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再会②
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「じゃあまずはお前からぶっ殺してやるよ色男」
ゲイグールが拳に炎を灯しながらライデルへと突進して行く。
「姉ちゃん早く距離を取れ。俺達は長くもたねえぞ」
ライデルがすぐ近くにいたユウナに小声で語り掛けると、ユウナも戸惑う表情を見せながら森の奥へと駆け出して行った。
実際バトルスーツもなく、丸腰の໋ライデル達ではバトルスーツを装着し魔法も使えるゲイグール達に勝てる可能性は限りなくゼロに近かった。今は不意討ちとライデル達の経験値でなんとか均衡を保っているだけでゲイグールが少し冷静になればすぐにその均衡は崩れてしまう物だった。
一方アンドレと対峙しているリオも決断を迫られていた。アンドレの雷を躱しながら身を潜めてはいるが、持っている武器は小型のナイフが一本だけ。銃を持った兵を潜ませてはいるが狙撃用ライフル等ではない為、上手くいくかは不透明だった。
『恐らくこの状況を打破出来る可能性が一番高いのは私が本来の戦い方をする事。だけどこんなナイフ一本でバトルスーツ装着の奴らに通用するのか? しかも相手は魔法が使える奴が二人はいる……でも問題は……』
リオが躊躇していた理由、それは戦いの中で見せてしまう狂ったもう一つの本性だ。あれが自分の中にあるもう一つの本性、それはしっかりと認めている。だがそれをユウナやライデルに見られるのが嫌だった。自分のあんな姿を見られればきっと見る目が変わってしまう。
「……だがそんな事言ってる場合でもないか」
それでもリオは覚悟を決めた。それまでの笑っていた様な切れ長の細い目は鋭さを増し、普段の人を食った様な笑みは不気味な笑みへと変わっていた。僅かに開かれた瞳から放たれる鋭い眼光には殺気が混じり、対峙するアンドレはその異質な雰囲気に恐怖さえ感じた。
「ぐっ、なんだあの女? ゲイグール来い! アレをやる」
異変を察したアンドレがゲイグールに叫ぶとゲイグールが即座に反応する。ゲイグールが傍に来るとアンドレは腰にあったケースに手を伸ばす。アンドレはケースから注射器の様な物を取り出すとそのままゲイグールの首筋に打ち込んだ。
「ぐおぉぉぉ! 来た来たー!」
「ふん、次はドーピングかよ」
鼻息荒く叫ぶゲイグールを見てリオがため息まじりに呟いた。
だが次の瞬間、雄叫びを上げながらゲイグールがリオに向かって殴り掛かかる。凄まじい勢いで拳を繰り出すゲイグールだったが、リオは更に上回るスピードで全てを躱していく。
「そんな興奮しながら迫ってくるんじゃねぇよ!」
凄まじい勢いで殴り掛かってくるゲイグールの顎先をリオが蹴り上げる。顔が跳ね上がるゲイグールだったがそれでもゲイグールの勢いは衰える事なく攻勢を強めてくる。リオは躱しながら再びカウンター気味に蹴り技を見舞うがゲイグールが止まる事はなかった。
「はぁ、はぁ、何発入れたと思ってんのよ。蹴られても鼻血出しながら興奮して迫ってくるし、ただの変態か?」
鼻血を出しながら笑みを浮かべるゲイグールに対して、少し肩で息をしながら呆れた様にリオが呟いた。
「お前生意気だな。決めた、お前はひん剥いてまずは楽しまさせてもらおう」
「はっ、ふざけんなよブ男が。アタシだって相手ぐらい選ぶわ。お前の相手するぐらいだったら舌噛んで死んでやるってね」
そう言って舌を出して挑発するリオにゲイグールが再び飛びかかる。ゲイグールの猛攻をしのぎながら手にしたナイフを振りかざすリオだったがナイフによる攻撃だけは上手く躱すか防がれていた。
『クソっ、肝心な攻撃だけは防がれる。向こうもやっぱりナイフは警戒してるって事か。だったら少しパターンを変えて……』
