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復活⑫
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構えるアイリーンがジョシュア達の方を一瞥すると僅かに笑みを見せる。
「貴様らもよくやった。もう下がれ、後は我々が引き継ぐ」
「あ、いえ、我々も共に戦います」
アイリーンの言葉を受けて咄嗟にボーラが答えたが、アイリーンは顔を曇らせる。
「わからんか? 邪魔だと言っている」
「し、失礼しました」
アイリーンの少しきつめの言葉にボーラ達は焦り、すぐに撤退の準備を始めた。
そんな中、セシルが徐ろに一歩前に出る。
「アイリーン大佐、ご無沙汰しております」
セシルは真っ直ぐアイリーンを見つめたまま、お手本のような綺麗な敬礼をしていた。それを見たアイリーンもまた綺麗な敬礼で返す。
「ああ、久し振りだなセシル。一応聞くが、潜入している訳ではないのだな?」
「はい、違います。これが私が選んだ道です。短い間でしたがお世話になりました。これをもちまして正式に除隊させていただきます」
敬礼をしたまま丁寧に話すセシルを見てアイリーンは笑みを浮かべる。
「残念だよ。お前には期待もしていたし目もかけていたんだがな」
「はいそれもわかってはいたんですが申し訳ありません。私はフェリクスと共に歩む事を選びます」
「ふっ恋だ愛だ、か。そんな物は一時の幻想や幻だ。貴様の実力なら私の跡を継げたかもしれんのに」
「ふふふ……そんなの嫌ですよ。婚期逃がしちゃうじゃないですか」
セシルの一言に一瞬眉を釣り上げたアイリーンが笑みを浮かべると次の瞬間、アイリーンに一筋の雷が落ちる。
全身に雷を浴びたままアイリーンが剣を抜くと、手にした剣に雷が帯電していく。
「ふははは、いいだろう。望み通り二人揃って八つ裂きにしてやろう」
「あらやだ、何かかんに障りましたか?」
尚も強気な笑みを浮かべるセシルの横に剣を構えたフェリクスが並び立つ。
「怒らせてどうすんだよ」
「ははは、ごめんごめん、つい」
バチバチと音を立てながら自らの体に雷を纏わすアイリーンの横に剣を構えたジョシュアが徐ろに立った。
「貴様、邪魔だと言わなかったか?」
「はい、邪魔でしたら自分ごと雷で焼いて下さい。やられっぱなしで引き下がる訳にはいかないんですよ」
「ああ、無論そうする。まぁ貴様のような新兵一人犠牲にしてあの黒い死神と呼ばれたザクスを討てれば儲けものか」
「黒い死神? ザクス? 奴はフェリクスって言うんじゃないんですか?」
「……何も知らんのか……今はフェリクス・シーガーと名乗っているが奴は元々は黒い死神と呼ばれたザクス・グルーバーだ」
「ザクス・グルーバー? ラフィン戦争の時に黒い死神とか呼ばれて暴れ回ってたあのザクス・グルーバーですか!?」
「だからそう言っているだろ! 馬鹿か貴様」
呆れた表情をして吐き捨てる様に言ったアイリーンの横で驚きの表情を浮かべていたジョシュアだったが一人頷き、すぐに真っ直ぐ先に立つフェリクスを見つめる。
「なるほどな。どうりで苦戦する訳だ」
一人納得の表情を浮かべてジョシュアがいきなり飛びかかった。迎え撃つフェリクスが腰を落としてニヤリと笑う。
「なんだ? 玉砕か?」
「あんた相手に受けに回ったって勝機なんかないんだよ」
斬りかかったジョシュアの剣をしっかりと受け止め、ジョシュアごと横に払い退ける。はじき飛ばされたジョシュアが体勢を立て直す前に次はフェリクスの方から斬り掛かった。
これをジョシュアが上体を逸らして躱すがフェリクスは斬り掛かった勢いそのままに体を回転させて、そのまま回し蹴りを見舞う。
躱しきれずに腕で受けてガードしたジョシュアだったがそのまま後方に弾き飛ばされてしまった。フェリクスはその勢いのまま、剣を片手に一気に距離を詰めに行く。
