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サンプル3【転生先が人類でなかった場合】
『全知』現代及び異世界に存在する全ての知識を網羅するスキル
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「では神様、僕はこの『全知』スキルを頂きたいと思います」
「わかった。では『全知』スキルを授けよう。そして異世界へと転生するのだ」
「ありがとうございます」
そういうと僕は光り輝く老人に一礼をして部屋を出て行った。内心でほくそ笑む。
異世界転生というと、最強の能力を持って行って無双したい、という気持ちももちろんあった。でも転生する異世界が、争いのない平和な世界である可能性もあるのだ。そのことを考えると、使える場面があるかどうかわからない強スキルより、平和だろうが乱世だろうが関係なく役立つ知識スキルの方がいいはずだ。しかも貰ったスキルは『全知』だ。現代日本に存在する知識をフルに使えば、異世界で成功者になるなんて簡単なことのはずだ。
僕は意気揚々と転生のための扉を潜った。白い光に包まれながら、目を細めてさらに先へと進んでいった。
…………
……ここが異世界か。おや、なんかおかしい?
目を開けて目の前の景色を見ながら第一声を発しようとしたところ、僕は異変に気付いた。
視線が異常に低い。ほぼ目の前が土がむき出しの地面なのだ。うつ伏せに寝転んでいるかというくらい地面すれすれの場所に僕の頭がある。「倒れているのか?」と思って身を起こそうとするも、自分の体なのに思うように動かせない。頭が痛い。そしてさらに違和感。自分の手を見る。
自分の手が緑色だった。
自分の手と腕が薄緑色の皮膚で覆われており、水かきがついていた。指先は丸まっていて、爪もない。物凄く嫌な予感がして近くにあった川まで歩いて近づいた。頭が痛い。慣れない体で苦労しつつも、川の水面を覗きこむ。
一匹のカエルがいた。
……ああ、異種族転生ってやつか。正直人間の方が良かったけど、まあ確認しなかった僕が悪いか。仕方ない。
その手のネット小説は読んでいたので、僕は比較的簡単に諦めてカエルで異世界を冒険することを決意した。頭が痛い。異種族に転生した場合、最初期はだいぶ苦労させられるのだが、魔法やらスキルやらの力で最終的に成り上がることはできるし、上手くすれば人間に戻ることだってできるはずだ。異世界で活躍するという希望は捨てないでおく。
僕はやたら痛む頭を押さえつつ、川の中に入った。泳ぎは上手くも下手でもないが、カエルになった以上濡れておく必要があるはずだ。たしか皮膚が乾くと呼吸ができなくなって死ぬんじゃなかっただろうか。『全知』のスキルでカエルの生態について調べると、そんな記述が確認できた。この頭痛も水分不足だからかもしれない。面倒だが仕方ない。
さすがカエルの体というべきか、水の中に入ってもなかなか快適だった。頭が痛いのはなぜか治らなかったが、体中が水の感触を喜んでいるのがわかる。それに体がかるいからか、泳ぐのがとてもかんたんだった。すいーっと泳いでみなもに浮いている葉っぱの上にのっかった。まんぞくげにゲコゲコとなく。あたまがいたい。
しばらくゲコゲコないているうちに、なんとなくおなかがへってきたきがした。ごはんをさがす。およいでる魚は、こざかなだったけど、いまのぼくにはおおきすぎるきがした。まさかおにくなんてたべれるわけもない。ちかくのはっぱにハエのような虫がいるのをみつけた。したべろをのばす。くっつけてひきもどす。たべる。おいしい。ゲコゲコ。
あたまがいたくなくなった。でもなぜかむずかしいことがかんがえられなくなったきがする。すきるにきいてみると、「脳の容量が少ないから」とこたえた。ことばがむずかしくてりかいできない。まあどうでもいいや。
もっとごはんをたべたい。でもちかくにむしはいない。かなしい。ゲコゲコ。ぼくはなんでここにいるんだっけといっしゅんだけぎもんにおもった。でもおもいだせない。どうでもいい。おなかすいた。たべもの。ゲコゲコ。
ゲコゲコ。ゲコゲコ。
むし。したべろ。たべる。おいしい。もっと。ゲコゲコ。
かげ。とり。こわい。にげる。まにあわない。いや。
いたい。
「わかった。では『全知』スキルを授けよう。そして異世界へと転生するのだ」
「ありがとうございます」
そういうと僕は光り輝く老人に一礼をして部屋を出て行った。内心でほくそ笑む。
異世界転生というと、最強の能力を持って行って無双したい、という気持ちももちろんあった。でも転生する異世界が、争いのない平和な世界である可能性もあるのだ。そのことを考えると、使える場面があるかどうかわからない強スキルより、平和だろうが乱世だろうが関係なく役立つ知識スキルの方がいいはずだ。しかも貰ったスキルは『全知』だ。現代日本に存在する知識をフルに使えば、異世界で成功者になるなんて簡単なことのはずだ。
僕は意気揚々と転生のための扉を潜った。白い光に包まれながら、目を細めてさらに先へと進んでいった。
…………
……ここが異世界か。おや、なんかおかしい?
