ウチに伝わる昔話がおかしい件

裕澄

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桃色の鬼

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急に靄がオレの周りに現れたかと、思うと
見慣れた3人が靄の中から出てきた。


「お前らッ!?無事だったのか?」
「「はい。」」 「うん。」
沙流は、いいとして…乾も敬語か?

「赤鬼は戦う前に、こっちの様子を見せたかったらしく…自分達としては助かりました。」やっぱり、乾は敬語だ。


「20代目以外は、"記憶が戻った"か。…まぁ、いい。
アカネ、此方へ来い。」
靄が今度は師匠…いや。
青鬼の近くへ現れて、赤い鬼がその靄から出てきた。
「戦闘を行うより、アオイ様と3匹の主
あるじ
のお姿を見せるべきかと、思いまして。」
「あぁ、構わないよ。お陰で、此方も手間が省けた。」

「今回の代の3匹はどうだ?」
「王の手をわずらわせる程の者たちでは、ありません。
…私と配下の者共に、お任せ下さい。」
と、乾 沙流 喜島の前に立った。

「あぁ。殺すなよ?最後の愉しみは、オレに取って置くように。」
「はい、アオイ様。王の命は絶対ですので。」

「…さて。同胞達よ、王の下へ集え。犬 猿 雉 の3匹 そして、忌まわしき ももたろうを…痛め付け、王であるオレへ差し出せ。」
そう師匠は、言った瞬間パチンと指を鳴らして、煙に巻かれてしまった。

「王の命の愉しみは、取って置きなさい…それ以外は、許可します。」と、赤鬼はまた靄を出した。


靄が広がると、50体以上の鬼が オレ達の目の前に現れていた。


「ヴォォォ!!」
どんどんこっちへ攻めてくる。

「お前ら!死ぬなよ!?
生きて、女木に戻るぞ!!」
オレは腰に差していた刀を抜いた。

「…ももたろうさん、流石です。戦えなかった…"あの時"の借り返させて貰う!」と、乾が鬼の中へ突っ込む

「乾さん!待って下さい!!俺だって、居るんですから!」沙流も続いて駆け出した。
乾と沙流 空手使いの2人が鬼の軍団へ挑んでいく

「ヴォォォ!!」
乾の背後を取った鬼が、金棒を振りかざそうとした瞬間

「…後ろは任せなさいっ!」喜島の弓矢が鬼に命中して倒れた。

「桃希アンタなに、ぼーっと、立ってんのよ?…アンタの目指す場所は、あそこでしょ?」そう言って喜島が、射った弓矢は鬼たちの急所らしい、場所にきっちり当たってる。


いつの間にか、遠くの方にある石畳の階段の最上段にある玉座に
青鬼の姿に戻ったアオイとその隣には、アカネが遣えている。


「そっちが、その気なら行ってやるよ!!おりゃぁぁぁあ!!!」
オレがももたろう だとか、母ちゃんの事とか、
とりあえず訳わかんねぇ事はどうでもいい。
とりあえず、師匠…いや アオイから詳しい話を聞く。

戻ったら親父にも、聞いてやるんだ
なんで、この事をオレに教えなかったのかって。

そう決意したオレは、無我夢中で剣を振った。
怖くない無くなった訳じゃない。
やるしか、ねぇんだよ!!!


鬼とは言っても、血みたいなものは出るみたいだ。
大体の鬼を、オレ達4人で片付けることが出来た時


「桃希さん!この鬼達は、自分達に任せて下さい!早くアオイの所へ!」そう乾が玉座への通り道を作ろうとした

「そうですよ。桃希さん!俺はここで桃希さんの通る道を作ります。」

「思う存分暴れてきなさいよ!!桃希!」
沙流と喜島も乾に続いた。

「わかったよ。ってか、喜島!こんな時まで姉御キャラしてんじゃねぇよ。」

オレが、そう笑うと
「笑う余裕があるなら、行けるでしょ?」

「あぁ。皆ありがとう!」
3人が作ってくれた道を邪魔する鬼に、剣を振るいながら
石畳の階段の前までたどり着いた。


「待ってろよ!師匠…いや、魔界の王 アオイ!!」
鬼の血みたいなモノがついた剣をアオイの座る玉座へ向けて宣言した

「…あぁ、来いよ。オレの所までたどり着けたら、良いモノ見せてやるよ。」
アオイもオレに答える様に、剣を階段の下にいるオレに向けて宣言した。


知りたいことがあるのと
"良いモノ"が気になるオレは
階段を無我夢中でかけ上がって、頂上の玉座へたどり着いた。

「よく来たな、桃希。…魔界と人間界を繋ぐ柱 見せてやるよ。」と、アオイは玉座から立ち上がった。
「アオイ様ッ!今、柱へ近づくのは…アオイ様にも危険が!」
赤鬼がアオイを止めようとすると


