毒家族から逃亡、のち側妃

チャイムン

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12.デビュタント

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 十五歳の誕生日を迎える直前の学期、私は来年度から飛び級で最終学年に進級することが決まった。

 夏季休暇にはいってすぐに迎える誕生日がすぎると、夏の終わりに催される今期のデビュタントの夜会がある。
 デビュタントの夜会は各季節の終わりに開催される。
 まずデビュタントは午前に国王陛下と王妃殿下、そして成人した王族の居並ぶ謁見の間へ向かう。そこで身分順に謁見が許され、言葉をかけられ花が渡される。これによって、結婚の許可が下りるのだ。この時の待遇が、今後の社交界の立ち位置になる。
 その後の夜会では、まずデビュタントとそのパートナーがファースト・ダンスを踊る。婚約者または婚約者がいない場合は親族と。

 デビュタントの衣装は、男女問わず白が基調になる。

 私のデビューの衣装は、プライブ伯爵家が用意するのか王宮側が用意するのか少し揉めた。結局、衣装はプライブ伯爵家が、装飾品は王宮側が用意することで決まった。
 デビューの夜会では、成人した女性が許されるティアラが必須だ。王妃殿下は、真珠と水晶のカチューシャ・ティアラを新調してくださった。ピアスとネックレスは真珠だ。
 プライブ伯爵家が用意してくれた衣装は、光沢のある絹地に薄いレース地を重ねたエンンパイア型。肩は出ているが、二の腕からふわっとした袖がある。

 謁見は身分が上の順から行われるが、今回は私が一番先だった。ここでは淡い色のドレスを着用する。色は自由だ。私は淡い青のドレスを着た。これは王妃殿下が用意してくださったものだ。髪は結うが飾りはない。王妃殿下から渡された花を飾るのだ。男性はボタンホールにさす。
 バシュロ殿下にエスコートされ、オルセー義父とクレール義母が付き添う。

「ベルナデット・プライブ伯爵令嬢、成人おめでとう。来年には身内になると思うと嬉しさもひとしおだ。バシュロをよろしく頼む」
 国王陛下が満面の笑みでおっしゃる。
「優秀なあなたを誇りに思いますよ。側妃としての教育はもう終わりました。あとは実践で学びましょうね」
 そうおっしゃって、王妃殿下は椅子から立って、手ずから私の髪に大輪の白いバラを飾った。

 本来はここで礼をして退出なのだが、私はバシュロ殿下に手を取られたまま、王族の席へと導かれる。バシュロ殿下の隣だ。国王殿下と王妃殿下を挟んで、反対側にはリゼット様が居て笑顔で頷いてくれる。セリーナ様は成人していないため不参加だ。
 十七歳のリゼット様は一か月後に、ダイアード公爵家に降嫁される。

「バシュロは来年二十一、あなたは十六。似合いの二人です」
 王妃殿下は満足そうだ。

 そして次々とデビュタントが訪れた。
 国王陛下と王妃殿下からお言葉をいただき、王妃殿下から花を手渡される。
 この時の言葉と、花の種類で今後の社交界の立ち位置が決まると言っても過言ではない。そっけなくされ、小さな花や平凡な花が渡されれば、軽視されている証拠だ。

 列は着々と進み、ヘレン・アンダーソン伯爵令嬢の順番が来た。
 国王陛下は固い声で
「結婚を許す」
 とだけおっしゃった。
 王妃殿下は無言で、傍に控えていた侍女にトリカブトを渡し、侍女からヘレン・アンダーソンに手渡された。
 これでヘレン・アンダーソンの社交界の未来は暗いものに決まったも同然だった。よりにもよって毒草だ。
 ヘレン・アンダーソンは蒼白な顔で礼をして退出した。

 春のデビュタントのシリル・エンドレル男爵令嬢とミネルヴァ・ギャローズ子爵令嬢の時も同じだったそうだ。
 二人はその後、どこからも夜会もお茶会も招待が来ていないという。

 その様子を見ていた、後ろの列の令嬢や令息はピリっとした顔になった。

 しかしその後は和やかに過ぎて行った。ただし、素行のよろしくない四人の令息には素っ気なく、国王陛下からは「身を慎むように」と言葉をかけられ、王妃殿下からはしおれかけたデイジーが渡された。

 謁見は午前中に終わり、これからは夜会の支度になる。王宮の支度部屋は満員だ。
 小広間には軽食が用意されている。非公式な立食式のパーティーだ。

 私は軽い昼食を挟み、少し休んでいるとバシュロ殿下がやってきた。

「今夜は当然、私がエスコートだよ。ファースト・ダンスもね」
「はい」
 おとなしく了承する。

「オティーリエ王女が嫁いできたら…」
 バシュロ殿下が言い淀む。

「不本意だけどエスコートはなくなる。君は私とオティーリエ王女の後ろに着いて出ていくことになる。ファースト・ダンスもオティーリエ王女」
 当然のことだ。黙って頷く。
「でもセカンド・ダンスはずっと君だからね」
「お気遣い、ありがたく存じます、バシュロ殿下」
 側妃を蔑ろにせず、正妃を第一に考えるバシュロ殿下は正しい。

 夜会はまずデビュタント達が踊り、曲の途中から他の者達が入ってくる。白の集団が色とりどりになって行くのだ。

 実を言うと、私はこの夜会があまり楽しくなかった。
 刻々と近づく側妃への道を意識せざるを得なかったからだ。

 これでいいのだろうか、と言う迷いではない。

 オティーリエ王女の様子がはかばかしい進歩が見えなかったからだ。
 最近はたどたどしいインジャル語の手紙が来るようになったが、相変わらずバシュロ殿下は私に間違いを添削させる。どういう意図なのかわからない。

 オティーリエ王女との関係は、良好にしたいものだ。
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