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26 転移魔法陣
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ニスカーナンとの面会を終えてからマーカスたちには領地へ向かう日程が決まり次第連絡する約束をして別れ、今俺はクルサード侯爵が案内をしてくれて転移魔法陣がある場所に向かっている。
「魔法陣用のインクは大変高価なので王宮内のものが国内最大の魔法陣となっております。各地のギルドと神殿には必ず転移魔法陣があり、他には領地を持つ貴族の館にもあります」
ギルドの魔法陣は魔力があれば平民でも使えるらしい。この世界の流通手段ということだ。しかも魔法だから一瞬で届いてしまう。それだと元の世界よりも便利かもしれない。
魔法陣がある部屋は結構広くて壁際に大きな棚が設置されていて、荷物や封書なんかが収められていた。宅配の集配所って感じなのかな。
そして肝心の魔法陣はなんか思っていたより小さかった。部屋の中心の床の一部が白っぽい石材になっていて、そこに円状に文字や複雑な文様が少し離れて二つ描かれている。二つあるのは送る用と受け取る用ということらしい。これ直径1メートルあるかな? でもまあ、手紙や荷物を送るならこれくらいで足りるのかもしれない。
「これって生き物は送れないの?」
「小鳥などの小さな個体なら送れます。過去の実験で兵士一人を送るのに二十人ほどの魔力を枯渇するまで使って成功したという記録が残っています」
「すでに実験済みなうえにそんなに魔力を使うのか…。行きたい場所に瞬間移動できるかと思ったのに残念」
困っている領地に一瞬で飛べたら良かったのにって思っていたら、クルサード侯爵が少しの間思案してから顔を上げて言った。
「アキラ様の魔力なら、可能かもしれません…」
「え、ほんと?!」
「薬草班からの報告を見ました。あの広さの畑を一瞬で耕しても魔力枯渇していないどころか、その後騎士たちに治癒魔法も使ったそうですね」
そういえば、俺の魔法はチートだったな。もし転移できたら今後の神子としての活動がだいぶはかどるんじゃないだろうか。
「試しにやってみてもいいかな?」
「アキラ様がお一人で転移するのですか? とても容認できません」
「転移先でなにがあるかわかりません。安全が確保できない状況での転移はおやめください」
専属護衛の二人から猛反対されてしまった。でも転移が使えたら移動時間を考えなくていい分多くの領地に行けるようになる。
「俺は、試してみて出来るようなら使いたい。飛ぶ前に転移先に文章で連絡して安全を確保しておいてもらうとか…、それでも駄目かな?」
何とか実現したくて頼み込んだら、渋々とって感じだけど了承してくれた。ここから一番近い王宮の隣に建つ神殿に転移することになって、その前にエドウィンが行って待っていてくれることになった。着いたら文章を送って知らせてくれるらしい。
魔法陣のある部屋からエドウィンが出発して暫くすると、到着を知らせるメモがこちらの魔法陣に届いた。いよいよ試せる時が来た。心配そうなロデリックが見ている前で魔法陣の上に立ち魔力を送る。
一瞬目の前の景色が揺らいだと思ったら、違う景色に変わっていて、俺の前には心配顔のエドウィンが立っていた。
「やった! 成功した!!」
「アキラ様! 大丈夫ですか? 何か不調があったり魔力枯渇は…」
「大丈夫みたい。というか、魔力が減った感じがわからないんだよね…」
俺たちが会話しているのを遠巻きに神殿関係者らしき人達が見ているのが目に入ってきた。そういえば司祭との面会もまだだったことを思い出した。長居するのは良くないかもしれない。
「なんかいけそうだからエドウィンも一緒に戻ってみようよ」
そう言って送る方の魔法陣に移動して手を差し出すと、心配そうな顔をしたエドウィンが魔法陣に乗って来てくれたんだけど王宮のより小さいものだから身体が密着しないと二人で立つのが難しい。バランスを崩しそうになった俺の身体をエドウィンが抱き留めてくれた。