眼前に迫るフェリクスに対してジョシュアは腰のホルダーから銃を抜く。勢いよく迫った所で至近距離からの発砲。
しかしこれをフェリクスは躱してみせる。ジョシュアは構わず二度三度と引き金を引くが、それでもフェリクスは躱してみせた。
「マジかよ」
「どうした? もう終わりか?」
そう言ってフェリクスが剣を横一閃振り抜くと、たまらずジョシュアが飛び退き距離を取った。
「なんだ離れていいのか? 俺も飛び道具使ってもいいよな?」
そう言ってフェリクスが右手を前に突き出すとフェリクスの前に光が集束していく。
「おい、魔法使えんのかよ」
『光熱矢』
フェリクスの眼前で集まった光が矢となりジョシュアに向かって放たれる。猛スピードで迫る光の矢をジョシュアが身をひるがえしなんとか躱したが既にフェリクスの眼前には更に五つの光が集まっていた。
「五本の矢を躱せた奴はいないぞ」
「くそっ、躱してやるよ」
『光熱矢』
フェリクスから放たれた五本の光の矢がジョシュアに迫る。ジョシュアは初めの矢を躱し、二本目の矢を剣で弾くが、三本目の矢を胸に受けると四本目、五本目と次々に光の矢をその体に受け、後方へと吹き飛ばされてしまう。
フェリクスが吹き飛ばされ倒れたジョシュアを追撃しようとした時、背面からセシルの悲鳴が響く。
驚き振り返ったフェリクスの目に飛び込んできたのは雷撃を受け、地面を転がるセシルの姿だった。
「セシル!」
慌てて駆け寄るフェリクスに迎え撃つ様にアイリーンの雷が襲いかかった。眼前に迫る雷を僅かに体をひねり躱そうとしたフェリクスだったが雷は身をひねった方向へ矛先を変えフェリクスを捉えた。雷撃の直撃を受け、身を焦がすフェリクスから煙が上がる。
「貴様らはなまじ身体能力が高い故にそうやって僅かな動きで躱そうとするが私の雷はその程度では躱しきれんぞ」
「ああ、そうみたいだな。勉強になったぜ」
フェリクスが膝を着き苦笑いを浮かべながらアイリーンの方へ顔を向けた。
「貴様らもよくやった。もう下がれ、後は我々が引き継ぐ」
「あ、いえ、我々も共に戦います」
アイリーンの言葉を受けて咄嗟にボーラが答えたが、アイリーンは顔を曇らせる。
「わからんか? 邪魔だと言っている」
「し、失礼しました」
アイリーンの少しきつめの言葉にボーラ達は焦り、すぐに撤退の準備を始めた。
そんな中、セシルが徐ろに一歩前に出る。
「アイリーン大佐、ご無沙汰しております」
セシルは真っ直ぐアイリーンを見つめたまま、お手本のような綺麗な敬礼をしていた。それを見たアイリーンもまた綺麗な敬礼で返す。
「ああ、久し振りだなセシル。一応聞くが、潜入している訳ではないのだな?」
「はい、違います。これが私が選んだ道です。短い間でしたがお世話になりました。これをもちまして正式に除隊させていただきます」
敬礼をしたまま丁寧に話すセシルを見てアイリーンは笑みを浮かべる。
「残念だよ。お前には期待もしていたし目もかけていたんだがな」
「はいそれもわかってはいたんですが申し訳ありません。私はフェリクスと共に歩む事を選びます」
「ふっ恋だ愛だ、か。そんな物は一時の幻想や幻だ。貴様の実力なら私の跡を継げたかもしれんのに」
「ふふふ……そんなの嫌ですよ。婚期逃がしちゃうじゃないですか」
セシルの一言に一瞬眉を釣り上げたアイリーンが笑みを浮かべると次の瞬間、アイリーンに一筋の雷が落ちる。
全身に雷を浴びたままアイリーンが剣を抜くと、手にした剣に雷が帯電していく。
「ふははは、いいだろう。望み通り二人揃って八つ裂きにしてやろう」
「あらやだ、何かかんに障りましたか?」
尚も強気な笑みを浮かべるセシルの横に剣を構えたフェリクスが並び立つ。
「怒らせてどうすんだよ」
「ははは、ごめんごめん、つい」
