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生きていく
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しょうへい
「おはよう!しょうへい!」
さとるの声だ。
「おはよう、明後日から俺たち中二なんだってさ。」
今日はクラス発表の日だ。今から幼なじみで親友のさとるとクラス発表を見に行くのだ。
「今年は同じになれるかな?」
とさとるは少し不安そうに言った。
「そうだね」
適当な返事をした。僕はそれどころでは無かった。この半年片想いしている由紀ちゃんと同じクラスになれるかが今の僕には一番重要であったのだ。隣で話し続けるさとるをよそに僕は一心不乱に歩き続けた。いつもより1分ほど早かっただろうか学校に着いた。クラス発表の紙は職員室前に張り出されていた。狭い廊下に群がる同級生に挨拶を交わしながら進み何とか見る事が出来た。必死に「佐山 しょうへい」の文字を探した。4組だった。松下 さとるの名前もあった。だがいくら探しても4組に由紀の文字は無かった。その代わり自分の名前の横に「佐藤 たかのり」と見慣れない名前を見つけた。おそらく今年からの転校生なのだろう。帰りのさとるはとても上機嫌で行き道よりも話していたが僕はショックで静かだった。さとるに慰められ、途中からはいつものように話しながら帰った。さとるから近所に引っ越して来た人がいると言う話を聞き、「もしかしてさっきの...。」と僕は思った。さとるの家は学校からみて僕の家より少し奥にある。
「また明後日な~」と言うさとるに僕は手を振った。
そして中学二年生初日、いつものように登校し教室に入ると岩本と加藤がいた。この二人はとても嫌ないじめっ子だ。特に自分たちに何かされた事がある訳では無いのだが見ていてとても気分が悪い。
「よう!」と岩本がこっちに挨拶をした。
「おはよう、同じクラスなんだね!」僕は返した。みんな彼らの事は好きでは無いのだが仲のいいフリをしている。そうで無いといじめられるのではかと何処かで思っているからだろう。自分の席を探して荷物を置いた。前の席には例の転校生であろう男子が座っていた。眼鏡をかけていてとても華奢な体つきだった。席が前後なので話しかけて見ると面白いやつだった。最初の日は自己紹介などがほとんどで終わった。さとると帰っていると後ろに佐藤がいる事に気がついた。声をかけて一緒に帰る事にした。前にいた学校の事など色々な事を聞きながら一緒に帰った。やはりさとるの家の近くに引っ越して来たのは佐藤家だったようだ。次の日から佐藤も一緒に登校するようになった。二ヶ月程たった頃遠足があった。今年は山登りだそうだ。去年は少し離れた公園で遠足という名のゴミ拾いボランティアをさせられたので全く期待はしていなかったのだが班がさとると同じになったので僕とさとるは楽しめた。佐藤は僕らとばかり話していたせいでまだクラス全体には馴染めて無かった。なのに班は加藤と岩本一緒だった。僕は心配だった。学校で解散だったのでいつものように三人で帰ろうとしたのだが、佐藤のズボンは破け、顔には絆創膏が貼られていた。
「何でそんなにボロボロに?」と聞くと
「いや、派手に転けてしまって...」
さとるが「どんくさいな~、大丈夫なの?」と笑いながら聞くと
「うん、全然大丈夫だから気にしないで!」とやけに明るく佐藤は返した。
それから加藤と岩本が佐藤と絡むところを見るようになった。いや、正確にはあいつらに佐藤が遊ばれていた。帰りにいつも大丈夫かどうかを聞くようにしていたが彼は決まって「大丈夫」とだけ返すのだった。
少しずつ少しずつ加藤と岩本の佐藤への当たりはきつくなって行った。「いつものいじめだ。関わらないでおこう。そのうち飽きて辞めるだろう。」みんな思っていた。僕も、さとるもその一人だった。その頃から佐藤とは話さなくなった。夏休みに入ると毎日のようにさとるか僕の家でゲームをしていた。佐藤の事など全く頭には無かった。
たかのり
