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一話 転生
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「いやぁ~。すまんのぉ。ワシの手違いでお主を殺してしまった。許してくれんか。………ダメ?」
目の前にいる自称神のジジイが、手を合わせながらじゃっかん悪びれたようにそう言ってくる。
「許さないよ!!人の命をなんだと思ってんだジジイ!!!」
どうやら、私は目の前にいるジジイの手違いで死んでしまったらしい。
◯
「うぉぉぉぉぉー!!!」
私、白石 花(22)は走っていた。
それはもう、見る人がちょっと引くくらい全力で走っていた。
ヤバいー!!!鬼ヤバいー!!遅刻するー!!
今日は会社の初出勤日で、絶対に遅刻する訳にはいかないのにー!!寝坊するなんて私のバカー!!
こうして走っているのは、昨日の夜、期待や不安でドキドキし中々眠れず、寝過ごしてしまった為だ。
「あたしゃ遠足前の小学生かー!」
自分のあまりの情けなさに苛立ちを覚え、自分の頬をおもいっきり叩く。
しっかりしろ白石 花!!お前は小学一年生ではない!!社会人一年生なのだ!!!
初出勤から遅刻なんて社会人としてあるまじき行為、絶対にする訳にはいかない!!
己に活を入れ、全力で走り続ける。
だが、そんな思いが不注意を生んでしまったのだろうか。
私は、曲がり角から来る車に気づくことが出来なかった。
バァァァン!!という衝突音と共に身体が中に舞い、地面に転がる。
何??何が起こったの??
突然の事態に思考が追い付かない。
と、とりあえず立ち上がらなくちゃ。
急いで立ち上がろうとするが、体が動かない。
だんだんと視界がぼやけてきて、意識が朦朧となってくる。
………えっ??……嘘………でしょ??………今日は遅刻する訳にはいかないのに………
私が最後に見たのは、青ざめた顔をしながら駆け寄ってくる車の運転手の姿だった。
◯
そして、今に至るわけだ。
「本当はのぉ、あそこで死ぬのはお主ではなかったんじゃ。お主が車に跳ねられたあの場所に子供がいたのを覚えておるか?」
記憶を探るがいたような、いなかったような。
いまいち覚えていない。
「まぁいい。ともかく、本来はその子供が車にぶつかり亡くなる予定だったんじゃよ。」
「じゃあ何で私がぶつかる事になったのよ?」
「それはお主の走るスピードが、ワシの予想を上回ったからだ。
夢中で走っとたから気づかなかったかもしれんがすごいスピードじゃったぞ。
本来は子供が飛び出して来るはずの処に、お主が飛び出して来たんじゃ。
だから、ある意味ワシの手違いと言うよりお主が自分で自分を殺したともいえるのぉ。
窮地に立たされた人間の力には目を見張るものがあるのぉ。
はっはっはっはっは。愉快、愉快。」
何笑ってんだ、このハゲ!!
全然、笑えねぇし愉快な要素なんざ一ミリもないよ。
上機嫌で笑うこのジジイをぶん殴りたい衝動に駆られる。
「さて、それでは本題に入ろう。
出来るならば生き返らせてやりたいがルール上、元いた世界に生き返らせる訳にはいかないんじゃ。
だから、此処とは別の世界、異世界で新たに生を受けてもらいたい。」
その言葉を聞いて、神に詰めより肩を揺さぶる。
「ほ、本当ですか!!!