バチバチと音を立てながら自らの体に雷を纏わすアイリーンの横に剣を構えたジョシュアが徐ろに立った。
「貴様、邪魔だと言わなかったか?」
「はい、邪魔でしたら自分ごと雷で焼いて下さい。やられっぱなしで引き下がる訳にはいかないんですよ」
「ああ、無論そうする。まぁ貴様のような新兵一人犠牲にしてあの黒い死神と呼ばれたザクスを討てれば儲けものか」
「黒い死神? ザクス? 奴はフェリクスって言うんじゃないんですか?」
「……何も知らんのか……今はフェリクス・シーガーと名乗っているが奴は元々は黒い死神と呼ばれたザクス・グルーバーだ」
「ザクス・グルーバー? ラフィン戦争の時に黒い死神とか呼ばれて暴れ回ってたあのザクス・グルーバーですか!?」
「だからそう言っているだろ! 馬鹿か貴様」
呆れた表情をして吐き捨てる様に言ったアイリーンの横で驚きの表情を浮かべていたジョシュアだったが一人頷き、すぐに真っ直ぐ先に立つフェリクスを見つめる。
「なるほどな。どうりで苦戦する訳だ」
一人納得の表情を浮かべてジョシュアがいきなり飛びかかった。迎え撃つフェリクスが腰を落としてニヤリと笑う。
「なんだ? 玉砕か?」
「あんた相手に受けに回ったって勝機なんかないんだよ」
斬りかかったジョシュアの剣をしっかりと受け止め、ジョシュアごと横に払い退ける。はじき飛ばされたジョシュアが体勢を立て直す前に次はフェリクスの方から斬り掛かった。
これをジョシュアが上体を逸らして躱すがフェリクスは斬り掛かった勢いそのままに体を回転させて、そのまま回し蹴りを見舞う。
躱しきれずに腕で受けてガードしたジョシュアだったがそのまま後方に弾き飛ばされてしまった。フェリクスはその勢いのまま、剣を片手に一気に距離を詰めに行く。
眼前に迫るフェリクスに対してジョシュアは腰のホルダーから銃を抜く。勢いよく迫った所で至近距離からの発砲。
しかしこれをフェリクスは躱してみせる。ジョシュアは構わず二度三度と引き金を引くが、それでもフェリクスは躱してみせた。
「マジかよ」
「どうした? もう終わりか?」
そう言ってフェリクスが剣を横一閃振り抜くと、たまらずジョシュアが飛び退き距離を取った。
「なんだ離れていいのか? 俺も飛び道具使ってもいいよな?」
そう言ってフェリクスが右手を前に突き出すとフェリクスの前に光が集束していく。
「おい、魔法使えんのかよ」
『光熱矢』
フェリクスの眼前で集まった光が矢となりジョシュアに向かって放たれる。猛スピードで迫る光の矢をジョシュアが身をひるがえしなんとか躱したが既にフェリクスの眼前には更に五つの光が集まっていた。
「五本の矢を躱せた奴はいないぞ」
「くそっ、躱してやるよ」
『光熱矢』
フェリクスから放たれた五本の光の矢がジョシュアに迫る。ジョシュアは初めの矢を躱し、二本目の矢を剣で弾くが、三本目の矢を胸に受けると四本目、五本目と次々に光の矢をその体に受け、後方へと吹き飛ばされてしまう。
フェリクスが吹き飛ばされ倒れたジョシュアを追撃しようとした時、背面からセシルの悲鳴が響く。
驚き振り返ったフェリクスの目に飛び込んできたのは雷撃を受け、地面を転がるセシルの姿だった。
「セシル!」
慌てて駆け寄るフェリクスに迎え撃つ様にアイリーンの雷が襲いかかった。眼前に迫る雷を僅かに体をひねり躱そうとしたフェリクスだったが雷は身をひねった方向へ矛先を変えフェリクスを捉えた。雷撃の直撃を受け、身を焦がすフェリクスから煙が上がる。
「貴様らはなまじ身体能力が高い故にそうやって僅かな動きで躱そうとするが私の雷はその程度では躱しきれんぞ」
「ああ、そうみたいだな。勉強になったぜ」
フェリクスが膝を着き苦笑いを浮かべながらアイリーンの方へ顔を向けた。
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