中学二年生になった。僕は小さい頃から病気になりがちだった。なのでしっかりとした病院が近くにあり、自然も豊かなところに引っ越す事になったのだ。
初日から後ろの席の子が話しかけてくれた。とても嬉しくて舞い上がる気持ちを抑えながら友達になれるように話してみた。その帰り道にその子が僕を見つけて一緒に帰ろうと誘ってくれた。彼の友達とも仲良くなれた。その二人は家が近かったので毎日登下校を一緒にするようになった。二ヶ月程たち、その二人しかまだ話せないけどそれだけでも十分だった。そして遠足があると聞かされた。病院で検査を受けて大丈夫だったので行く事にした。二人とは班が離れてしまったけどクラスの中心のような加藤君と岩本君と同じ班になったので仲良くなろうと意気込んでいた。けれどそれは甘かった。彼らは最初の方は普通に接してくれたのだが体が弱く、歩くのが遅い僕にイライラしてきたのだろうか少し当たりがきつくなって来た。そしてとうとう僕を置いて凄いスピードで歩き出した。彼らに追いつこうと必死で歩いていると転けてしまった。その時ズボンが破けてしまった。そして必死になってまた追いかけて、やっと追いついたら彼らは僕を突き飛ばした。
「ウザいんだよ!!」「さっさと歩けよ!」
と吐き捨ててまた彼らは歩き出した。突き飛ばされた時に枝に掠って頬を切ってしまった。持っていた絆創膏を感覚を頼りに貼った。どうやら上手く貼れたようだった。そして学校で解散した後、しょうへいとさとるは僕を心配してくれた。僕は転けただけだと言った。せっかくなれた友達に心配はかけたく無かった。そしてそれから加藤君と岩本君が学校でも僕に当たって来るようになった。最初は大したことはなかったのだが日に日にエスカレートして行った。だがきっとしょうへいとさとるが助けてくれると信じていた。最初は心配してくれていた彼らも何故か僕と話してくれなくなってしまった。僕は彼らに何かしてしまったのだろうか、みんなが敵に見えて来るようになった。そんな時、夏休みに入った。これでしばらくはみんなに会わないで済むと思った。親に相談してみよう...。
しょうへい
夏休み明けの登校日、僕とさとるは先生から呼び出された。
「お前たち、佐藤と仲良かったよな?最近あいつの様子はどうだ?」
いきなり質問された。
「まぁ仲良くはしてましたけど...。」僕は返事に困った。
「別に何も無いと思いますよ。」さとるが言った。
「実はだな、佐藤の親御さんからいじめの相談を受けてだな」先生から放たれた言葉に僕達は驚きは無かった。そんな事は分かっていてこのように答えたからだ。
「先生もお前たちを見ているのは先生が担当の国語の時間とホームルームの時間だけだからな。お前たち何か知っているのなら教えて欲しいんだ。先生としてはアンケートを取ってクラス全員に聞いてみるが特にお前たちは知ってるんじゃ無いかと思って先に聞いて見たんだが」
「いや、何もそんな事は感じませんでした。」僕は言った。面倒な事に巻き込まれるのは嫌だった。
「そうか、それなら良いんだ。ありがとうな。何かあったら言ってくれ。」先生は困った顔をしながら言った。それからは余計に佐藤と関わらなくなった。しばらくして佐藤は学校に来なくなった。
たかのり
親に相談すると学校に相談してみると言った。たぶん意味が無い。だっていじめは先生が見ていない時に起きているからだ。先生に言っても先生は知らないのだ。まぁこれを機会に知って貰えたら好転するかもしれないが。夏休み明けの日は酷かった。夏休みの間に溜まったストレスを全て僕にぶつけるかの如く彼らは僕に暴力と暴言をぶつけた。けどそんなものは慣れてしまった。もはや痛く無い、何よりも痛かったのは友達になれたと思っていた二人に見放されたという事実が締め付ける心だった。いじめのアンケートを先生が取ると言い出した。紙に書いて提出するようだ。
いじめを受けていますか?
はい□
いいえ□
一つ目が当てはまる人はどのようかいじめを受けていますか?
一つ目が当てはまらない人はそのような場面を見た事がありますか?