目を開けて目の前の景色を見ながら第一声を発しようとしたところ、僕は異変に気付いた。
視線が異常に低い。ほぼ目の前が土がむき出しの地面なのだ。うつ伏せに寝転んでいるかというくらい地面すれすれの場所に僕の頭がある。「倒れているのか?」と思って身を起こそうとするも、自分の体なのに思うように動かせない。頭が痛い。そしてさらに違和感。自分の手を見る。
自分の手が緑色だった。
自分の手と腕が薄緑色の皮膚で覆われており、水かきがついていた。指先は丸まっていて、爪もない。物凄く嫌な予感がして近くにあった川まで歩いて近づいた。頭が痛い。慣れない体で苦労しつつも、川の水面を覗きこむ。
一匹のカエルがいた。
……ああ、異種族転生ってやつか。正直人間の方が良かったけど、まあ確認しなかった僕が悪いか。仕方ない。
その手のネット小説は読んでいたので、僕は比較的簡単に諦めてカエルで異世界を冒険することを決意した。頭が痛い。異種族に転生した場合、最初期はだいぶ苦労させられるのだが、魔法やらスキルやらの力で最終的に成り上がることはできるし、上手くすれば人間に戻ることだってできるはずだ。異世界で活躍するという希望は捨てないでおく。
僕はやたら痛む頭を押さえつつ、川の中に入った。泳ぎは上手くも下手でもないが、カエルになった以上濡れておく必要があるはずだ。たしか皮膚が乾くと呼吸ができなくなって死ぬんじゃなかっただろうか。『全知』のスキルでカエルの生態について調べると、そんな記述が確認できた。この頭痛も水分不足だからかもしれない。面倒だが仕方ない。
さすがカエルの体というべきか、水の中に入ってもなかなか快適だった。頭が痛いのはなぜか治らなかったが、体中が水の感触を喜んでいるのがわかる。それに体がかるいからか、泳ぐのがとてもかんたんだった。すいーっと泳いでみなもに浮いている葉っぱの上にのっかった。まんぞくげにゲコゲコとなく。あたまがいたい。
しばらくゲコゲコないているうちに、なんとなくおなかがへってきたきがした。ごはんをさがす。およいでる魚は、こざかなだったけど、いまのぼくにはおおきすぎるきがした。まさかおにくなんてたべれるわけもない。ちかくのはっぱにハエのような虫がいるのをみつけた。したべろをのばす。くっつけてひきもどす。たべる。おいしい。ゲコゲコ。
あたまがいたくなくなった。でもなぜかむずかしいことがかんがえられなくなったきがする。すきるにきいてみると、「脳の容量が少ないから」とこたえた。ことばがむずかしくてりかいできない。まあどうでもいいや。
もっとごはんをたべたい。でもちかくにむしはいない。かなしい。ゲコゲコ。ぼくはなんでここにいるんだっけといっしゅんだけぎもんにおもった。でもおもいだせない。どうでもいい。おなかすいた。たべもの。ゲコゲコ。
ゲコゲコ。ゲコゲコ。
むし。したべろ。たべる。おいしい。もっと。ゲコゲコ。
かげ。とり。こわい。にげる。まにあわない。いや。
いたい。
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