自称泣きゲーのモブに転生~メーカーは泣けるとかほざいてるけど理不尽なヒロイン死亡エンドなんていらねぇ!!

荒星

文字の大きさ
47 / 88
イザナギ学院一年生編

第9話 小さな一歩、されど偉大な一歩。

しおりを挟む
「ハハハ! 恐れるがいい哀れな虫けらども! 偉大なる我らが神は復活なされる! さあその頭を垂れよ! さすれば我が下僕として貴様らを生かすこともやぶさかではない!」

 下級眷属、邪神より力を賜りし者達。ぶっちゃけほぼ二週目プレイ状態の俺からしたらザコキャラだし、ダンジョンによってはワラワラ湧いてる場所もある。
 ちなみに眷属全般は、この男の様に吸血鬼然とした奴もいれば、獣人みたいなのや悪魔に似たやつもいて千差万別である。稀にネームドも居たりする。
 コイツは推奨レベル40で今の俺はレベル100を超えている。しかし、今の俺にはそんな格下のモンスターでも死神に見えた。

「え……? 何? アレ……」

「アレは、まさか眷属!? 神様達の加護でダンジョンから出られないハズじゃ!?」

 そして冬香とソフィアは臨戦態勢になり、攻撃を仕掛けようとしたが俺は手で止めた。

「悪い、ココは俺に任せてくれないか?」

「は? 何を……」

「そうだよ! 三人で戦った方が……」

「頼む」

 そう言うと、俺は二人を真剣な眼差しで見つめた。

「あぁ、もう。どうしてそこまで一人でやることにこだわる訳?」

「……ごめん、だけど頼むよ。俺にとってこれは大事な事なんだ」

「ハァ……」

 俺の言葉を聞き、冬香は頭を搔きながら溜息をついた。

「訳は話せないわけね」

「……ごめん」

「あーもう、わかったわよ! 但し! 代わりに絶対に生きてアイツをぶちのめして来なさい!」

「本当は止めたいけど……それだけ覚悟を決めた顔されたら止められないよ。それだけあの眷属と戦うことは悠馬にとって大事な事なんだもんね。わかった、私も冬香と待ってる。だからお願い……無事に帰って来て」

「ありがとう……必ず無事に戻る」

 俺はそう言うと、二人に背を向けた。

 

 しかし二人にはそう言ったものの、内心では冷や汗を掻いていた。

 ーーやっぱゲームの中とは言え、自分の事殺した相手ってのはヤベェな。気を抜いたら手が震えちまいそうだ……

 ーー何を怯えている、悠馬。あのような虫けらに負けるオマエではあるまい?

 ーー分かってるんだよ、んな事は……

「なんだコイツ?」

「いきなり下僕にしてやるとか何とか生意気言いやがって」

「ちょっと痛い目に合わせてやる」

 ーーあのバカ野郎ども! レベル10も無いお前らが突っ込んだって! ……原作の俺も突っ込んでたな。

「待つんだ! 康太! 和人! 健介!」

 佐々木康太、遠山和人、山田健介が眷属に向かって魔法を撃つ。

 正直、この時俺の心の弱い部分はあの三人を見捨てて逃げろと囁いていた。

 ーーだけど、それじゃ何も変わんねぇし変えんねぇ! それに和人は友達だし、二人も大事なクラスメイトだ! もうあの三人はよく知らないゲームのモブじゃない! だから!

 眷属が腕を一振りし三人が放った魔法が眷属の攻撃で消滅し、そのまま三人も切り裂かれるかと思ったその時。

「はい、ストップ」

 腕輪を外した俺は持っていた木刀で眷属の放った風の刃を防ぎ、三人を庇うようにして眷属の前に立ちはだかった。

「ったく、あぶねえなぁ! この三人と一緒に、暇潰しに俺と冬香とソフィアで作ってた実寸大テュポ君の絵が吹き飛ぶところだったじゃねえか!」

 俺は強がりながらそう眷属に向かって言い放つ。

「Eクラスの君に下級眷属相手は無理だ悠馬! Eクラスのみんなは下がって! ここはSクラスの僕たち全員で……!」

 ーー悪いな龍斗。コレは俺がこの先進んでいくためにも大事な戦いなんだ。

「ほう? その棒切れ一本で私と戦う気か? 勇敢と無謀を履き違えているようだな」

「さあな? まぁアレだ、テメエ如きにはこの棒切れ一本で十分だ」

「フ、フフフ。ハハハハハ! 貴様、正気か? ならば貴様の手足を引きちぎり貴様を生かしたまま、仲間が一人一人殺されていく光景を見せてやろう。そうすれば貴様も我を舐めた事を泣きわめきながら後悔するだろうよ!」

「そうかい、口だけなら何とでも言えるだろ。さっさとやろうぜ、こっちはアイツらに無事に戻るって約束してんだ」

 そう言って真っ直ぐな眼差しをこちらに向ける二人を見てから、俺は木刀を構えた。

 ーーあの二人が見てんだ、負けられるわけねぇよなぁ!

「その減らず口! いつまで続くかみものだなァ!」

 そうしてその長い爪で俺を切り裂こうと迫ってくる男を眺めながら、俺は疾風迅雷・真を発動させた。

 疾風迅雷・真。元々疾風迅雷はムラサメ専用スキルだが、呪いが解けて進化したおかげでより強力になった。更にムラサメを装備していなくても使用できるというおまけつきだ。無論、その場合効果は半減するが。

 そして俺は同じくムラマサが進化したおかげで、装備していなくても放てるようになった紫電一閃・真を発動させて眷属の右腕を切り飛ばす。

「貴様ッ!!? 何者だァ!?」

 眷属が怯えながら俺に吠えてくるが関係ない。俺は維持したままの紫電一閃・真で眷属の首を切り落とした。

 進化した紫電一閃・真は紫電一閃と違い、五連撃まで可能である。もっとも、今回は二連撃で片が付いてしまったが。

 ーーうわぁ……容赦ないな、悠馬。我もドン引きだぞ。

 ーーうるせぇ。

 俺は木刀を振って血を落とし、徐々に魔力へ還っていく下級眷属の死体を後目で見て、木刀を肩で担いで言い放つ。

「俺か? 俺の名前は鈴木悠馬。テメエらみたいなクソッたれな理不尽を打ち砕く男だ」

「「悠馬!」」

「グエッ!?」

 俺がそう言った次の瞬間、冬香とソフィアの二人がタックルして俺は押し倒された。

「バカ……勝つって信じてても怖いものは怖いんだから……」

「うん……もし悠馬が私を助けてくれた時みたいに大けがしたらって思うと……」

 ソフィアがそう言った瞬間、冬香が顔を上げた。

「え? ソフィアもそんなことあったの?」

「も、ってことは冬香も?」

 二人は顔を見合わせて笑いあうと、満面の笑みで俺を見た。

「ねえ悠馬?」

「勿論、説明してくれるよね」

 ーーあぁ、空が青いなぁ……だけど、やっと一歩踏み出せた気がする。皆の運命を変えて、助ける為の一歩を。

「悠馬ー! 無事かー!?」

 生徒から報告が来て駆けつけてきたのだろう。猛スピードでこちらに迫る姉さんと、置いて行かれ気味の茜を見ながら、俺は笑った。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...