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1 終わったはずなのに
痛い、痛い、頭が割れるように痛い。体が熱くて息も苦しい。
おかしい、なんでこんなに痛くて苦しいんだ。俺は、もうそんなことは…
全部終わったはずなのに...
ゆっくりと意識が覚醒してきて重い瞼を持ち上げると、ベッド脇に立ってこちらを覗き込んでいる人物がいる事に気付いた。少し朦朧とした状態でその初老の男性を見上げると心配そうに話しかけてきた。
「うなされていましたが、お身体の具合はいかがでございますか?」
そう言って額に手のひらをのせてきた。それがひんやりと感じるということは、熱が出ているのかもしれない。そのせいか頭が上手く回らなくて自分が今置かれている状況が吞み込めない。
「まだ少し熱があります。水枕の換えをお持ちしますね」
何も言葉が出せないままクルストが部屋を出て行くのを目で追って……そうだ、彼は私の側仕えのクルストだ。ここは学園の寮で、今は冬休み明けの最初の週末で、体調を崩した私の為にクルストが泊まり込んで看病をしてくれていたんだ。
( いや、違う。この記憶は何だ? 俺は……つっ )
思い出そうとしたらまた頭が割れるように痛くなった。
「くっ、う、痛っ…」
「セレスティン様? 頭が痛いのですか? セレスティン様⁉」
戻って来たクルストの慌てる声が聞こえて私の、いや、俺の意識は途切れた。
再び意識が浮上するとそこはなにも無い白い空間だった。これってもしかして最近流行りの…と思っていたら、声だけが聞こえてきた。
『 ……やり直して欲しいの 』
その声の主が言うには、作り上げた世界の主人公に別の人格が転生してしまってやりたい放題されて物語の中心だった国が滅びてしまったのだそうだ。
主人公に乗り移った人物は転生特典で魅了のスキルを手に入れていて、国の上層部を思いのままに操って好き勝手した挙句、国が荒れて他国に侵略されたらさっさと見捨てて逃げてしまったらしい。
『 あなたにはセレスティンに転生してもらって主人公の攻略、特に王子との仲を妨害して欲しいの。シナリオが変わってしまってもかまわないわ。国が滅んじゃうより良いもの 』
攻略? シナリオ? それにセレスティンって名前物凄く聞き覚えがあるんだけど…。
『 あなたはやっと見つけた逸材なの! 全てのルートを攻略したあなたならきっと対抗できるハズよ! お願い!「イノ天」の世界を守って! 』
は…? はぁぁぁぁぁ!?
セレスティンって名前に聞き覚えあると思ったら俺が妹の為に攻略したゲーム「Innocence ~学園で天使が見る夢~」略して「イノ天」の悪役令息の事か⁉
俺は自他ともに認めるシスコンだった。
年の離れた妹を溺愛していて何でもしてやりたくて、ゲーム好きな妹の為にプレイするゲームは全てやり込んで何を聞かれても答えられるようにしていた。
妹はずっと乙女ゲームにハマっていたんだけれど、十五歳になってから直ぐに購入してきたのは15禁のBLゲームだった。
「お兄ちゃん! このゲームね、スチルがすっごく綺麗なの! 絶対全部回収したいから手伝ってね!」
瞳をキラキラさせてそんなお願いなんてされたら二つ返事で引き受けて、攻略本片手にそりゃあもう頑張った。そしてそのゲーム内で主人公に嫌がらせをする悪役令息こそが、セレスティン・アッシュフィールドだ。そしてセレスティンは妹の一番のお気に入りキャラでもあったので、熱く語るのを良く聞かされた。
妹曰く……
「セレスティンは悪役令息だけど、本当に王子を愛しているの。純愛なの。この見た目で純愛! 推せる!」
……という事らしい。
「イノ天」はBLゲームだから登場人物は美形ぞろいだったけど、その中でもセレスティンの美しさが群を抜いているのは男の俺でもわかった。
ストレートの黒髪に深い海を思わせる紺色の瞳で白い肌が際立ち、細くしなやかな身体はまだ少年の域を脱していない雰囲気で危うい魅力があった。
公爵家の次男で男性だけど第一王子の婚約者候補の筆頭なのは、このゲームの世界はオメガバースと言う設定になっていて男でも子供が生めるからだ。
さすがBLゲームだな。
俺が色々思い出していたら謎の声がまた語り出した。
『 思い出してくれた? 記憶の融合が上手くいってないみたいだからここに呼んだのだけど、もう大丈夫かしら? そうそう、転生特典も付けちゃうわよ! なんと魅了を無効化出来るスキルよ! 効果は半径五メートル! 凄いでしょう~⁉ 』
「ちょっ、待って下さい! 転生って急にそんな、ちゃんと説明して欲しいです。いきなり色々言われても…」
『 ごめんなさいね。あんまりここに留まることは良くないの。お手紙を送るから後はよろしくね! 』
その言葉を最後に何も聞こえなくなり、俺の意識もまた沈んでいった。
...転生か。
そうだよ、俺は最愛の妹を残して病気で死んでしまったんだ。
だから、全部終わったと思っていたのに...
