公務員冒険者は安定したい! ~勇者パーティーを追放されたから公務員になったのに、最強エルフや猫耳少女とSS級ダンジョン攻略してます~

いとうヒンジ

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第二部

優勝と賞品

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「優勝はクロス・レーバンさんです~。おめでとうございます~」


 至極あっさり、僕は「魅惑の香スイートパルム」主催の魔導大会で優勝することができた。ベスが協力してくれていたのだから当然と言えば当然なのだが、ウェインさんという強敵もいたことだし、何事もなく目的を果たせて胸を撫で下ろす。


「優勝者にはトロフィーと、副賞の魔石が進呈されます~。みなさん、拍手ですよ~」


 司会進行のエリーゼさんに促され、会場からはまばらな拍手が聞こえてきた。拍手が少ないのは優勝できなかった冒険者たちが僻んでいるからというのもあるだろうが、大部分の参加者がダンジョンを抜け出せていない方が影響として大きい。

 一階層で三十階層分の広さを持つ魔法空間から脱出するのは骨が折れる。無事に帰ってくるまでが遠足とはよく言うが、地上に戻るまでが魔導大会なのだ。


「ひゅー! さっすがクロスさん!」


 一人大声で僕を称えてくれていたのは、全身ボロボロになっているニニ・ココだった。可哀想に、彼女は最近衣服を破壊されるのがデフォルトになっている……お色気担当だろうか。


「では、優勝したレーバンさんに一言もらいたいと思います~」


「え?」


 いきなり拡声魔法を施されたマイクを渡され、僕はわかりやす過ぎる程挙動不審になる……いや、こういうの苦手なんだって。大勢に注目される中でしゃべるなんて柄じゃない。


「あー、えっと、その……」


 そんな風に僕が口をパクパクさせていると。


「ふざけるな! 俺は認めねえぞ!」


 群衆の奥から怒声が響いた。

 見れば、ウェインさんに氷漬けにされた僕の賭けの相手、マルコさんが怒りに打ち震えた顔でこちらを睨みつけていた。


「そんな弱っちいガキが優勝なんざできるわけねえ! 今すぐ俺とタイマンで決着つけやがれ!」


 みんなの視線が彼に集まっていく。うん、僕から注意が外れるのはいいことだけれど、しかしこの状況を穏便に済ませる方法が思いつかない。


「どうした、さっさとここまで来い! 俺はまだ負けちゃいねえぞ!」


「うるさいのぉ、たわけた男が。勝負は終わった、大人しく五百万G支払えよ……それとも何か? 払う当てもないのに賭けをしたのか? そんなことが許されると思うなよ、たわけ」


 僕の右手からマイクをひったくり――ベスが言い放つ。

 いきなり謎の少女が現れて会場はどよめいたが、その発言の方が高圧的で衝撃的なので、彼女の存在自体に疑問を持つ人は少なそうだ。


「う、うるせえ! いいから早くここまで来て俺と勝負しやがれ!」


「……全く、負けを認められん男程醜いものはない。それとな、儂は今めちゃくちゃ眠い。眠いと機嫌が悪い」


「お、おいベス、落ち着けって……」


 不穏な空気を醸し出し始めた彼女をなだめようと声を掛けたが、そんなものに耳を貸すような従順なベスではなかった。


「儂はな、来いとか、行けとか、そうやって命令されるのがいっっっっっっっっっちばん嫌いなんじゃ。それと……」


 言って。

 ベスは、右手に魔力を込める。


「こやつのことを弱っちいガキなどと馬鹿にするのを、儂は死んでも許せん」


 会場に、黒い閃光が走った。





「じゃからー、謝っとるじゃろうがー」


 ベスが後先考えず魔法を発動してしまった所為で、大会の会場は大混乱に陥った。騒ぎに乗じた冒険者たちが殴り合いの喧嘩を始めたのである。

 まあきっかけさえあれば暴れるような連中ではあるけど……僕みたいなひょろいガキが優勝したことも、不満の一因だったのかもしれない。

 ただし、導火線に火を点けたのは間違いなくこのエルフだ。


「騒ぎをほったらかして逃げてきちゃいましたけど、大丈夫ですかねー。魔石も強奪したみたいになっちゃいましたけど、それ、返せとか言われたら大変ですねー」


 ニニはあくまで他人事のように言う。

 オーグの街中に戻った僕たちは、こじんまりとした小洒落た酒場に腰を落ち着けていた。帰りの列車まではまだ時間があるので、ここで暇を潰そうという算段である。


「まあ幸い、あの場にいたのは冒険者だらけですし、攻撃魔法を使ったことを軍に報告はされないでしょうけれど……ベスさんもやりますねー。沸点低すぎでしょう」


「そう褒めそやすな、照れる」


「褒めてないですよ、全然。ポジティブに捉えますねー」


「お主もいい加減機嫌を直せ。確かにほんの少し軽率だったが、大した問題ではなかろう」


「本人が言うセリフじゃないぞ」


 大した問題……になってないかなぁ。

 心配だ。

 ここは「魅惑の香」のお膝元で、マルコさんはその一員である……「魅惑の香」からしてみれば、僕らが仲間を攻撃した不届き者に見えてもおかしくない。


「ここでしたか、レーバンさん」


 カランと、酒場のドアが開く。

 僕の名前を呼んだのは、青い髪のお姉さん。

 「天使の涙エンジェルラック」のサブマスター、ウェイン・ノットさんだった。


「あ、どうも……」


「……そちらが、エリザベスさんですか?」


 彼女は青い瞳を動かし、ベスの紫の瞳を見つめる。


「ん? ああ、市長の知り合いか。どうした、酒でも飲みにきたか」


「……あなたが暴れた後始末をして疲れているので、お酒は遠慮します」


 昼間会った時よりもやつれた顔のウェインさんはそう言って、椅子に深々と腰かけた、どうやら本当にお疲れらしい。


「後始末っていうのは、その、どんな感じだったんでしょうか」


「……無秩序に暴れ出した冒険者たちを止め、『魅惑の香』の方々にエリザベスさんの無礼をお詫びしていました……彼女にはあまり非はないということも伝えてあります。魔石は持って行っていいそうです」


 どうだろう、非はめちゃくちゃこちら側にある気がするが……しかし魔石を堂々と持ち帰れるのはありがたい。


「あの、ウェインさん」


「なんでしょう?」


「どうして、ベスのためにそこまでしてくれたんですか?」


 彼と女は知り合ったばかりで、後始末をしてもらう関係性ではないはずなのに、わざわざ労力をかけてギルドと話を付けてくれた。
 嬉しいけれど、ウェインさんの目的が見えない。


「……どうして、と問われれば、あなた方がカイさんの友人だからでしょうか。あの人の友は、私の友でもあります」


 その答えは予想外だった。カイさんのことをそこまで親しく思っていたとは意外である。
 あの人、ちゃんと友達いたんだ……。


「それに、こうして話を付けたり交渉をしたりするのが私の仕事ですから。うちのマスターは人を怒らせるのが得意なので、いつも尻拭いを担当しているんです」


 力なく微笑むウェインさんだった。そのマスターの尻拭いというのも、相当疲れるらしい。


「うむ、感心な娘じゃ。褒めてつかわす」


「なんでお前が偉そうなんだよ」


 まあ、何だかんだあったけれど。

 僕たちは無事に魔石集めという目的を果たし。

 ウェインさんと、少しだけ仲良くなったのだった。

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