はい□
いいえ□
と言う具合のものだった。これならきっと二人は書いてくれるはず。期待した。だが先生からも大丈夫か?の一言だけ。事実を誰かから聞くか先生自ら現場を見るかをしなくては彼も叱るに叱れないのだから仕方ない。つまりは誰もいじめアンケートに僕の事を書いてくれなかったと言う事なのだ。僕と先生は何回も二人で話したが、加藤君と岩本君は否定し続け、更には傷などにならない程度の暴力や傷が出来ない暴言、窃盗、破壊などにいじめが変わった事で余計に先生は証拠が掴めずに叱れなかった。物を盗まれたり壊されたししても証明する方法も無いし、彼らが否定するので諦めていた。そしてもうすぐ冬休みが来る頃僕は学校に行かなくなった。
しょうへい
冬休みに入った。年が明けまた学校が始まる。そして最初の日、僕達は衝撃の事実を知らされた。
いつものように登校して教室に入るともう既に先生が来ていた。先生はスーツ姿だった。始業式は明日なので不思議に思った。そしてしばらくしてチャイムがなった。先生は無言だ。そして二分程遅れて岩本が来た。これで一人を除いて全員出席だ。先生が口を開いた。
「おはようございます。今からとても大切なお話をします。騒がず、冷静に一言も喋らずに聞いてください。」
凄い圧力だった。これにはさすがに加藤と岩本も引き締められた。そしてまた先生が話し始めた。
「一昨日の晩、佐藤 たかのり君が亡くなりました。」一瞬ざわついた。すると、
「おい!黙れ!いじめがあったそうだ!死因はいじめによる自殺だよ!
これは担任としていじめを追求しきれなかった俺に責任がある。それは大人として親御さんにしっかりと責任を取ると説明した。そしたら親御さんは俺に『 先生は出来る限りの事をしてくれたと息子の遺書にはありましたのでどうかそんなに気を負わないでください。ただお願いがあります。息子をいじめた子供達だけは許さないでください。 』と仰った。でも明らかに俺は力不足だった。だって相談を受けたのに話を聞いてやるばかりで行動に出ようとしても中学生の悪知恵に負けて発見できなかったんだからな。」先生は涙をふいて深呼吸をした。
「お前たち、俺はアンケートを取ったよな?あれに正直に答えたやつは何人いる?俺はみんなが正直に答えたとあの時は信じた。たが今は全く信じていない。何故って佐藤はいじめで死んだからだ。お前たちが情報をくれていればあの時にいじめは止められたかも知れないんだぞ。一人の将来は奪われなかったかも知れないんだぞ。」だんだんと語気が強まって行く。
「岩本!加藤!お前らは人を殺したんだよ!分かってんのか!そして、佐山!松下!お前らも一緒だ。いじめが起きてる事を知っていながら黙って友達を見殺しにしたお前たちも殺したんだよ!友達だと信じてた人間に助けて貰えずに裏切られた時、人を大きな心の傷を負う。それはなかなか消えない傷だ深い深い傷なんだ。お前たちは心に致命傷を負わしたんだよ。そして、クラスで見ていたお前ら全員同じく人殺しだ。助けずに見殺しにしたんだからな、当たり前だ。岩本と加藤は警察や佐藤の親御さんと相談して今後が決まるだろう。だが大事なのは他のお前たちだよ!償え、何としても生きて償え、時に人殺しだと罵られようとも、時に自らを攻め立てようとも、自分達が殺してしまったという事実を背負って生きて行け。それがお前たち、いや、俺たちに出来る最大限の弔いだ。」先生の目に涙は無かった。その目にあるのは決意のみだった。僕達は泣いていた。先生の言葉ひとつひとつがとても重かった。間違えなく僕達が彼を殺した。いや、俺たちなんて表現は逃げだ。間違えなく僕が彼を殺した。そして僕はその事実と彼の生きれなかった未来を背負い生きて行かなければならない。
高校生になった。岩本と加藤は多額の賠償金のために働いている。命をお金で解決出来る訳が無いと彼らは毎日墓参りをしてから仕事に行っているそうだ。高校ではさとると離れた。僕達のクラスの出来事は全国ニュースにもなったのでもちろん殺人犯だと言われるような事をあった。だが今は二度と同じような誤ちが生まれないように教師を目指している。苦しい時も生きていく。痛みを背負って生きていく。それが償いになるのならばただ前を向いて時々大事な過去を忘れないように振り返りながら生きていく。
