怖いお話。短編集

赤羽こうじ

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廃村 訪れる異変③

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「真咲……真咲」

 再び私を呼ぶ声で目を覚ますと透が眉根を寄せて心配そうに私の体を揺すっていた。

「……あっ、透」

 私が名前を呼ぶと、透は苦笑いを浮かべた。

「大丈夫か?ずっと起こしてたのに全然起きなかったぞ」

 そう言って笑う透を見て、思わず私は苦笑した。

「ごめんね。疲れてたのかな?」

 そう言いながら昨夜の事を思い返す。あの時、布団の中で私の手を握り女の子が這い出て来た。あまりの恐怖に私は気を失ったようだったが、あれは夢だったのだろうか?悪夢にうなされ、まだ寝ぼけていた私は夢と現実の区別が曖昧になり、あんな夢か幻を見てしまったのだろうか?

 そんな事を考えながら私は女の子の手を握っていたであろう、自分の左手を見つめるがそんな痕跡はなく、勿論握っていた感触も既にない。

 これ以上考えても答えは出ないと思い、私はベッドから身体を起こした。
 今日は午前中から大学に行かなければならなかった為、私は支度を始める。歯を磨きながら洗面所の鏡に映る自分を見つめた。
 時間だけなら十分寝た筈なのに私の顔色は悪く、目の下にはくまが出来ていた。
 それらを隠すようにいつもより少し厚めの化粧を施していく。

 そうして支度を終えると、透と共に部屋を後にした。

 大学に着くと別々の講義を受ける為、一旦透とは別れる。

「じゃあ、終わったらまた食堂で」

 いつも通り講義が終われば食堂で集まる約束をして私は自分が選択している講義室へと向かった。
 講義室へ入ると友人が声を掛けてきた。

「あれ?真咲今日なんか疲れてない?」

「ああ、この前心霊スポット行ってたからちょっと疲れてるのかも」

 私が苦笑いを浮かべながら言うと、その友人は呆れたような顔をして笑っていた。
 趣味の合わない友人にこれ以上言った所で理解は得られないのはわかっていた。
 だから私は当たり障りのない音楽やアイドルの話へと話題を変える。

 私の事理解してくれるのは透や祐司君ぐらいかもな――。

 そんな事を考えながら、かりそめの友人達と笑っていた。

 やがて講義も終わり約束通り食堂へ行くと、先に食堂に来ていた透が駆け寄って来る。

「真咲、お前大丈夫だよな?」

 来るなりいきなりそんな事を聞かれ、私は首を傾げた。

「えっ?何が?特に何もないし、大丈夫だと思うけど」

 戸惑いながら答えると、透は私の顔を覗き込み、何かを考え込むように一瞬目を閉じた後私の腕を引いた。

「ちょっと来てくれ」

 私は透に言われるがまま腕を引かれついて行き、向かう先には椅子に座る祐司君の後ろ姿が見えた。

「あっ、祐司君ももう来てたんだ」

 私の言葉に透は答える事もなく、むしろ眉根を寄せて難しそうな表情を浮かべており、そんな透を見て私は胸騒ぎを覚えた。

「祐司君も今日は午前中から大学来たんだね」

 私は祐司君の対面に腰を下ろすとあえて明るく声を掛けた。
 だが目の前に座る祐司君を見て、私はそれ以上の言葉が出て来なかった。

 目の前に座る祐司君は私の言葉が届いていないのか、ずっと俯き何か独り言をぶつぶつと呟いていた。
 その瞳は虚ろで顔の血色は悪く、目の下には大きなくまが出来ていた。

 私は言葉を失い隣に座った透を思わず見つめる。
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