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前夜祭 002
しおりを挟む「本日の前夜祭はみなさんご存じ、公認ギルド序列四位の『明星の鷹』さんが主催してくれましたー! 明日に控えた対抗戦に向け、ランダルの方々により一層盛り上がってほしいとのことでーす!」
司会としてステージに立ったレジーナさんは、うさ耳をふりふりしながら快活に進行する。
「また、テーブルに並べてある美味しそ~な料理の数々は、ランダルきっての名レストラン、『エクセラン』様にご提供頂きましたー! ちなみに私のお勧めはお肉を焼いたやつでーす! めちゃうまっ!」
上機嫌に横ピースをするレジーナさん。
「さてさて、前置きはこの辺で……早速、今日の主役にご登場頂きましょー! その手腕によって一代で公認ギルドを作り上げた男! 『明星の鷹』のマスター、ガウス・レンスリーさんです!」
その名前を聞いてピクッと眉が動いてしまった。
反応しないように意識していたのに、我ながら未熟な奴だ……この会場に来た時点で、あいつの顔を見るのはわかりきっていたのに。
数秒後、ステージ上に中年の男が現れ、張り付いた笑みを浮かべる。
実の父親だった、ガウス・レンスリー。
「ただいまご紹介に預かりました、ガウス・レンスリーです。みなさま、今日はお集まり頂きありがとうございます。ランダルという素晴らしい街で対抗戦ができることを嬉しく思っております。せめてもの気持ちとして、前夜祭という形で住人のみなさまに還元できれば幸いです。どうか心ゆくまで楽しんでください」
場内から拍手が巻き起こる。
「ふん……相変わらずいけ好かないガキじゃ。心にもないことをペラペラとみっともない。素直に点数稼ぎのためだと白状した方が幾分か気分が良いわ……うっぷ」
「大丈夫ですか、マスター」
エルネに背中を擦られるアウレア……みっともなさで言ったらガウスとそう変わらなかった。
「ランダル出身の人気バンドや曲芸師の妙技など、いくつか余興も用意しました。また、今日は対戦相手でもある『流星団』の方々にもお越し頂きましたので、後ほどマスターである『魔女のアウレア』から一言もらいたいと思います」
周囲がざわつく。
「魔女のアウレア」の二つ名が出たことで、言いようのない空気が流れ出した……あんまり良い雰囲気とは言い難い。
非公認ギルドとして初めて対抗戦に出る以上、良くも悪くも注目されるのは仕方ないが、どうやらうちのマスターは悪い意味で目立っているようだ。
「ふん……後ほどなどと言わず、今すぐ一言言ってやるわ」
懲りずにラッパ飲みを続けていたアウレアが跳躍する。
そのままくるくると回転し、ステージに降り立った。
一層ざわつく場内……他人の振りをしておこう。
「……『魔女のアウレア』、相変わらず破天荒な女だ。物事には順序ってもんがあるんだが、それがわからないか?」
「はん。お前は相変わらず言葉遣いのなってないガキじゃな、ガウスよ」
壇上で中年と少女が睨み合う図が展開される。
傍から見たらアウレアの方がガキだが、彼女は五百年生きているので立派な年上なのだ。
「風の噂じゃ、ギルド潰しにあったんだってな。ギルドもぶっ壊れてまともに営業できてないんだろ? そんな状態で対抗戦に出るなんて恥ずかしくないのか?」
「確かにギルドは壊されたが、それだけじゃ。優秀なメンバーが見事ギルド潰しを撃退してくれたからの、むしろ株は上がっておる」
「そうかい。せっかく上げた株を下げないように気を付けるこったな」
「それはこっちのセリフじゃ。お前らこそやっとの思いで序列を上げたのだから、精々その地位を落とさぬよう祈っておれ」
マスター同士煽り合っているが、実際に戦うのは僕らなので勝手に盛り上がらないでほしい。