「おはよう!しょうへい!」
さとるの声だ。
「おはよう、明後日から俺たち中二なんだってさ。」
今日はクラス発表の日だ。今から幼なじみで親友のさとるとクラス発表を見に行くのだ。
「今年は同じになれるかな?」
とさとるは少し不安そうに言った。
「そうだね」
適当な返事をした。僕はそれどころでは無かった。この半年片想いしている由紀ちゃんと同じクラスになれるかが今の僕には一番重要であったのだ。隣で話し続けるさとるをよそに僕は一心不乱に歩き続けた。いつもより1分ほど早かっただろうか学校に着いた。クラス発表の紙は職員室前に張り出されていた。狭い廊下に群がる同級生に挨拶を交わしながら進み何とか見る事が出来た。必死に「佐山 しょうへい」の文字を探した。4組だった。松下 さとるの名前もあった。だがいくら探しても4組に由紀の文字は無かった。その代わり自分の名前の横に「佐藤 たかのり」と見慣れない名前を見つけた。おそらく今年からの転校生なのだろう。帰りのさとるはとても上機嫌で行き道よりも話していたが僕はショックで静かだった。さとるに慰められ、途中からはいつものように話しながら帰った。さとるから近所に引っ越して来た人がいると言う話を聞き、「もしかしてさっきの...。」と僕は思った。さとるの家は学校からみて僕の家より少し奥にある。
「また明後日な~」と言うさとるに僕は手を振った。
そして中学二年生初日、いつものように登校し教室に入ると岩本と加藤がいた。この二人はとても嫌ないじめっ子だ。特に自分たちに何かされた事がある訳では無いのだが見ていてとても気分が悪い。
「よう!」と岩本がこっちに挨拶をした。
「おはよう、同じクラスなんだね!」僕は返した。みんな彼らの事は好きでは無いのだが仲のいいフリをしている。そうで無いといじめられるのではかと何処かで思っているからだろう。自分の席を探して荷物を置いた。前の席には例の転校生であろう男子が座っていた。眼鏡をかけていてとても華奢な体つきだった。席が前後なので話しかけて見ると面白いやつだった。最初の日は自己紹介などがほとんどで終わった。さとると帰っていると後ろに佐藤がいる事に気がついた。声をかけて一緒に帰る事にした。前にいた学校の事など色々な事を聞きながら一緒に帰った。やはりさとるの家の近くに引っ越して来たのは佐藤家だったようだ。次の日から佐藤も一緒に登校するようになった。二ヶ月程たった頃遠足があった。今年は山登りだそうだ。去年は少し離れた公園で遠足という名のゴミ拾いボランティアをさせられたので全く期待はしていなかったのだが班がさとると同じになったので僕とさとるは楽しめた。佐藤は僕らとばかり話していたせいでまだクラス全体には馴染めて無かった。なのに班は加藤と岩本一緒だった。僕は心配だった。学校で解散だったのでいつものように三人で帰ろうとしたのだが、佐藤のズボンは破け、顔には絆創膏が貼られていた。
「何でそんなにボロボロに?」と聞くと
「いや、派手に転けてしまって...」
さとるが「どんくさいな~、大丈夫なの?」と笑いながら聞くと
「うん、全然大丈夫だから気にしないで!」とやけに明るく佐藤は返した。
それから加藤と岩本が佐藤と絡むところを見るようになった。いや、正確にはあいつらに佐藤が遊ばれていた。帰りにいつも大丈夫かどうかを聞くようにしていたが彼は決まって「大丈夫」とだけ返すのだった。
少しずつ少しずつ加藤と岩本の佐藤への当たりはきつくなって行った。「いつものいじめだ。関わらないでおこう。そのうち飽きて辞めるだろう。」みんな思っていた。僕も、さとるもその一人だった。その頃から佐藤とは話さなくなった。夏休みに入ると毎日のようにさとるか僕の家でゲームをしていた。佐藤の事など全く頭には無かった。
たかのり