異世界ってあれですよね。
モンスターがいて冒険者がいるような剣と魔法のファンタジーな世界ですよねー!!!!」
「そ、そうじゃが妙に詳しいのぉ?」
詳しい?そりゃそうですよ。私がどれだけラノベを読み込んでいると思ってんですか。
家族からキモオタの称号を受けた私を舐めないで頂きたい。
「じゃあ、異世界で生まれ変わるということでいいかのぉ?」
「はい、是非。是非お願いします。」
神様。さっきは失礼なこと思ってすみません。
あたしゃあなた様の信者になります。
ありがたやありがたや。
「さっきお主が言った通り、お主を送る世界はモンスターが跋扈する危険な世界じゃ。そんな世界でも生きていけるように、1つ特別な能力を授けてあげよう。」
きたー!!!チートですよチート。異世界転生ものの鉄板。テンプレ。おなじみのやつ。
「どんな能力がいい?」
首をかしげて上目遣いで聞いてくる。
ジジイがそんな仕草をしても全く萌えないが、それはひとまずおいといて、どんな能力がいいか考える。
とりあえず、せっかく魔法のある世界に行くんだから魔法を使えるようになりたいよね。
その世界のことを詳しく知らないと足下をすくわれる可能性もあるから知識を与えてくれる能力もいいなぁ~。
伝説の武器とかアイテムを手に入れて、モンスターと戦ったりもしてみたいー!!
様々な考えが思い浮かび、消えていく。
決めた能力がこの先の人生を大きく左右すると思うと、なかなか決めることが出来ない。
うーん。どんな能力がいいだろ~?
数十分考えても答えが出なかったので、物は試しにと無茶を言ってみる。
「色んな知識を与えてくれて、すごい魔法を使えるようになって、伝説の武器や道具を手に入れることが出来るようになる。そんな能力が欲しいです。」
「わかった。わかった。では、そんな能力を授けよう。」
いけんのかよ!!?正直、自分でもかなりの無茶ぶりだと思ったけど!!
神のまさかの返答に驚く。
こんな能力を与えることが出来るこの神は、結構すごいのかもしれない。
「それから、お金に不自由しない様に裕福な家に転生させてあげよう。これは、ワシからのお詫びじゃ。」
ありがとうございます!!ジジイなんて思ってごめんなさい。あなた以上の神はいないよ!!
「よし。これで準備は終わった。それじゃあ送り出すぞい。」
そう言って持っていた杖を振ると私の身体が光輝く。
「では、達者でな。グッドラック……じゃ。」
神が微笑んだ瞬間、私は意識の意識は途絶えた。
目の前にいる自称神のジジイが、手を合わせながらじゃっかん悪びれたようにそう言ってくる。
「許さないよ!!人の命をなんだと思ってんだジジイ!!!」
どうやら、私は目の前にいるジジイの手違いで死んでしまったらしい。
◯
「うぉぉぉぉぉー!!!」
私、白石 花(22)は走っていた。
それはもう、見る人がちょっと引くくらい全力で走っていた。
ヤバいー!!!鬼ヤバいー!!遅刻するー!!
今日は会社の初出勤日で、絶対に遅刻する訳にはいかないのにー!!寝坊するなんて私のバカー!!
こうして走っているのは、昨日の夜、期待や不安でドキドキし中々眠れず、寝過ごしてしまった為だ。
「あたしゃ遠足前の小学生かー!」
自分のあまりの情けなさに苛立ちを覚え、自分の頬をおもいっきり叩く。
しっかりしろ白石 花!!お前は小学一年生ではない!!社会人一年生なのだ!!!
初出勤から遅刻なんて社会人としてあるまじき行為、絶対にする訳にはいかない!!
己に活を入れ、全力で走り続ける。
だが、そんな思いが不注意を生んでしまったのだろうか。
私は、曲がり角から来る車に気づくことが出来なかった。
バァァァン!!という衝突音と共に身体が中に舞い、地面に転がる。
何??何が起こったの??