俺の二十二歳までの記憶とセレスティンの記憶が重なり合っていくのを感じながら、意識は更に深く沈んでいった…。
おかしい、なんでこんなに痛くて苦しいんだ。俺は、もうそんなことは…
全部終わったはずなのに...
ゆっくりと意識が覚醒してきて重い瞼を持ち上げると、ベッド脇に立ってこちらを覗き込んでいる人物がいる事に気付いた。少し朦朧とした状態でその初老の男性を見上げると心配そうに話しかけてきた。
「うなされていましたが、お身体の具合はいかがでございますか?」
そう言って額に手のひらをのせてきた。それがひんやりと感じるということは、熱が出ているのかもしれない。そのせいか頭が上手く回らなくて自分が今置かれている状況が吞み込めない。
「まだ少し熱があります。水枕の換えをお持ちしますね」
何も言葉が出せないままクルストが部屋を出て行くのを目で追って……そうだ、彼は私の側仕えのクルストだ。ここは学園の寮で、今は冬休み明けの最初の週末で、体調を崩した私の為にクルストが泊まり込んで看病をしてくれていたんだ。
( いや、違う。この記憶は何だ? 俺は……つっ )
思い出そうとしたらまた頭が割れるように痛くなった。
「くっ、う、痛っ…」
「セレスティン様? 頭が痛いのですか? セレスティン様⁉」
戻って来たクルストの慌てる声が聞こえて私の、いや、俺の意識は途切れた。
再び意識が浮上するとそこはなにも無い白い空間だった。これってもしかして最近流行りの…と思っていたら、声だけが聞こえてきた。
『 ……やり直して欲しいの 』
その声の主が言うには、作り上げた世界の主人公に別の人格が転生してしまってやりたい放題されて物語の中心だった国が滅びてしまったのだそうだ。
主人公に乗り移った人物は転生特典で魅了のスキルを手に入れていて、国の上層部を思いのままに操って好き勝手した挙句、国が荒れて他国に侵略されたらさっさと見捨てて逃げてしまったらしい。
『 あなたにはセレスティンに転生してもらって主人公の攻略、特に王子との仲を妨害して欲しいの。シナリオが変わってしまってもかまわないわ。国が滅んじゃうより良いもの 』
攻略? シナリオ? それにセレスティンって名前物凄く聞き覚えがあるんだけど…。
『 あなたはやっと見つけた逸材なの! 全てのルートを攻略したあなたならきっと対抗できるハズよ! お願い!「イノ天」の世界を守って! 』
は…? はぁぁぁぁぁ!?
セレスティンって名前に聞き覚えあると思ったら俺が妹の為に攻略したゲーム「Innocence ~学園で天使が見る夢~」略して「イノ天」の悪役令息の事か⁉
俺は自他ともに認めるシスコンだった。
年の離れた妹を溺愛していて何でもしてやりたくて、ゲーム好きな妹の為にプレイするゲームは全てやり込んで何を聞かれても答えられるようにしていた。
妹はずっと乙女ゲームにハマっていたんだけれど、十五歳になってから直ぐに購入してきたのは15禁のBLゲームだった。
「お兄ちゃん! このゲームね、スチルがすっごく綺麗なの! 絶対全部回収したいから手伝ってね!」
瞳をキラキラさせてそんなお願いなんてされたら二つ返事で引き受けて、攻略本片手にそりゃあもう頑張った。そしてそのゲーム内で主人公に嫌がらせをする悪役令息こそが、セレスティン・アッシュフィールドだ。そしてセレスティンは妹の一番のお気に入りキャラでもあったので、熱く語るのを良く聞かされた。
妹曰く……
「セレスティンは悪役令息だけど、本当に王子を愛しているの。純愛なの。この見た目で純愛! 推せる!」
……という事らしい。
「イノ天」はBLゲームだから登場人物は美形ぞろいだったけど、その中でもセレスティンの美しさが群を抜いているのは男の俺でもわかった。
ストレートの黒髪に深い海を思わせる紺色の瞳で白い肌が際立ち、細くしなやかな身体はまだ少年の域を脱していない雰囲気で危うい魅力があった。
公爵家の次男で男性だけど第一王子の婚約者候補の筆頭なのは、このゲームの世界はオメガバースと言う設定になっていて男でも子供が生めるからだ。
さすがBLゲームだな。
俺が色々思い出していたら謎の声がまた語り出した。
『 思い出してくれた? 記憶の融合が上手くいってないみたいだからここに呼んだのだけど、もう大丈夫かしら? そうそう、転生特典も付けちゃうわよ! なんと魅了を無効化出来るスキルよ! 効果は半径五メートル! 凄いでしょう~⁉ 』
「ちょっ、待って下さい! 転生って急にそんな、ちゃんと説明して欲しいです。いきなり色々言われても…」
『 ごめんなさいね。あんまりここに留まることは良くないの。お手紙を送るから後はよろしくね! 』
その言葉を最後に何も聞こえなくなり、俺の意識もまた沈んでいった。
...転生か。
そうだよ、俺は最愛の妹を残して病気で死んでしまったんだ。
だから、全部終わったと思っていたのに...
俺の二十二歳までの記憶とセレスティンの記憶が重なり合っていくのを感じながら、意識は更に深く沈んでいった…。
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