一度下がって距離を取ったリオが再びゲイグールに向かって飛びかかった。どっしりと構えて迎え撃つ体勢のゲイグールに、リオは寸前で地面を蹴り上げる。
草や土が蹴り上げられてゲイグールの視界を覆った。
「クソ、くだらねぇ真似を」
ゲイグールが飛んで来る草や土を手で払ったが目の前に迫っていたリオの姿は既になかった。リオを見失い、周りを見渡しながら焦るゲイグールの背後に立ったリオがナイフを一気にゲイグールの首筋目掛けて振り抜いた。
「首だ! 守れ!」
離れた位置から見ていたアンドレが叫ぶとゲイグールが身を躱しながら腕で防御する。僅かに首筋をかすめたがリオのナイフは空を切った。
「チッ、邪魔しやがって。だが――」
悔しさを露わにするリオだったがゲイグールが体勢を崩しているのを見て、更に攻勢に出る。蹴り技にナイフを駆使しながら攻め込むリオに防戦一方のゲイグールだったが、リオが緩くなった足元に一瞬足を取られてしまった。
その僅かな隙を見逃さなかったゲイグールは両手でしっかりとリオの蹴りを防ぐと、そのままリオの足を掴んで離さなかった。
ゲイグールがリオの足を掴んだまま片手で高く掲げると、リオは逆さ吊りの様な格好になってしまった。
「くっ、しまった」
「へへへ、いい眺めだな」
「離せよ変態!!」
ゲイグールが品のない笑いをしているとリオが無理やり体をねじって足を掴んでいる腕にナイフを突き刺した。
「ぐあっ」
ゲイグールが腕を刺されて叫ぶと、リオはその隙にゲイグールの手から逃れる。しかし次の瞬間、無理やり変な形でナイフを突き立てたせいか、ナイフは一度ゲイグールの腕に刺さったものの、鈍い音を立てて折れてしまった。
それでもなんとか逃れた隙に距離を取りリオが身構える。
『くっ、ナイフが折れたのは痛いがそれよりも掴まれた足が痛む。あの野郎馬鹿力で掴みやがって……』
離れた距離で掴まれていた方の足を少し踏ん張ってみる。
「ぐっ!」
激痛が走り思わずリオが顔を歪めたがすぐにいつもの様に笑みを浮かべる。
ゲイグールが拳に炎を灯しながらライデルへと突進して行く。
「姉ちゃん早く距離を取れ。俺達は長くもたねえぞ」
ライデルがすぐ近くにいたユウナに小声で語り掛けると、ユウナも戸惑う表情を見せながら森の奥へと駆け出して行った。
実際バトルスーツもなく、丸腰の໋ライデル達ではバトルスーツを装着し魔法も使えるゲイグール達に勝てる可能性は限りなくゼロに近かった。今は不意討ちとライデル達の経験値でなんとか均衡を保っているだけでゲイグールが少し冷静になればすぐにその均衡は崩れてしまう物だった。
一方アンドレと対峙しているリオも決断を迫られていた。アンドレの雷を躱しながら身を潜めてはいるが、持っている武器は小型のナイフが一本だけ。銃を持った兵を潜ませてはいるが狙撃用ライフル等ではない為、上手くいくかは不透明だった。
『恐らくこの状況を打破出来る可能性が一番高いのは私が本来の戦い方をする事。だけどこんなナイフ一本でバトルスーツ装着の奴らに通用するのか? しかも相手は魔法が使える奴が二人はいる……でも問題は……』
リオが躊躇していた理由、それは戦いの中で見せてしまう狂ったもう一つの本性だ。あれが自分の中にあるもう一つの本性、それはしっかりと認めている。だがそれをユウナやライデルに見られるのが嫌だった。自分のあんな姿を見られればきっと見る目が変わってしまう。
「……だがそんな事言ってる場合でもないか」
それでもリオは覚悟を決めた。それまでの笑っていた様な切れ長の細い目は鋭さを増し、普段の人を食った様な笑みは不気味な笑みへと変わっていた。僅かに開かれた瞳から放たれる鋭い眼光には殺気が混じり、対峙するアンドレはその異質な雰囲気に恐怖さえ感じた。
「ぐっ、なんだあの女? ゲイグール来い! アレをやる」