突然の事態に思考が追い付かない。
と、とりあえず立ち上がらなくちゃ。
急いで立ち上がろうとするが、体が動かない。
だんだんと視界がぼやけてきて、意識が朦朧となってくる。
………えっ??……嘘………でしょ??………今日は遅刻する訳にはいかないのに………
私が最後に見たのは、青ざめた顔をしながら駆け寄ってくる車の運転手の姿だった。
◯
そして、今に至るわけだ。
「本当はのぉ、あそこで死ぬのはお主ではなかったんじゃ。お主が車に跳ねられたあの場所に子供がいたのを覚えておるか?」
記憶を探るがいたような、いなかったような。
いまいち覚えていない。
「まぁいい。ともかく、本来はその子供が車にぶつかり亡くなる予定だったんじゃよ。」
「じゃあ何で私がぶつかる事になったのよ?」
「それはお主の走るスピードが、ワシの予想を上回ったからだ。
夢中で走っとたから気づかなかったかもしれんがすごいスピードじゃったぞ。
本来は子供が飛び出して来るはずの処に、お主が飛び出して来たんじゃ。
だから、ある意味ワシの手違いと言うよりお主が自分で自分を殺したともいえるのぉ。
窮地に立たされた人間の力には目を見張るものがあるのぉ。
はっはっはっはっは。愉快、愉快。」
何笑ってんだ、このハゲ!!
全然、笑えねぇし愉快な要素なんざ一ミリもないよ。
上機嫌で笑うこのジジイをぶん殴りたい衝動に駆られる。
「さて、それでは本題に入ろう。
出来るならば生き返らせてやりたいがルール上、元いた世界に生き返らせる訳にはいかないんじゃ。
だから、此処とは別の世界、異世界で新たに生を受けてもらいたい。」
その言葉を聞いて、神に詰めより肩を揺さぶる。
「ほ、本当ですか!!!
異世界ってあれですよね。
モンスターがいて冒険者がいるような剣と魔法のファンタジーな世界ですよねー!!!!」
「そ、そうじゃが妙に詳しいのぉ?」
詳しい?そりゃそうですよ。私がどれだけラノベを読み込んでいると思ってんですか。
家族からキモオタの称号を受けた私を舐めないで頂きたい。
「じゃあ、異世界で生まれ変わるということでいいかのぉ?」
「はい、是非。是非お願いします。」
神様。さっきは失礼なこと思ってすみません。
あたしゃあなた様の信者になります。
ありがたやありがたや。
「さっきお主が言った通り、お主を送る世界はモンスターが跋扈する危険な世界じゃ。そんな世界でも生きていけるように、1つ特別な能力を授けてあげよう。」
きたー!!!チートですよチート。異世界転生ものの鉄板。テンプレ。おなじみのやつ。
「どんな能力がいい?」
首をかしげて上目遣いで聞いてくる。
ジジイがそんな仕草をしても全く萌えないが、それはひとまずおいといて、どんな能力がいいか考える。
とりあえず、せっかく魔法のある世界に行くんだから魔法を使えるようになりたいよね。
その世界のことを詳しく知らないと足下をすくわれる可能性もあるから知識を与えてくれる能力もいいなぁ~。
伝説の武器とかアイテムを手に入れて、モンスターと戦ったりもしてみたいー!!
様々な考えが思い浮かび、消えていく。
決めた能力がこの先の人生を大きく左右すると思うと、なかなか決めることが出来ない。
うーん。どんな能力がいいだろ~?
数十分考えても答えが出なかったので、物は試しにと無茶を言ってみる。
「色んな知識を与えてくれて、すごい魔法を使えるようになって、伝説の武器や道具を手に入れることが出来るようになる。そんな能力が欲しいです。」
「わかった。わかった。では、そんな能力を授けよう。」
いけんのかよ!!?正直、自分でもかなりの無茶ぶりだと思ったけど!!
神のまさかの返答に驚く。
こんな能力を与えることが出来るこの神は、結構すごいのかもしれない。
「それから、お金に不自由しない様に裕福な家に転生させてあげよう。これは、ワシからのお詫びじゃ。」
ありがとうございます!!ジジイなんて思ってごめんなさい。あなた以上の神はいないよ!!
「よし。これで準備は終わった。それじゃあ送り出すぞい。」
そう言って持っていた杖を振ると私の身体が光輝く。
「では、達者でな。グッドラック……じゃ。」
神が微笑んだ瞬間、私は意識の意識は途絶えた。
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