【完結】天使と悪魔

十海 碧

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第1章 悪魔が天使に恋をした

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「小学生の時は女の子にモテたんです。告白されると、嬉しくてOKしちゃって、何人かつきあいました。つきあったって言っても小学生ですからね。一緒に手をつないで登下校するくらいです。僕って顔はいいけど、あんまり面白くないらしくて、少したつと振られちゃいましたね。でも、そんなにショックっていうわけでもなかったから、恋愛って感じでもなかったんでしょうね。大きくなっても身長があんまり伸びなくて、スポーツも今一つ苦手だったので中学生になるとモテなくなりました。その頃、ベタベタしてくる男の子がいました。中学3年の時に告白されて……。僕も薄々、気づいていたし、好いてくれるのならいいかと思って、付き合いました。その子は僕と違って、頭のいい高校に行ってたんですけど、成績があまり良くなくなって。それは、施設にいる頭の悪い僕との交友関係のせいだと親に注意されたらしくて」
 思いもよらない過去エピソードに俺はぽかんとしてしまった。
「それで別れたの?」
 なんとか相槌をうつ。
「僕もバイトで忙しかったし、向こうも予備校で忙しかったし、自然消滅ですかね」
「残念だったね……」
 残念とは少しも思わなかったが言ってみる。
「向こうは『一緒に家出しよう』とか盛り上がっていたけど、そんなことしたら後から僕が悪者になるんだろうし、なんとか宥めて、会う時間を減らしていってと自然消滅に持ち込みました」
「桜井さんは、そこまで好きじゃなかったてこと?」
 期待も含めて質問する。
「僕なんかを好きになってくれる人はありがたい存在だと思うので、告白されたらできるだけ付き合うようにしてるんです。僕が好きとかは二の次です」
 律くんは冷たい口調で言う。
「そんなことはないでしょう。桜井さんのような綺麗な人、みんな好きになっちゃいますよ」
 俺は思いっきり否定する。
「女性なら、そうかもしれませんけど、僕は男だから。顔が綺麗はそんなに価値ないですよ。背が高いとかスポーツできるとか、頭が良いとか、仕事ができるとか、そういう男性がモテるんじゃないですか? 僕はそのどれでもないですから」
 律くんは自虐的にそう言う。
 そうかもしれないけど、俺の好きな人にそんな悲しいことを言って欲しくなかった。

「じゃあ、俺が好きって言ったら、付き合ってくれるの?」
 売り言葉に買い言葉みたいに告白してしまう。
「……」
 律くんの表情が固まった。
「俺は桜井さんが明るくて、優しくて、働き者で、いい人だな、と思ってるよ」
「……だって、お仕事ですから。和久津さんに、いい人だな、雇い続けたいな、と思ってもらえるようにしてるんです」
 律くんが今にも泣きだしそうな顔をしている。
「長谷川ストアで働いてた時だって、口ベタな俺にいつも優しく声かけてくれてたじゃん」
「だって、和久津さん、いつも来てくれて、たくさん買い物してくれてお得意様だからです」
「俺、好きだよ。桜井さんのこと」
 俺は勇気を振り絞る。好きな子を悲しませたくない。好きな子が自信を持って生きていくのに、俺のちっぽけな自尊心なんて、どうなってもいい。
 律くんの口がぐにゃりとゆがむ。
「和久津さん、そんなこと言って、僕が本気にしたらどうするんですか」
 律くんはぐいと腕で目をこすった。
「本気にしてくれたら、嬉しいけど」
 律くんが動揺しているのを見て、俺は落ち着く。だてに10年片思いしていない。
 律くんがふくれっつらをする。ふくれても可愛いな。
「僕が本気になると怖いですよ」
 怖い顔をしてるのか。全然怖くないが。
「どう、怖いの?」
 律くんは下唇を突き出す。いつも笑顔の律くんが、律くんなりの怖い顔をしているのが新鮮だ。
「僕のことを一番好きでいなきゃダメです」
 鼻の穴を膨らませて、律くんは言う。言い終わった後、どうだ、言ってやったぞという顔をしている。
 可愛いんだが。
「そんなのは、当たり前でしょ」
 俺は楽しくすらなってきた。
「先生よりも、僕のことが一番ですよ」
 律くんが言いなおす。
「兄さんのことは好きだけど、家族だからな。兄さんだって、俺より奥さんの方が好きで大事だし。今度、子供が生まれると俺の順位はまた下がるけど、それが自然だろ。桜井さんが俺と付き合ってくれるなら、俺は桜井さんを一番大事にします」
 律くんの目がうるむ。鼻の頭が赤くなる。
 嘘。泣いちゃうの?
「僕、ずっと、誰かの一番になりたかったんです。僕の一番をあげるから、あなたの一番も僕に下さい」
 半泣きの律くんに、隠し事はできなかった。
「俺、施設に取材に行ったとき、桜井さんを見て、一目ぼれしたんだ。そこから、ずっと好きだった。こんなこと言われたら気持ち悪いと思うだろうけど。だから俺にとって、ずっと一番は桜井さんなんだ」
 律くんは目を丸くする。
「……そんな、嘘でしょ。10年前ですよね」
「ごめん、気持ち悪いよね。でも、ホントなんだ。長谷川ストアに通い詰めたのも桜井さんに会いたかったからなんだ」
 律くんがふふっと笑った。
「『セカラブ』みたい。僕、ずっとあこがれてたんだ。主人公みたく、僕のことをずっと気にかけてくれる誰かいたらいいのになって」
 俺のキモオタ行動は『セカラブ』の純愛に変換された。
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