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だからいちいち断りを入れる必要がない限りは日常では姉としているけれど、実際はママが再婚した新しいお父さんの連れ子である。つまり姉の未星からしたら、私も連れ子である。むしろ男性優位の時代にあれば、私の方がより連れ子らしい連れ子である。シンデレラの物語で、シンデレラに対しての連れ子のイメージが、継母の子を連れ子とするそれよりもずっと弱いのは、シンデレラのお父さんが継母を新しく迎えるその構造にあるからである。しかし時代は男女平等の名目を掲げる現代であるから、私と未星は同等程度の連れ子として、自分の居場所を主張してよいのである。
しかし未星は引っ込み思案な性格だった。太陽の下で泥だらけになってはしゃいでいる私とは対照的に、未星は木陰でひっそりと咲くすみれのようだった。私はそう思って、小学校の三年生の時、すみれの花を図書館で調べてみた。私にとって「木陰に咲くすみれ」とは言葉として目や耳から入ってくる情報が先行していた。現物のすみれの姿を知らなかった。カラー写真のすみれをいざ図鑑で見つけた時、我ながら未星を比喩するのにぴったりであったと感激した。ひっそりと咲く小さな花弁を彩る清冽な紫が、未星の覆い隠すことのできない美しさを表しているように思った。私は木陰にいる未星をみんなの場所まで引っ張り出してあげるのが姉妹として本当なのではないかとしばらく迷っていた。図鑑のすみれを見てからは、そのようなことは考えなくなった。未星は木陰にいても、憎らしいほどに美しく咲いていた。その根っこを引き抜くことは、その美しさを損なう恐れがあるように私には思われたし、ひっそりとした場所で、その美しさを保存しておきたいとも思った。
そう、未星は美しかった。人目のつかない場所でこっそりとしていても、香り出るその色は、まるでその一部だけにパッと明かりが差したようである。日の目を避けるようにあえて切り立つ崖に咲いた美しい花は、それでもその艶やかさを見逃さずに寄ってくる虫たちへの迷惑を隠さない、そんな贅沢で傲慢な風さえある。そんな未星の美しさは、その美しさを感受する周囲の機能の高まりも相まって、中学生になる頃には一層にその輝きを増したが、本人は至って気にしないように見せながら、一方で敏感にそれを察知するように、今までよりもさらに人の手の届かない場所を選んでひっそりと咲くのだった。すみれは英語でバイオレット、日本ではすみれ色である。日本の豊富な色の一部をその名前で占める花の美しさは、未星のような平面から浮き立つ美しさでなければならないと、私はひとり納得した。
しかし未星は引っ込み思案な性格だった。太陽の下で泥だらけになってはしゃいでいる私とは対照的に、未星は木陰でひっそりと咲くすみれのようだった。私はそう思って、小学校の三年生の時、すみれの花を図書館で調べてみた。私にとって「木陰に咲くすみれ」とは言葉として目や耳から入ってくる情報が先行していた。現物のすみれの姿を知らなかった。カラー写真のすみれをいざ図鑑で見つけた時、我ながら未星を比喩するのにぴったりであったと感激した。ひっそりと咲く小さな花弁を彩る清冽な紫が、未星の覆い隠すことのできない美しさを表しているように思った。私は木陰にいる未星をみんなの場所まで引っ張り出してあげるのが姉妹として本当なのではないかとしばらく迷っていた。図鑑のすみれを見てからは、そのようなことは考えなくなった。未星は木陰にいても、憎らしいほどに美しく咲いていた。その根っこを引き抜くことは、その美しさを損なう恐れがあるように私には思われたし、ひっそりとした場所で、その美しさを保存しておきたいとも思った。
そう、未星は美しかった。人目のつかない場所でこっそりとしていても、香り出るその色は、まるでその一部だけにパッと明かりが差したようである。日の目を避けるようにあえて切り立つ崖に咲いた美しい花は、それでもその艶やかさを見逃さずに寄ってくる虫たちへの迷惑を隠さない、そんな贅沢で傲慢な風さえある。そんな未星の美しさは、その美しさを感受する周囲の機能の高まりも相まって、中学生になる頃には一層にその輝きを増したが、本人は至って気にしないように見せながら、一方で敏感にそれを察知するように、今までよりもさらに人の手の届かない場所を選んでひっそりと咲くのだった。すみれは英語でバイオレット、日本ではすみれ色である。日本の豊富な色の一部をその名前で占める花の美しさは、未星のような平面から浮き立つ美しさでなければならないと、私はひとり納得した。
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