異世界で神子になりまして

negi

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63 北西の農地

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 北西の農地は奥に山があってその手前に比較的平らな土地が広がっていた。
ここにも雨は降ったみたいでひび割れた大地は水分を含んだ色をしている。
けれど干ばつの被害は酷く、一部緑が見えるところもあるがほとんどの畑が何も生えていない状態だ。

 農道に入る手前の道を速度を落として進みながらマーカスの話を聞いた。

「この辺りは穀物の栽培がメインで他に数種類の野菜も作っていました。ですが干ばつで何を植えても駄目になって…。でもアキラ様が雨を降らせてくれましたから」

  嬉しそうにマーカスは言うけど、作物ってそんなに直ぐには育たないと思う。だからせめてここの畑の土だけでも、俺の土属性魔法で今の荒れた状態を健康な状態にしてあげたい。

「マーカス、ここの畑に土属性魔法を使ってみてもいいかな?」

「アキラ様が魔法を? 本当ですか?! もちろんお願いしたいです!」

 ここの畑はマーカスの家の直轄地らしい。領民に流通するための穀物を作っていた畑だが、不作が続き足りない分は王都からの補助と近隣の領地からの輸入にも頼っていたようだ。

 馬から下りて畑の農道を進む。全体が見渡せるところに立って、王宮の薬草畑でも使ったように土属性魔法を発動した。そして今の俺には自分の中の魔力が動くのをはっきりと感じることが出来る。祈りを捧げた成果だ。
 その魔力を畑全体に向かって解き放つと、キラキラと光の粒子が降り注ぎ、雨で湿っているけどひび割れたままだった畑の土がぼこぼこ動き出す。みるみるうちに俺の良く知るいい感じの畑の状態になっていく。この辺り一帯の何も生えていなかった畑の全てが、耕された柔らかい土に一瞬で変わった。やっぱり魔法って凄いよな。

「ア、アキラ様? まさかこんな、全体を?」

「アキラ様の魔力量を忘れたのか?」

「お前も転移陣で一緒に来たのだから実感したはずだ」

 驚くマーカスにエドとリックが容赦のない突っ込みを入れていて笑ってしまった。

「あはは、びっくりするよね? 神子の魔法って凄いよな」

「アキラ様。こんなことが出来た神子様は恐らく今までいません」

「アキラ様だけかと。クルサード侯爵に聞いてみますか?」

 あれ? そうなの?? 他の神子たちは転生チートをもらわなかったのかな?

 良く見ればマーカスだけじゃなく護衛たちも驚いた顔をしている。
もしかしてやり過ぎだった?

 気付けば領民らしき人達が集まって来ていて「畑が耕されてる」「こんな良い状態の土は見たことが無い」などなど、変化した畑を見て騒ぎはじめた。

 護衛たちが動いてこちらに近付かないように領民を抑えていたけど、その中の1人が俺に気付いて声を上げた。

「あれは神子様じゃないか? 瞳が金色なのは神子様だろ?」

「神子様? どこどこ?」

 騎士がいるから大人しくしているようだけど、みんな俺の方を興味津々で見ている。騒ぎを聞いて結構な人数が集まってきて、中には幼い子供を抱いた母親もいた。
でも、干ばつのせいで食料が足りなかったためか、みんなかなり痩せている。

その姿になんだかたまらない気持ちがこみ上げて、膝をついていた。

やり過ぎたっていいじゃないか! 

この土地が豊饒になれって気持ちを込めて祈る。
そうしたら元々曇りがちだった空から雨が降ってきた。
激しくは無い、大地を潤す雨。

 降り始めた雨に領民たちから「雨が降ってきた!」「良かった!また降ってきた」と喜びの声が上がり、濡れるのも構わずはしゃいでいる。そして喜びの声はいつの間にか俺に対しての感謝の言葉に変わっていった。

「神子様がお祈りしたら雨が降ってきた!」

「神子様! ありがとうございます」

「神子様の祈りで雨が…、ああ、本当にありがとうございます」

 みんな俺に向かって膝をついて中には泣いている人までいる。領民を抑えながら涙を拭う仕草をしている騎士もいた。護衛の騎士もここの領民だ。同じように苦しい時代を過ごしてきたのだろう。

 そんな領民たちの気持ちが俺の胸の中を温かくしてくれる。


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