル・ハイトマン将軍が眉根を寄せてクリス達に問い掛けていた。その口調は静かな物であったがその鋭い眼光にさすがのクリスも気圧されそうになる。
「はい、私とリオ軍曹は敵兵士と戦闘になった際、ラングレーの指揮官であるマーヴェリック大佐がダム爆破を企てているとの情報を手にしたのです」
「ほほう、ダムをか。ラフィンの奴らが考えそうな愚行だな」
「はい。私達はその情報を軍に伝えるには時間が足りないと判断し、単独で阻止に動きました。先程ダムに設置された爆薬の無力化には成功したのですが向こうの動きが静か過ぎます。ダム爆破を企てるような連中ですし、まだ何かあるのかもしれません。少し様子を見てみてはどうでしょう」
クリス達は膝をつき頭を下げたままルーシェル将軍に報告しつつ進言していた。
「なるほど。確かにこちらの動きは把握しているはずなのに反撃がなく静か過ぎるとは思っていたが……君の言う事も一理あるな。少し様子を見るか。よし、ご苦労だった。下がって所属部隊に戻りなさい」
クリス達は一礼した後静かに部屋を後にした。
『さすがに威圧感が半端ないな。少しだけ時間は稼いだから早く逃げなよザクス大佐』
「姉さん、何か笑ってます?」
自然と笑みを浮かべていたクリスにリオが不思議そうに問い掛けた。
「はは、ひと仕事終えたんだから少しは安心するでしょ」
クリスは笑って誤魔化すようにリオの背中を軽く叩いた。
この数時間後、セントラルボーデン軍はラングレーに攻め入ったが既にラフィン軍の姿はなく、ほぼ戦闘などする事なくセントラルボーデン軍はラングレーを奪還する事に成功した。
奇しくもこのラングレー奪還からセントラルボーデン軍が攻勢に転じて行く事になる。
「ザクス貴様何してるかわかっているのか!? 貴様のせいで私の作戦がめちゃくちゃになったんだぞ!」
「マーヴェリック大佐、俺はただ虐殺を止めただけだ。あんたがしようとしていたのはただの虐殺だ。あんな物戦術でもなんでもない」
マーヴェリックがザクスの動きを察知し文句を言うがザクスは勿論そんな事は歯牙にもかけない。
それでもマーヴェリックは作戦を強行すべく兵全体に通信を流した。
「私はここラングレーの指揮を任されているマーヴェリック大佐だ。ザクス・グルーバー大佐がダムを占拠し我々の作戦を妨害している。誰でもいい、ザクスを排除し作戦を続行させるんだ」
殆どの兵は作戦の全容など知らされていない為、全体にどよめきが起こった。
『ザクス大佐を排除? 誰が出来るか!』
『あのザクス大佐が作戦の妨害? 何故?』
『そもそも作戦とはどんな内容なんだ?』
基地全体に動揺が広がっていく。
「ラングレーに駐屯している全ての兵よ。私はザクス・グルーバー大佐だ。マーヴェリック大佐がしようとしていた作戦はダムを破壊し数十万の犠牲者を出してでもセントラルボーデン軍を殲滅しようとする作戦だ。そんな物は作戦や戦略などではなく、ただの虐殺であり殺戮行為だ。私は人道的観点からこのマーヴェリック大佐の作戦を許すつもりはなく、この作戦に加担する者は容赦なく断罪する。マーヴェリックの命令により仕方なく付き従っていた者も私の意見に賛同するなら私の元へと来て欲しい。必ず命令違反にはさせない。私が守ろう」
ザクスが全兵士に向けて行ったこの通信は兵士達から賛同を受けるには十分であり、ザクス達の行動を邪魔する者などいなかった。
殆どの兵士がザクス側に立ち、逆にマーヴェリックは虐殺を企てたとし拘束される事となる。
「大佐、ひとまずダム崩壊という最悪のシナリオは回避しましたが、セントラルボーデン軍が迫って来てます。どうしますか? マーヴェリック大佐がダム破壊しか考えてなかったせいで今から打てる手は限られています」
ヴェルザードがザクスの傍らに駆け寄り次の作戦を仰いだ。しかしザクスは穏やかな笑みを浮かべ首を振る。
「ヴェルザードの言う通り今から打てる手なんか殆ど無い。今更足掻いた所で悪戯に兵を消耗するだけだ。不本意ながらここラングレーを放棄し一旦下がろう」
ザクスがそう決断してからの動きは早かった。重要なデータ等は次々に破壊し兵達は退避行動に移った。
「姉さん、あいつら基地を放棄するみたいだ。ばたばたと荷物まとめて出て行こうとしてやがる」
狙撃場所となった高層ビルでリオが鷹の目で見ながらクリスに語り掛ける。
「そう……あっちは上手くいったのね。じゃあ私達も仕上げに入りましょうか」
そう言ってクリスは腰を上げるとリオと共に街の外れに向かってザクス達から託された車両に乗り走り出した。
ラングレーの街から少し走った所でセントラルボーデン軍に合流したクリス達は司令官へ面会を求めた。作戦行動中に司令官への面会など本来なら叶うはずもないのだが、「ラングレーに関する重要な情報」という事を伝えると特別に許可が下りた。
「今我々はラングレー奪還作戦の真っ只中だ。そんな時に私に面会を求めるとは余程の事だね?」
セントラルボーデン軍ルーシェル・ハイトマン将軍が眉根を寄せてクリス達に問い掛けていた。その口調は静かな物であったがその鋭い眼光にさすがのクリスも気圧されそうになる。
「はい、私とリオ軍曹は敵兵士と戦闘になった際、ラングレーの指揮官であるマーヴェリック大佐がダム爆破を企てているとの情報を手にしたのです」
「ほほう、ダムをか。ラフィンの奴らが考えそうな愚行だな」
「はい。私達はその情報を軍に伝えるには時間が足りないと判断し、単独で阻止に動きました。先程ダムに設置された爆薬の無力化には成功したのですが向こうの動きが静か過ぎます。ダム爆破を企てるような連中ですし、まだ何かあるのかもしれません。少し様子を見てみてはどうでしょう」
クリス達は膝をつき頭を下げたままルーシェル将軍に報告しつつ進言していた。
「なるほど。確かにこちらの動きは把握しているはずなのに反撃がなく静か過ぎるとは思っていたが……君の言う事も一理あるな。少し様子を見るか。よし、ご苦労だった。下がって所属部隊に戻りなさい」
クリス達は一礼した後静かに部屋を後にした。
『さすがに威圧感が半端ないな。少しだけ時間は稼いだから早く逃げなよザクス大佐』
「姉さん、何か笑ってます?」
自然と笑みを浮かべていたクリスにリオが不思議そうに問い掛けた。
「はは、ひと仕事終えたんだから少しは安心するでしょ」
クリスは笑って誤魔化すようにリオの背中を軽く叩いた。
この数時間後、セントラルボーデン軍はラングレーに攻め入ったが既にラフィン軍の姿はなく、ほぼ戦闘などする事なくセントラルボーデン軍はラングレーを奪還する事に成功した。
奇しくもこのラングレー奪還からセントラルボーデン軍が攻勢に転じて行く事になる。
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