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79 魔石
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俺たちが東側の農地に到着すると、魔獣の様子を見るために先行していたアンドレアスと騎士たちが困惑した表情で迎えてくれた。農地の様子を報告してくれるアンドレアスが凄く微妙な表情をしている。
「畑に魔石が多数落ちているのを発見しました。現在騎士による確認と回収作業を進めております」
魔獣は死ぬと死体は消えて魔石だけが残る。どうやら俺の祈りで本当に魔獣を倒してしまったようだ。
一応騎士たちは周りを警戒しているけれど、司祭の言葉が真実なら今後数年はこの土地に魔獣は近付かないのだろう。
何か聞きたそうにしているアンドレアスに、まだ俺の力についてはニスカーナンに報告もしていないし話すことが出来ない。
「アキラ様に関わる秘密を漏らす者はいないと思うが、この農地で起きた事は上からの通達があるまで口外を禁止する」
リックが前に出て宣言してくれて、一方的なお願い? 命令? なのに、騎士たちはすんなり受け入れてくれた。騎士たちとの信頼関係が良好なのが分かって嬉しい。
魔石の回収作業が終わるのを待ってから、荒らされた畑を土属性魔法で回復した。
マーカスの実家の農地よりも広い範囲だったけど、神の声が言ったように尽きない俺の魔力で移動しながら全ての畑の土を耕すことが出来てしまった。
見る見る畑の様子が変わっていくのを目の当たりにした騎士から感嘆の声が上がる。俺たちと一緒に畑をまわったアンドレアスが興奮気味に褒めてくれた。
「噂には聞いておりましたが、神子様は本当に規格外なのですね。これ程素晴らしい魔法は見たことがありません! 本当に素晴らしい!」
他の騎士たちもアンドレアスの言葉に同意している中、特に俺の専属部隊は嬉しそうにしていた。魔獣の討伐という活躍の場を奪われ、魔石の回収という地道な作業しか出来なかったのに良いんだろうか?
広大な畑から大量の魔石が回収されたので、近くで荷車を借りて神殿の転移陣まで運ぶことになった。魔石の入った袋が騎士たちによって荷車に積まれていくのを見ながら、ふと、疑問に思ったことをエドとリックに聞いた。
「回収した魔石はどうなるの?」
「全てアキラ様の物ですよ」
「えっ?! 全部?」
「はい。魔獣を倒したのはアキラ様ですから」
エドとリックは平然と言ってるけど、確か魔石って凄く高価な物で様々な魔道具の燃料として使われていると教わった。この世界の魔道具と言われるものは、冷蔵庫などの元の世界でいうところの家電のことだ。それに電池みたいな感じで使われるのが主な使い道だ。
その貴重な魔石が荷車まで借りるくらい大量にあるのに全部俺の物なのか?
「そんなにもらっても何に使えば……そうだ! インクだよ!」
そこで俺は転移魔法陣が魔石を使ったインクで描かれていることを思い出した。
これだけ魔石があれば高価なインクもたくさん作れるんじゃないかな。
「あの魔石でインクを作ったら、俺の部屋に転移魔法陣が描けるかな?」
自分の部屋から転移できれば便利だし、更に時間短縮になる。
「確かにあれだけの魔石をインク作りにまわせれば可能ですね」
「個人用に転移魔法陣を持てるのはアキラ様くらいでしょう」
「そうなの?」
「領主の館や神殿の魔法陣設置は国の援助無しには出来ません」
転移魔法陣は地方との流通の為に国が援助して各領地に設置したものらしい。ただでさえ魔獣討伐でしか手に入らない魔石は、貴重で高価なうえに魔道具の燃料の方に優先的に使われてしまう。そのため中々インクの材料として確保できず、作れる数が少ないため手に入り難くインクの値段が高騰しているそうだ。
「じゃあ、インク用の魔石はもらって、この領地に必要な分は還元して、それ以外はニスカーナンに渡して国の為に使ってもらおう」
この領地に出没した魔物から出た魔石だし、俺が持っていても有効活用出来ないけどニスカーナンなら何とかしてくれるだろう。良い考えだと思ったのに、アンドレアスが驚愕の表情を浮かべ、エドとリックは苦笑している。
「は? え? あれだけの魔石ですよ? 一生楽をして暮らせるどころの量ではありません。それを…?」
「はは、アキラ様があまりにも無欲で心配になるだろう?」
「そんなに驚くこと?」
「アキラ様、少しはお手元に残しましょう。使いたい時が来るかもしれません」
「そうかな? じゃあ、エドとリックに任せても良い?」
どんなに高価なものでも俺には全く使い道がわからないから、魔石については二人に選別してもらうことにした。そんな俺たちのやり取りにアンドレアスが頭を抱えていたけど、そんなに変かな?