中学二年生になった。僕は小さい頃から病気になりがちだった。なのでしっかりとした病院が近くにあり、自然も豊かなところに引っ越す事になったのだ。
初日から後ろの席の子が話しかけてくれた。とても嬉しくて舞い上がる気持ちを抑えながら友達になれるように話してみた。その帰り道にその子が僕を見つけて一緒に帰ろうと誘ってくれた。彼の友達とも仲良くなれた。その二人は家が近かったので毎日登下校を一緒にするようになった。二ヶ月程たち、その二人しかまだ話せないけどそれだけでも十分だった。そして遠足があると聞かされた。病院で検査を受けて大丈夫だったので行く事にした。二人とは班が離れてしまったけどクラスの中心のような加藤君と岩本君と同じ班になったので仲良くなろうと意気込んでいた。けれどそれは甘かった。彼らは最初の方は普通に接してくれたのだが体が弱く、歩くのが遅い僕にイライラしてきたのだろうか少し当たりがきつくなって来た。そしてとうとう僕を置いて凄いスピードで歩き出した。彼らに追いつこうと必死で歩いていると転けてしまった。その時ズボンが破けてしまった。そして必死になってまた追いかけて、やっと追いついたら彼らは僕を突き飛ばした。
「ウザいんだよ!!」「さっさと歩けよ!」
と吐き捨ててまた彼らは歩き出した。突き飛ばされた時に枝に掠って頬を切ってしまった。持っていた絆創膏を感覚を頼りに貼った。どうやら上手く貼れたようだった。そして学校で解散した後、しょうへいとさとるは僕を心配してくれた。僕は転けただけだと言った。せっかくなれた友達に心配はかけたく無かった。そしてそれから加藤君と岩本君が学校でも僕に当たって来るようになった。最初は大したことはなかったのだが日に日にエスカレートして行った。だがきっとしょうへいとさとるが助けてくれると信じていた。最初は心配してくれていた彼らも何故か僕と話してくれなくなってしまった。僕は彼らに何かしてしまったのだろうか、みんなが敵に見えて来るようになった。そんな時、夏休みに入った。これでしばらくはみんなに会わないで済むと思った。親に相談してみよう...。
しょうへい
夏休み明けの登校日、僕とさとるは先生から呼び出された。
「お前たち、佐藤と仲良かったよな?最近あいつの様子はどうだ?」
いきなり質問された。
「まぁ仲良くはしてましたけど...。」僕は返事に困った。
「別に何も無いと思いますよ。」さとるが言った。
「実はだな、佐藤の親御さんからいじめの相談を受けてだな」先生から放たれた言葉に僕達は驚きは無かった。そんな事は分かっていてこのように答えたからだ。
「先生もお前たちを見ているのは先生が担当の国語の時間とホームルームの時間だけだからな。お前たち何か知っているのなら教えて欲しいんだ。先生としてはアンケートを取ってクラス全員に聞いてみるが特にお前たちは知ってるんじゃ無いかと思って先に聞いて見たんだが」
「いや、何もそんな事は感じませんでした。」僕は言った。面倒な事に巻き込まれるのは嫌だった。
「そうか、それなら良いんだ。ありがとうな。何かあったら言ってくれ。」先生は困った顔をしながら言った。それからは余計に佐藤と関わらなくなった。しばらくして佐藤は学校に来なくなった。
たかのり
親に相談すると学校に相談してみると言った。たぶん意味が無い。だっていじめは先生が見ていない時に起きているからだ。先生に言っても先生は知らないのだ。まぁこれを機会に知って貰えたら好転するかもしれないが。夏休み明けの日は酷かった。夏休みの間に溜まったストレスを全て僕にぶつけるかの如く彼らは僕に暴力と暴言をぶつけた。けどそんなものは慣れてしまった。もはや痛く無い、何よりも痛かったのは友達になれたと思っていた二人に見放されたという事実が締め付ける心だった。いじめのアンケートを先生が取ると言い出した。紙に書いて提出するようだ。
いじめを受けていますか?
はい□
いいえ□
一つ目が当てはまる人はどのようかいじめを受けていますか?
一つ目が当てはまらない人はそのような場面を見た事がありますか?