異変を察したアンドレがゲイグールに叫ぶとゲイグールが即座に反応する。ゲイグールが傍に来るとアンドレは腰にあったケースに手を伸ばす。アンドレはケースから注射器の様な物を取り出すとそのままゲイグールの首筋に打ち込んだ。
「ぐおぉぉぉ! 来た来たー!」
「ふん、次はドーピングかよ」
鼻息荒く叫ぶゲイグールを見てリオがため息まじりに呟いた。
だが次の瞬間、雄叫びを上げながらゲイグールがリオに向かって殴り掛かかる。凄まじい勢いで拳を繰り出すゲイグールだったが、リオは更に上回るスピードで全てを躱していく。
「そんな興奮しながら迫ってくるんじゃねぇよ!」
凄まじい勢いで殴り掛かってくるゲイグールの顎先をリオが蹴り上げる。顔が跳ね上がるゲイグールだったがそれでもゲイグールの勢いは衰える事なく攻勢を強めてくる。リオは躱しながら再びカウンター気味に蹴り技を見舞うがゲイグールが止まる事はなかった。
「はぁ、はぁ、何発入れたと思ってんのよ。蹴られても鼻血出しながら興奮して迫ってくるし、ただの変態か?」
鼻血を出しながら笑みを浮かべるゲイグールに対して、少し肩で息をしながら呆れた様にリオが呟いた。
「お前生意気だな。決めた、お前はひん剥いてまずは楽しまさせてもらおう」
「はっ、ふざけんなよブ男が。アタシだって相手ぐらい選ぶわ。お前の相手するぐらいだったら舌噛んで死んでやるってね」
そう言って舌を出して挑発するリオにゲイグールが再び飛びかかる。ゲイグールの猛攻をしのぎながら手にしたナイフを振りかざすリオだったがナイフによる攻撃だけは上手く躱すか防がれていた。
『クソっ、肝心な攻撃だけは防がれる。向こうもやっぱりナイフは警戒してるって事か。だったら少しパターンを変えて……』
一度下がって距離を取ったリオが再びゲイグールに向かって飛びかかった。どっしりと構えて迎え撃つ体勢のゲイグールに、リオは寸前で地面を蹴り上げる。
草や土が蹴り上げられてゲイグールの視界を覆った。
「クソ、くだらねぇ真似を」
ゲイグールが飛んで来る草や土を手で払ったが目の前に迫っていたリオの姿は既になかった。リオを見失い、周りを見渡しながら焦るゲイグールの背後に立ったリオがナイフを一気にゲイグールの首筋目掛けて振り抜いた。
「首だ! 守れ!」
離れた位置から見ていたアンドレが叫ぶとゲイグールが身を躱しながら腕で防御する。僅かに首筋をかすめたがリオのナイフは空を切った。
「チッ、邪魔しやがって。だが――」
悔しさを露わにするリオだったがゲイグールが体勢を崩しているのを見て、更に攻勢に出る。蹴り技にナイフを駆使しながら攻め込むリオに防戦一方のゲイグールだったが、リオが緩くなった足元に一瞬足を取られてしまった。
その僅かな隙を見逃さなかったゲイグールは両手でしっかりとリオの蹴りを防ぐと、そのままリオの足を掴んで離さなかった。
ゲイグールがリオの足を掴んだまま片手で高く掲げると、リオは逆さ吊りの様な格好になってしまった。
「くっ、しまった」
「へへへ、いい眺めだな」
「離せよ変態!!」
ゲイグールが品のない笑いをしているとリオが無理やり体をねじって足を掴んでいる腕にナイフを突き刺した。
「ぐあっ」
ゲイグールが腕を刺されて叫ぶと、リオはその隙にゲイグールの手から逃れる。しかし次の瞬間、無理やり変な形でナイフを突き立てたせいか、ナイフは一度ゲイグールの腕に刺さったものの、鈍い音を立てて折れてしまった。
それでもなんとか逃れた隙に距離を取りリオが身構える。
『くっ、ナイフが折れたのは痛いがそれよりも掴まれた足が痛む。あの野郎馬鹿力で掴みやがって……』
離れた距離で掴まれていた方の足を少し踏ん張ってみる。
「ぐっ!」
激痛が走り思わずリオが顔を歪めたがすぐにいつもの様に笑みを浮かべる。
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