自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!

荒星

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イザナギ学院入学前編

第6話 油断大敵

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 初のゴブリン戦が終わった後、俺は第二層から第五層までレベル上げを行いつつ、一気に駆け下りた。
 目標はレベル60、序盤に襲来して俺を殺す奴の同種は推奨レベル40だが、何が起こるか分からない。正直3年あれば十分だが、姉さんの目もあるし毎日来ることは出来ない。それに今は夏休みらしいが、学校が始まればきっと来れる頻度も少なくなるだろう。
 俺としては、出来るだけこの夏休み中にレベル30までは行きたい。

 道中、ゴブリンやコボルト、マーマン等の下級亜人種やクーシーやヘルハウンドドッグ等の下級獣種が出てきたが、特に苦戦したわけでもなくあっさりと倒せたので割愛する。

 そして、俺はいよいよボス部屋の前まで来た。

「確か、五層の階層主はオークだったよな」

 オーク、分類は中位亜人種で初心者最初の壁。初心者の攻撃力では怯まないため、下級亜人種達と同じように回避もせずに脳筋プレイをしていると、スパアマでこん棒に潰されて死ぬ。 しかし、パワーは強くとも速さは遅めなのでスピードで翻弄すれば楽勝。推奨レベルは10。

「ま、こんなところだよな」

 俺は脳内でオークの情報を振り返り、覚悟を決めて扉を開けた。
 
 扉を開けると、そこは石造りの簡素な円形のフィールドで、その中央にオークは立っていた。
 
 オークは、俺を視認した瞬間大きく息を吸い込んだ。

ーーボス版オークは初手ウォークライで怯みを誘発させられるから終わるまで待つ!

『グォォォォ』

 そうしてオークの雄叫びを合図に、俺の初階層主戦が始まった。

 オークのウォークライが終わるのを待って、俺はオークへ突撃した。
 
 オークは突撃してきた俺を見ると、棍棒を上に大きく振り上げた。

「デレ行動感謝するよ!」

 俺はオークの後ろに回り込み、首筋にパワースラッシュを打ち込んだ。オークは痛そうな素振りは見せたものの、少ししか斬ることが出来なかった。

「やっぱりゴブリンのようには行かないか」

 ゆっくりとした動作でオークは俺を睨みつけると、今度は棍棒をバットよろしく構えた。

「おわ、まっず」

 俺が咄嗟に後ろに避けると、俺の鼻先をこん棒が掠めていった。
 今のはオークの初心者殺しの一つ、フルスイング(命名俺)だ。初心者は溜めモーションを見るなり突撃して、回避タイミングが分からずに野球ボールよろしく吹っ飛ばされるか、よしんば回避しようとしても横に飛んで大ダメージをくらう。

「悪いが俺には通じねえんだよ!」

 オークは咄嗟に蹴りを放ってくるが、全モーションを暗記している俺には関係ない。
横に転がって回避しつつ、俺は新技のレイスラッシュを繰り出した。この技は雷属性が付与されていて、当て続ければ相手はマヒ状態になる。

 攻撃が当たらないせいでイライラしたのか、オークは大技を繰り出してきた。
 だが大技と言っても所詮オーク、やたらめったらと蹴りや突きをのろのろと連続で繰り出して来るだけなので、一発当たればのけぞりを誘発されて全弾受ける羽目になるが、俺は一つ一つのモーションを回避しながらクールタイムが明けるごとにレイスラッシュを当て続けた。

「遅いぞ豚野郎! 俺に当てたきゃその三倍は早く動くんだな!」

 俺が思ったより上手く行き過ぎているせいで調子に乗っていると、オークが見たことのない挙動を取った。

「なんだ!?」

 オークは大技を続けたまま息を吸うと、最初のウォークライと同じく大声を出した。

「な、なんだ!?」

 その瞬間、俺は怯みとは違うよく分からない状態異常に陥り、頭が回らなくなった。
 オークにその隙を突かれ、俺は宙を舞った。

「クソ、痛てぇ……」

 上の階層でレベル上げをして、十分な安全マージンを確保していたお陰で事なきを得た。もしも舐めてかかって、適正レベル又はそれ以下で挑みかかっていたら恐らくミンチだっただろう。

「ゲームだと思って油断するなってことかね」

 俺は道中ドロップした回復薬を飲み干すと、オークに向かって突撃した。

「おいオーク! 舐めてかかって悪かったよ! けどなぁ、こんな所で負けてやれねえんだ!!」

 オークが闇雲に棍棒を振り回すのをすれすれで躱し、俺はレイスラッシュを叩き込んだ。
 すると、先ほどまでの攻撃が功を奏してオークがマヒ状態になった。

 それの瞬間、俺は大技を叩き込んだ。

「いっけぇぇぇ!」

 チャージブレイド。後のレベルで無数の上位互換技が出るが、今の俺の持ち技の中で一番高威力の技だ。この技は単純明快、三秒ほど力をためた後一直線に相手に突撃して力を解き放つ!!

 技が当たった瞬間、俺の剣はオークの上半身を粉々に吹き飛ばした。

「な、なんとか勝った……」

 俺は勝負がついた瞬間、その場にへたり込んだ。


 10分後、俺はオークのドロップ品を確認していた。

「蛮族の斧に山賊の鎧、回復薬にスキルオーブか」

 蛮族の斧は俺のビルドと合わないからいつか換金に回すとして、俺は山賊の鎧を見た。
 山賊の鎧。俺の今着ている皮の鎧と見比べるまでもなく高性能、少なくとも20層までは現役で使えるほどで、序盤に手に入る装備の中では最高峰なのだが……

「いかんせん見た目がなあ……」

 そう、名前からわかる通り見た目が残念なのだ。なんなら新品でも少し汗のにおいが漂ってきそうなデザインである。

「ちょ、ちょっと判断に困るから置いといて。問題はこのスキルオーブだよな……まさか序盤から出るとは」

 スキルオーブ。使用するとパッシブとアクティブ両方の数あるスキルの中から、特定のスキルを除いてランダムで覚えられる激レアアイテムだ。

「とりあえず使ってみるか」

 使用方法は簡単、薬のようにスキルオーブを飲むだけでいい。俺がスキルオーブを飲むと、取り出したステータスカードに新たなスキルが追加された。

「ええっと、なになに? ヘルメスの加護? げっ、加護系のパッシブスキルの中でもネタ枠のスキルじゃねーか」

 そのステータスカードに記載された新たなスキルを見て、俺はがくりと肩を落とした。

 ヘルメスの加護。そもそも神の名前が付く加護系スキルは、本来最強のパッシブ系スキルだが、このヘルメスの加護は加護系のスキルの中でも数少ない産廃スキルである。
 このスキルはクリティカル発動時に、一定の確率でダメージが20倍となる効果を持つ。
 これだけ聞くと強そうだろう? しかしこのスキルの言う一定確率を検証班が調べたところ、どうやら1パーセントを切っているらしい。
 もうお分かりだろうか、クリティカルを出さなければいけない上に1パーセントの確率でしか発動しないスキル。そんなもの実用性皆無である、ましてや加護系のスキルは入手法がスキルオーブしかない。
 希少だし持っていて損はないが、正直もっと他にあっただろうというのがその希少性を持つ者の素直な感想だろう。

 しかしスキルオーブ自体希少なものだと気を取り直して、俺は下の階へと向かった。
 クソダサい山賊の鎧を着て。
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