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新しい自分
しおりを挟む「実は私、魔法が使えるんです。」
里中が麗の耳元でささやいた。
「魔法ですか?」
「そうです。誠くんに頼まれました。麗さんは心がとっても綺麗なのに、自信がないから魔法をかけてほしいと。」
麗はどんな魔法なのかワクワクした。
「私の魔法を麗さんにも覚えてもらいたいので良く見ていて下さいね。」
里中は鏡の中の麗に微笑んだ。
「まずはベースメイクをします。お肌はとっても綺麗なのでこれ1本で大丈夫です。これを塗ると、光を反射してあら不思議!真珠のような肌になりました。」
(確かに肌はとても綺麗になったが、まだブスのままだ。)
麗はそう思った。
「ここから真剣に聞いてくださいね。眉毛はとってもキリッとしていて少し整えるだけで美人眉に変身出来ます!」
里中はそう言ってサクサクと眉をカットして眉メイクのコツを説明しながら綺麗に仕上げてから写真を撮った。
「最初はこの写真を見て定期的に自分の眉をチェックして下さい。そのうち見なくても体が覚えます。」
「はい。」
「麗さんはご自分で気付いないだけでとても綺麗ですよ。自信を持って下さい。綺麗への近道は自分を知ることです。それは欠点もそうですがそれだけではないんです。」
麗はブスの法則を思い出した。
そこには欠点しか書いていなかった。
自分の長所は何だろうとその時初めて考えた。
「鏡の中の自分をしっかり見つめてみて下さい。」
里中に言われて鏡の中の自分を見た。
さっき言われたように肌は赤ちゃんのように綺麗だ。
今まで前髪で隠れて気付かなかったが、眉も確かにキリッとしている。
でも美形の兄や姉と違うのは腫れぼったい目と低い鼻だ。そこは美容整形でもしない限りどうにも出来ないと思い、結局麗は落ち込んだ。
「どうですか?」
「やっぱり私はブスです。」
麗は鏡の自分から目を逸らした。
「私が最初に魔法をかけたところもそう思いましたか?」
「いや、それは…」
「思ってないですよね?では次の魔法をかけます。」
里中は綺麗なカラーのパレット、ペンシルなどを数点、麗の前に並べた。
「ここに置いた物を左から順番に塗っていきますからよく見ていてくださいね。」
里中は麗の瞼にアイシャドウを一色ずつ順番に重ねてからジェルライナーを目のライン数カ所に走らせた。その後、瞼の上下真ん中にハイライト、仕上げにリキッドライナーで目尻にラインを描き足し、ビューラーを使ってまつ毛をくるりんと上げた。
そしてそのまつ毛にマスカラを塗ってからつけまつ毛をつけると不思議なことに腫れぼったかった瞼に自然と二重の線が入りパッチリした目に変身した。
「え?これ私ですか?」
「そうですよ。私の思った通りです。一重の人でも瞼の筋肉が元々二つに分かれている人がいるんです。そういう人はアイプチやつけまつ毛によって二重になるんです。続けることでそのうち何もしなくても二重になれますよ。夜寝る前にこの瞼のトレーニングを毎日行って下さい。」
里中はトレーニング方法を描いたかわいいイラストを麗に渡した。
麗は鏡の中の自分の顔に見惚れて呟いた。
「凄い…」
「仕上げがまだですよ。」
そう言って里中はノーズシャドウで立体的に仕上げた。
リップブラシやペンシルを使ってふっくらプルンとした唇も出来上がった。
「私の魔法はここまでです。次はそこの二人が素敵なヘアスタイルとコーディネートをお手伝いします。」
そしてスタイリスト二人が麗を別人のように変身させた。
麗は鏡の中の自分が本当に自分なのかと信じられなかった。
「これ、私?」
その時、麗の後ろに誠が映った。
「お兄ちゃん!凄いよね!本当に私だよね?」
「そうだよ。お姫様!僕とデートして下さい。」
「はい!喜んで!」
麗の笑顔は輝いていた。
「今日はありがとう。」
誠は里中にお礼を言って支払いを済ませた。
「また分からないことがあったら個人的に私に連絡してね。」
と里中は麗に名刺を渡した。
「はい!本当にありがとうございました!」
麗はメイクの魔法のお陰で来た時とは全く違う表情をしていた。
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