はい□
いいえ□
と言う具合のものだった。これならきっと二人は書いてくれるはず。期待した。だが先生からも大丈夫か?の一言だけ。事実を誰かから聞くか先生自ら現場を見るかをしなくては彼も叱るに叱れないのだから仕方ない。つまりは誰もいじめアンケートに僕の事を書いてくれなかったと言う事なのだ。僕と先生は何回も二人で話したが、加藤君と岩本君は否定し続け、更には傷などにならない程度の暴力や傷が出来ない暴言、窃盗、破壊などにいじめが変わった事で余計に先生は証拠が掴めずに叱れなかった。物を盗まれたり壊されたししても証明する方法も無いし、彼らが否定するので諦めていた。そしてもうすぐ冬休みが来る頃僕は学校に行かなくなった。
しょうへい
冬休みに入った。年が明けまた学校が始まる。そして最初の日、僕達は衝撃の事実を知らされた。
いつものように登校して教室に入るともう既に先生が来ていた。先生はスーツ姿だった。始業式は明日なので不思議に思った。そしてしばらくしてチャイムがなった。先生は無言だ。そして二分程遅れて岩本が来た。これで一人を除いて全員出席だ。先生が口を開いた。
「おはようございます。今からとても大切なお話をします。騒がず、冷静に一言も喋らずに聞いてください。」
凄い圧力だった。これにはさすがに加藤と岩本も引き締められた。そしてまた先生が話し始めた。
「一昨日の晩、佐藤 たかのり君が亡くなりました。」一瞬ざわついた。すると、
「おい!黙れ!いじめがあったそうだ!死因はいじめによる自殺だよ!
これは担任としていじめを追求しきれなかった俺に責任がある。それは大人として親御さんにしっかりと責任を取ると説明した。そしたら親御さんは俺に『 先生は出来る限りの事をしてくれたと息子の遺書にはありましたのでどうかそんなに気を負わないでください。ただお願いがあります。息子をいじめた子供達だけは許さないでください。 』と仰った。でも明らかに俺は力不足だった。だって相談を受けたのに話を聞いてやるばかりで行動に出ようとしても中学生の悪知恵に負けて発見できなかったんだからな。」先生は涙をふいて深呼吸をした。
「お前たち、俺はアンケートを取ったよな?あれに正直に答えたやつは何人いる?俺はみんなが正直に答えたとあの時は信じた。たが今は全く信じていない。何故って佐藤はいじめで死んだからだ。お前たちが情報をくれていればあの時にいじめは止められたかも知れないんだぞ。一人の将来は奪われなかったかも知れないんだぞ。」だんだんと語気が強まって行く。
「岩本!加藤!お前らは人を殺したんだよ!分かってんのか!そして、佐山!松下!お前らも一緒だ。いじめが起きてる事を知っていながら黙って友達を見殺しにしたお前たちも殺したんだよ!友達だと信じてた人間に助けて貰えずに裏切られた時、人を大きな心の傷を負う。それはなかなか消えない傷だ深い深い傷なんだ。お前たちは心に致命傷を負わしたんだよ。そして、クラスで見ていたお前ら全員同じく人殺しだ。助けずに見殺しにしたんだからな、当たり前だ。岩本と加藤は警察や佐藤の親御さんと相談して今後が決まるだろう。だが大事なのは他のお前たちだよ!償え、何としても生きて償え、時に人殺しだと罵られようとも、時に自らを攻め立てようとも、自分達が殺してしまったという事実を背負って生きて行け。それがお前たち、いや、俺たちに出来る最大限の弔いだ。」先生の目に涙は無かった。その目にあるのは決意のみだった。僕達は泣いていた。先生の言葉ひとつひとつがとても重かった。間違えなく僕達が彼を殺した。いや、俺たちなんて表現は逃げだ。間違えなく僕が彼を殺した。そして僕はその事実と彼の生きれなかった未来を背負い生きて行かなければならない。
高校生になった。岩本と加藤は多額の賠償金のために働いている。命をお金で解決出来る訳が無いと彼らは毎日墓参りをしてから仕事に行っているそうだ。高校ではさとると離れた。僕達のクラスの出来事は全国ニュースにもなったのでもちろん殺人犯だと言われるような事をあった。だが今は二度と同じような誤ちが生まれないように教師を目指している。苦しい時も生きていく。痛みを背負って生きていく。それが償いになるのならばただ前を向いて時々大事な過去を忘れないように振り返りながら生きていく。
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