「…煩いうるさい。王であるオレに指図さしずをするな。」
持っていた剣を振りかぶり、赤鬼に斬りかかった。

「ヴゥゥゥ。…アオイ様…何故?」
苦しみながらも、アオイに話しかける赤鬼は、困惑しているらしい…

「…さっきも、言っただろ?"煩い"と。
それに、王であるオレに恋心を持っていた様だな?
馬鹿がっ!
オレが所詮駒ごときと、その様な関係になるとでも?
アカネ、お前はもう不要だ。」

「お前っ!その鬼をどうするつもりだよ!?」オレは思わず、アオイに聞いた。
「使えぬ駒は、捨てるだけだ。…こうやってな。」
蹲るうずくまるアカネの心臓の辺りに剣を突き立てて、引き抜くと

息の根が止まったアカネを、階段の最上段から下へと蹴飛ばした…


「…なにやってんだよ…おい…。」
オレの心の中で、よくわからない感情がグツグツ沸き上がってきた。

「見せてやるよ。良いモノ」
「ほら、これが魔界と人間界を繋ぐ柱だ。」
…アオイが喋っているけど、なんだか頭に入って来ない。


「…あぁ、オレだよ。姉さん。」
「…姉さんは、傷ついても綺麗だね。素敵だよ…。」
姉さん…ってことは、ヒメって鬼か…


…ってことは!!


「…母ちゃん!?」
そこには、いかにも異次元に繋がる空間にある柱に
鎖やお札で身動きが取れない"桃色"の弱りきった鬼が居た。
「…あぁ。死んだと思っていた、母親が鬼の姿でも、分かるんだな。」

「母ちゃんを、離せよっ!!」
オレはアオイに剣を向けた

「桃希さん!俺達も加勢します!」
鬼を倒しきったのか、
乾 沙流 喜島がオレとアオイの居る玉座まで、追い付いてきた。


「…アイツらも、使えぬ駒だったか。
愉しみはこれからだぞ? 犬 猿 雉。」

「…姉さん。桃希が来たよ。顔を見せてあげなくちゃ。」そう言ってアオイは、母ちゃんの頬を鋭い爪の生えた鬼の手で触ると、
母ちゃんの頬から血が滲んだ。
「…次は桃希。お前も顔見せてやれよ…。」とその血が付いた手で顔をグイっと持ち上げられた。


「…解き放て!我等われら一族の血を!」
大声でアオイが宣言した瞬間…


「ヴォォォォオオオ!!!」


「!!青鬼、ももたろうさん…いや、桃希さんに、何をしたんだ!!」

「猿か、ぎゃあぎゃあと煩いな。
お前なら検討がついているんだろ?忠犬。」

「歴代のももたろうさんと、戦った記憶があるからな。」

「状況が読み取れてない、駄犬だけん
と馬鹿雉に教えてやらないのか?」

「沙流 喜島 聞いてくれ…恐らく、自分達の主 ももたろうの記憶が覚醒する前に…アオイの力により…」


「…トウキ。邪魔なこの 犬 猿 雉 を始末しろ。」

「…ハイ。アオイ様。」

『…オレがオレじゃねぇ。オレの意識が体に伝わらない!!』

桃希としての、オレの意識はあるんだけど、なんつーのかな。
トウキに追いやられて奥に閉じ込められてる。

…オレ自身じゃない、トウキオレ
が暴れてる。

「…コロス。マッサツシテヤル。」
『止めろッ!! 止めろッ!!』
「…ハイジヨスル。」
『アイツらに斬りかかるなよ!!オレッ!!』

「…ハハハ!!これは、これは愉快だ!!
鬼と化した主にされるがまま、傷付けられるお供達を見るのは、実に愉快だ!!」

「「桃希さん!!!」」 「桃希!!」

「「「貴方は誇り高き、
ももたろうの20代目!!鬼の力に負けないでください!!!」」」

「…無駄な事を。
自分達を傷付けぼろ布の様になっても、コイツをまだ慕うか。」

「…ウルサイ。…オレハ鬼ダ。お前達を…マッサツスル。」


「「桃希さん!」」 「桃希!!」

「「戻って来て下さい!!!」」 「戻ってきなさいよ!!」

「いくら、呼び掛けた所で
無駄な足掻きだと、分からないのか?」


『…みんな』

『「ヴァァァァァ!!!!」』

なんだよ。これ、
頭の中に色んな景色とか出来事が浮かんでくる!!





「はぁ、はぁ…待たせたな。後…ごめん。お前ら傷付けちゃったな。…ももたろうとして、
いや
仲間として失格か?」


「「桃希さん!!」」 「桃希!!」
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