28 / 53
28.
夜もだいぶ深まった頃、翔はやっとFでの夕食にありついた。
本当ならもっと早い時間に来るつもりだった。有聖の部屋で一、二時間寝たら夕飯にちょうどいい時間になるはずだったのに。
初めて潮を吹いた後、連れていかれたバスルームでさらにひどい目に遭った。
――勝手に手を離した罰はどうしようか?
何が何だかわからない状態で有聖の腕に縋ったのに、それすらも許されなかった。
――ゆるし、て。ゆうせいさん、おねがい……。
そんな哀願も空しく、お仕置きとして散々弄られた乳首は今もじくじくするほどだ。
「どうしたの、翔くん?」
隣に座る有聖が翔の顔を覗き込んだ。
「っ、……なんでも、ないです」
危うく全部を思い出しそうになって、翔は勢いよく頭を振った。
「そう? もっと何か食べる?」
「もう、だ、大丈夫」
もうお腹いっぱいだ。
――精のつくもの用意してもらったよ。
事前に頼んでおいてくれた有聖のおかげで、普段店では出さないようなとびきり質のいい肉を郷田が用意してくれていた。
ひどい目にあったものの、ぐっすりと眠ったあとは体も頭もすっきりしていたおかげで、美味しい肉をたらふく食べることができた。有聖の家に着いた時は食べる気力もわかなかったのに。
「翔、なんか飲むか? 有聖さん、おかわりはどうですか?」
カウンターに戻ってきた颯斗が二人に声をかけた。
「僕はいいよ。翔くんは?」
「あ、俺もとりあえず大丈夫。今日、ホールは颯斗さん一人なの?」
翔は店内奥のボックス席を見渡して、颯斗に問いかけた。
「ん、あー、……茜は下に手伝いに行ってるから。一階(こっち)は翔たち以外は一組だけで、俺一人でもそんな困んねぇし」
「え! 下って……オーナーの許可がないとダメなんだよね?」
つい小声になってしまう。
「龍哉さんも下にいるんだ」
「譲渡の相談かな?」
有聖が颯斗に訊いた。
「あ、いや、貸出です、……たぶん」
颯斗が目を逸らして、詳しいことは知らないと首を振った。
「あの、それって、どういうこと?」
一人だけ理解できないでいる翔がおずおずと訳知り顔の二人に訊ねた。
颯斗はバツが悪いのか、顔を顰めて有聖を見やった。
有聖は仕方ないと言わんばかりに肩をすくめ、「奴隷の譲渡や貸出だよ」と言った。
いろいろな理由で調教した奴隷を手放したり、自分が調教した奴隷を他のSに貸し出すご主人様がいるのだという。
今日日はオンラインでもそういった類の募集もネットでできるが、身元の確認などができないなど犯罪被害に遭う可能性もある。そのため、穂仁原が仲介することもある、らしい。
「ここの会員なら身元は確かな人ばかりだし、顔合わせのついでにプレイも試せるから、そういう依頼は多いんじゃないかな」
「最近はあんまりなかったみたいですけど……」
「あ、あの、ちょっと待って……、それって普通、なの……?」
プレイの一環なのか? 人を譲り渡したり、貸し出したりするのが?
(それっていいの? え、それって、もしかして、――俺も?)
もし有聖と付き合ったら、いつか自分もそういう目に遭うのだろうか?
「お、おれ、そんなの……」
絶対無理、という言葉がこぼれ出る前に、有聖の手がぽんぽんと翔の背中を叩いた。まるで落ち着かせるような優しい手つきだった。
颯斗が心配そうに見ている。
「僕は翔くんを誰かに貸し出したりしないよ」
真っ直ぐに見つめる有聖の目は真剣だ。
そうは言われても、でも、もしかしたら、そんな言葉しか浮かばない。
何と言えばいいのかわからず、翔は口を開けてはつむるのを繰り返した。
「不安にさせちゃったね。大丈夫だよ。翔くんが思ってることを言ってごらん」
「あ、あの……っ」
「ゆっくりでいいよ」
言葉が上手く出てこない。
背中を撫でられ、頭を包み込むように抱きしめられ、こめかみにそっとキスされる。
そうされているうちに、「俺、絶対嫌だ。……有聖さん以外は、絶対無理」と言葉を絞り出した。
それに、有聖は優しく微笑んだ。
「そもそも、僕は貸し出したり、寝取られたりっていうことに一切興奮しない。むしろ、大事なものに他人の手垢はつけられたくないんだ」
そういえば、初めての時もそんなことを聞いた気がする。
――大事なモノは隠しておきたいタイプだから。
翔は少しだけほっとした。
本当ならもっと早い時間に来るつもりだった。有聖の部屋で一、二時間寝たら夕飯にちょうどいい時間になるはずだったのに。
初めて潮を吹いた後、連れていかれたバスルームでさらにひどい目に遭った。
――勝手に手を離した罰はどうしようか?