「畑に魔石が多数落ちているのを発見しました。現在騎士による確認と回収作業を進めております」
魔獣は死ぬと死体は消えて魔石だけが残る。どうやら俺の祈りで本当に魔獣を倒してしまったようだ。
一応騎士たちは周りを警戒しているけれど、司祭の言葉が真実なら今後数年はこの土地に魔獣は近付かないのだろう。
何か聞きたそうにしているアンドレアスに、まだ俺の力についてはニスカーナンに報告もしていないし話すことが出来ない。
「アキラ様に関わる秘密を漏らす者はいないと思うが、この農地で起きた事は上からの通達があるまで口外を禁止する」
リックが前に出て宣言してくれて、一方的なお願い? 命令? なのに、騎士たちはすんなり受け入れてくれた。騎士たちとの信頼関係が良好なのが分かって嬉しい。
魔石の回収作業が終わるのを待ってから、荒らされた畑を土属性魔法で回復した。
マーカスの実家の農地よりも広い範囲だったけど、神の声が言ったように尽きない俺の魔力で移動しながら全ての畑の土を耕すことが出来てしまった。
見る見る畑の様子が変わっていくのを目の当たりにした騎士から感嘆の声が上がる。俺たちと一緒に畑をまわったアンドレアスが興奮気味に褒めてくれた。
「噂には聞いておりましたが、神子様は本当に規格外なのですね。これ程素晴らしい魔法は見たことがありません! 本当に素晴らしい!」
他の騎士たちもアンドレアスの言葉に同意している中、特に俺の専属部隊は嬉しそうにしていた。魔獣の討伐という活躍の場を奪われ、魔石の回収という地道な作業しか出来なかったのに良いんだろうか?
広大な畑から大量の魔石が回収されたので、近くで荷車を借りて神殿の転移陣まで運ぶことになった。魔石の入った袋が騎士たちによって荷車に積まれていくのを見ながら、ふと、疑問に思ったことをエドとリックに聞いた。
「回収した魔石はどうなるの?」
「全てアキラ様の物ですよ」
「えっ?! 全部?」
「はい。魔獣を倒したのはアキラ様ですから」
エドとリックは平然と言ってるけど、確か魔石って凄く高価な物で様々な魔道具の燃料として使われていると教わった。この世界の魔道具と言われるものは、冷蔵庫などの元の世界でいうところの家電のことだ。それに電池みたいな感じで使われるのが主な使い道だ。
その貴重な魔石が荷車まで借りるくらい大量にあるのに全部俺の物なのか?
「そんなにもらっても何に使えば……そうだ! インクだよ!」
そこで俺は転移魔法陣が魔石を使ったインクで描かれていることを思い出した。
これだけ魔石があれば高価なインクもたくさん作れるんじゃないかな。
「あの魔石でインクを作ったら、俺の部屋に転移魔法陣が描けるかな?」
自分の部屋から転移できれば便利だし、更に時間短縮になる。
「確かにあれだけの魔石をインク作りにまわせれば可能ですね」
「個人用に転移魔法陣を持てるのはアキラ様くらいでしょう」
「そうなの?」
「領主の館や神殿の魔法陣設置は国の援助無しには出来ません」
転移魔法陣は地方との流通の為に国が援助して各領地に設置したものらしい。ただでさえ魔獣討伐でしか手に入らない魔石は、貴重で高価なうえに魔道具の燃料の方に優先的に使われてしまう。そのため中々インクの材料として確保できず、作れる数が少ないため手に入り難くインクの値段が高騰しているそうだ。
「じゃあ、インク用の魔石はもらって、この領地に必要な分は還元して、それ以外はニスカーナンに渡して国の為に使ってもらおう」
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「は? え? あれだけの魔石ですよ? 一生楽をして暮らせるどころの量ではありません。それを…?」
「はは、アキラ様があまりにも無欲で心配になるだろう?」
「そんなに驚くこと?」
「アキラ様、少しはお手元に残しましょう。使いたい時が来るかもしれません」
「そうかな? じゃあ、エドとリックに任せても良い?」
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