「倒れると危ないですから身体を私に預けてください」
「う、うん。じゃあ、転移するよ」
魅惑の胸板に頬を寄せて魔力を流せば、やっぱり一瞬で景色が変わって王宮に戻ることができた。
「魔法陣用のインクは大変高価なので王宮内のものが国内最大の魔法陣となっております。各地のギルドと神殿には必ず転移魔法陣があり、他には領地を持つ貴族の館にもあります」
ギルドの魔法陣は魔力があれば平民でも使えるらしい。この世界の流通手段ということだ。しかも魔法だから一瞬で届いてしまう。それだと元の世界よりも便利かもしれない。
魔法陣がある部屋は結構広くて壁際に大きな棚が設置されていて、荷物や封書なんかが収められていた。宅配の集配所って感じなのかな。
そして肝心の魔法陣はなんか思っていたより小さかった。部屋の中心の床の一部が白っぽい石材になっていて、そこに円状に文字や複雑な文様が少し離れて二つ描かれている。二つあるのは送る用と受け取る用ということらしい。これ直径1メートルあるかな? でもまあ、手紙や荷物を送るならこれくらいで足りるのかもしれない。
「これって生き物は送れないの?」
「小鳥などの小さな個体なら送れます。過去の実験で兵士一人を送るのに二十人ほどの魔力を枯渇するまで使って成功したという記録が残っています」
「すでに実験済みなうえにそんなに魔力を使うのか…。行きたい場所に瞬間移動できるかと思ったのに残念」
困っている領地に一瞬で飛べたら良かったのにって思っていたら、クルサード侯爵が少しの間思案してから顔を上げて言った。
「アキラ様の魔力なら、可能かもしれません…」
「え、ほんと?!」
「薬草班からの報告を見ました。あの広さの畑を一瞬で耕しても魔力枯渇していないどころか、その後騎士たちに治癒魔法も使ったそうですね」
そういえば、俺の魔法はチートだったな。もし転移できたら今後の神子としての活動がだいぶはかどるんじゃないだろうか。
「試しにやってみてもいいかな?」
「アキラ様がお一人で転移するのですか? とても容認できません」
「転移先でなにがあるかわかりません。安全が確保できない状況での転移はおやめください」
専属護衛の二人から猛反対されてしまった。でも転移が使えたら移動時間を考えなくていい分多くの領地に行けるようになる。
「俺は、試してみて出来るようなら使いたい。飛ぶ前に転移先に文章で連絡して安全を確保しておいてもらうとか…、それでも駄目かな?」
何とか実現したくて頼み込んだら、渋々とって感じだけど了承してくれた。ここから一番近い王宮の隣に建つ神殿に転移することになって、その前にエドウィンが行って待っていてくれることになった。着いたら文章を送って知らせてくれるらしい。
魔法陣のある部屋からエドウィンが出発して暫くすると、到着を知らせるメモがこちらの魔法陣に届いた。いよいよ試せる時が来た。心配そうなロデリックが見ている前で魔法陣の上に立ち魔力を送る。
一瞬目の前の景色が揺らいだと思ったら、違う景色に変わっていて、俺の前には心配顔のエドウィンが立っていた。
「やった! 成功した!!」
「アキラ様! 大丈夫ですか? 何か不調があったり魔力枯渇は…」
「大丈夫みたい。というか、魔力が減った感じがわからないんだよね…」
俺たちが会話しているのを遠巻きに神殿関係者らしき人達が見ているのが目に入ってきた。そういえば司祭との面会もまだだったことを思い出した。長居するのは良くないかもしれない。
「なんかいけそうだからエドウィンも一緒に戻ってみようよ」
そう言って送る方の魔法陣に移動して手を差し出すと、心配そうな顔をしたエドウィンが魔法陣に乗って来てくれたんだけど王宮のより小さいものだから身体が密着しないと二人で立つのが難しい。バランスを崩しそうになった俺の身体をエドウィンが抱き留めてくれた。
「倒れると危ないですから身体を私に預けてください」
「う、うん。じゃあ、転移するよ」
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