何が何だかわからない状態で有聖の腕に縋ったのに、それすらも許されなかった。
――ゆるし、て。ゆうせいさん、おねがい……。
そんな哀願も空しく、お仕置きとして散々弄られた乳首は今もじくじくするほどだ。
「どうしたの、翔くん?」
隣に座る有聖が翔の顔を覗き込んだ。
「っ、……なんでも、ないです」
危うく全部を思い出しそうになって、翔は勢いよく頭を振った。
「そう? もっと何か食べる?」
「もう、だ、大丈夫」
もうお腹いっぱいだ。
――精のつくもの用意してもらったよ。
事前に頼んでおいてくれた有聖のおかげで、普段店では出さないようなとびきり質のいい肉を郷田が用意してくれていた。
ひどい目にあったものの、ぐっすりと眠ったあとは体も頭もすっきりしていたおかげで、美味しい肉をたらふく食べることができた。有聖の家に着いた時は食べる気力もわかなかったのに。
「翔、なんか飲むか? 有聖さん、おかわりはどうですか?」
カウンターに戻ってきた颯斗が二人に声をかけた。
「僕はいいよ。翔くんは?」
「あ、俺もとりあえず大丈夫。今日、ホールは颯斗さん一人なの?」
翔は店内奥のボックス席を見渡して、颯斗に問いかけた。
「ん、あー、……茜は下に手伝いに行ってるから。一階(こっち)は翔たち以外は一組だけで、俺一人でもそんな困んねぇし」
「え! 下って……オーナーの許可がないとダメなんだよね?」
つい小声になってしまう。
「龍哉さんも下にいるんだ」
「譲渡の相談かな?」
有聖が颯斗に訊いた。
「あ、いや、貸出です、……たぶん」
颯斗が目を逸らして、詳しいことは知らないと首を振った。
「あの、それって、どういうこと?」
一人だけ理解できないでいる翔がおずおずと訳知り顔の二人に訊ねた。
颯斗はバツが悪いのか、顔を顰めて有聖を見やった。
有聖は仕方ないと言わんばかりに肩をすくめ、「奴隷の譲渡や貸出だよ」と言った。
いろいろな理由で調教した奴隷を手放したり、自分が調教した奴隷を他のSに貸し出すご主人様がいるのだという。
今日日はオンラインでもそういった類の募集もネットでできるが、身元の確認などができないなど犯罪被害に遭う可能性もある。そのため、穂仁原が仲介することもある、らしい。
「ここの会員なら身元は確かな人ばかりだし、顔合わせのついでにプレイも試せるから、そういう依頼は多いんじゃないかな」
「最近はあんまりなかったみたいですけど……」
「あ、あの、ちょっと待って……、それって普通、なの……?」
プレイの一環なのか? 人を譲り渡したり、貸し出したりするのが?
(それっていいの? え、それって、もしかして、――俺も?)
もし有聖と付き合ったら、いつか自分もそういう目に遭うのだろうか?
「お、おれ、そんなの……」
絶対無理、という言葉がこぼれ出る前に、有聖の手がぽんぽんと翔の背中を叩いた。まるで落ち着かせるような優しい手つきだった。
颯斗が心配そうに見ている。
「僕は翔くんを誰かに貸し出したりしないよ」
真っ直ぐに見つめる有聖の目は真剣だ。
そうは言われても、でも、もしかしたら、そんな言葉しか浮かばない。
何と言えばいいのかわからず、翔は口を開けてはつむるのを繰り返した。
「不安にさせちゃったね。大丈夫だよ。翔くんが思ってることを言ってごらん」
「あ、あの……っ」
「ゆっくりでいいよ」
言葉が上手く出てこない。
背中を撫でられ、頭を包み込むように抱きしめられ、こめかみにそっとキスされる。
そうされているうちに、「俺、絶対嫌だ。……有聖さん以外は、絶対無理」と言葉を絞り出した。
それに、有聖は優しく微笑んだ。
「そもそも、僕は貸し出したり、寝取られたりっていうことに一切興奮しない。むしろ、大事なものに他人の手垢はつけられたくないんだ」
そういえば、初めての時もそんなことを聞いた気がする。
――大事なモノは隠しておきたいタイプだから。
翔は少しだけほっとした。
あなたにおすすめの小説
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。