「……まあいいさ。じゃあ早速、明日の対抗戦へ向けて意気込みでも聞かせてもらおうか。言い訳をしておくなら今のうちだぜ」
「言い訳ぇ? それをするのはお前らの方じゃろ。公認ギルド序列四位の『明星の鷹』が、儂ら非公認ギルド『流星団』に負けるんじゃからな」
「……二つ名持ちがいるからって調子に乗るなよ、ババア。お前らなんざ、所詮国の用意した客寄せの道具でしかないんだからな」
「口が悪いのぉ、ガキ。せっかく来てくれたランダルのみなさんの前でそんな態度を取ってもいいのか? 大人げないのぉ」
「……ふん。それもそうだな。お互い大人になろう」
コホンと咳払いをして、ガウスは続ける。
「では改めて……『魔女のアウレア』、何か一言もらおうか」
ガウスに促されたアウレアは一歩前に出て、自信たっぷりに口を開いた。
「明日の対抗戦は儂らが勝つ。言いたいのはそれだけじゃ……応援してくれとは言わんが、『明星の鷹』に賭けて破産するような馬鹿はするなと忠告してやろう」
「言いたい放題だな、アウレア。そんだけ自信たっぷりってことは、しっかり二つ名持ちを連れてきたんだろ? 『豪傑のナイラ』か『星屑のゲイン』、代表はどっちにしたんだ?」
「どちらでもない」
食い気味に答えるアウレア。
「どちらでもないだと? なら誰が出るってんだ?」
「お主のよ~く知っておる奴じゃよ。ほれ」
と、アウレアはビシッと指を差した。
その指先は、真っすぐ僕へと向いている。
それから順当に。
僕の視線とガウスの視線が――ぶつかった。
「な……どうして、お前が……」
わかりやすく絶句するガウス。
次いでわなわなと目元が震え、驚愕が怒りに変わっていく。
今にも噴火寸前といった面持ちだが、辛うじて堪えているのはギルドマスター故の矜持からだろうか。
「どうした、ガウスよ。化け物でも見たような顔をしおって」
隣にいるアウレアは愉快そうに笑う。
そんな壇上の異様な雰囲気を受けて、場内が再びざわつき出した。
「コホン……対抗戦に初出場する儂らからのサプライズじゃ。明日の『流星団』の代表は、ここにおるガウス・レンスリーの息子、ウィグ・レンスリーに任せることにした。みな、大いに盛り上がってくれ」
民衆の疑問を解決するかのように、アウレアが高らかに宣言する。
一瞬の静寂。
そして。
「ガウスの息子だって⁉ エドたちの他にまだいたのか!」
「どうして非公認ギルドに入ってるんだ? 『明星の鷹』をやめたってことか?」
「やっぱりあの噂本当だったんじゃん! レンスリー兄弟には四人目がいたってやつ!」
「こりゃー明日の結果もわからなくなったぜ! なんてたってあの『業火のエド』の弟ってことだろ? 滅茶苦茶つえーに決まってる!」
事情を把握した人々が口々に盛り上がり出す。
「……みなさん、すごい熱量ですね」
「当然だろう。レンスリー兄弟の四人目が突然現れ、しかも父と兄の敵だというのだからな」
「話題性は抜群ってことですか。やりましたね、ウィグさん」
「うむ。こういうのは目立ってなんぼだぞ、ウィグ」
得意気なエルネとナイラ。
「問題は、ウィグさんの存在に気づいた『明星の鷹』がどう動くかですよね。『業火のエド』を倒されてメンツを潰されたままですし、今すぐにでも報復にくるんじゃ……」
「心配するな。誰が難癖をつけてこようと私が叩きのめしてやる」
そう言って、ナイラが誇らしげに胸を叩くと、
「へー。邪魔するなら、二人まとめて吹き飛ばしてあげるよ」
上空から声。
嫌に聞き覚えがあるその声の主は、遥か高みから僕らを見下ろしていた。
「……ユウリ兄さん」
「久しぶり、ウィグ。出来の悪い弟には、ちょっとばかしお仕置きが必要かな」
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