61 / 88
イザナギ学院一年生編
第23話 笑顔
しおりを挟む
「勝った……のか?」
――ああ、どうやら終わったようだな。
――よく寝た……ってお前は何者だ!
――やっと起きたかロト、こっちは強欲の龍アウァリティアだ。
――は? あの大罪の? 我が寝てる間に何があったのだ!?
――あー、話せば長くなるから後でな。
「鈴木悠馬! 無事ですの!?」
龍装を解除してから俺は大の字に寝そべると、エミリーヌが駆け寄ってきた。
「大丈夫大丈夫」
「そんなわけがないでしょう!? 血が……あら?」
エミリーヌは俺の傷口を抑えて止血しようとしたが、首をかしげる。
「痛い痛い痛い! ……あれ? そういえば、血が止まってんな」
――言い忘れていたが、龍装中は少しだけ回復するぞ。
――オートリカバリー付かよ、スゲェな。
あれだけ強いのに自動回復機能もついてるなんて……ぶっ壊れすぎないか? 俺がそんな事を考えていると、エミリーヌが泣き出した。
「良かったですわ……本当に……もしわたくしのせいで貴方が死んだらわたくし……わたくし!」
「あー、もう泣くなよ。言ったろ、見捨てないって。だから、お前を置いて死んだりなんかしねぇよ。それにまだやることもあるし、何よりも俺が死んだら悲しむ人たちが居るからな」
俺はエミリーヌの頭を撫で、その後起き上がろうとしたが……。
「……体に力が入らん」
エミリーヌに支えられながら、出口のポータルから学園ダンジョンの入り口まで戻り、校舎に向かっていた。
「なぁエミリーヌ」
「なんですの?」
俺は、ゲーム内で語られたエミリーヌの家庭環境を思い浮かべながら言う。
「お前の心の中で抱えてる葛藤はお前にしかわからない。けどさ、それでお前が暗い顔をするってんなら、俺に助けてって言えよ。そしたら必ず俺が、お前の顔を曇らせる奴をぶっ飛ばしてやる」
――人の家庭の事を勝手にとやかく言う権利なんてないからな、俺に出来るのはそれくらいだ。
「本当に、頼っても良いんですの?」
「あぁ」
「絶対、迷惑になりますわよ?」
「んな事気にしねーよ」
「本当に?」
「本当だって」
「感謝……しますわ」
そう言うと、エミリーヌは俯く。
「泣くなってば。俺はお前を泣かせたくて、こんな事言ってるわけじゃないんだからな? 俺はお前のちょっと上から目線で、高笑いを浮かべてるいつもの姿が見たいんだ。だからさ、笑えよ。エミリーヌ」
「はい……はいですわ!」
エミリーヌは顔を上げると、満面の笑みで言った。
「お前、泣き笑いとか器用なことするな。初めて見たぞ」
――だけど、やっぱりお前には笑顔が一番似合ってるよ。
「そういえば、龍装? とかいうの、してた方が良いんじゃないですの? 回復できるのなら、そうしてた方がいいと思いますわよ」
「それもそうだな」
俺は、龍装を発動させた。
「それにしても不思議な鎧ですわね」
「まあな」
そうして暫く歩いて校舎に着くと、茜が姉さんに薙刀を突きつけられながら慌てていた。
「ま、待て。落ち着くんだ円華! 悠馬達は今人員をフルに使って捜索してる! だからその薙刀をしまえ!?」
「そもそも、学園ダンジョン如きで悠馬が行方不明になる訳がありません。誘拐か、犯罪に巻き込まれたか……最近、警備が緩すぎませんか? ねぇ、学園長?」
「邪神教団の幹部相手に守り切れるレベルの警備なんて、学校の警備じゃない気が……申し訳ありませんでした! 口答えはしません! ……俺にとっても悠馬は大事な身内だし、エミリーヌも大事な生徒だ。必ず……」
「あのーすいません」
「一体何処に行って……誰だ君は!」
「え、ちょ! 姉さん!?」
俺が声を掛けた瞬間、姉さんは薙刀を突き付けてきた。
「鈴木悠馬、今は龍装を解除した方が良いと思いましてよ……」
「あ、そっかそっか。ごめん姉さん、茜さん。心配掛けた」
そして俺が龍装を解除すると、茜と姉さんは目を丸くした。
傷は塞がってたので、保健室で休んだ後。放課後、駆け付けた冬香とソフィアの二人と話をしていた。
「それにしても、トラブルに巻き込まれやすい体質だよね。悠馬」
「ホント、この入学してからの短い期間で巻き込まれすぎよ」
「巻き込まれたくて巻き込まれてんじゃないんだけど……」
「円華さんなんて、ずーっと右往左往してたよ? 私達も凄く心配したんだから」
ソフィアはむすっとした顔でそう言う。
「いきなり、学園ダンジョンで悠馬とAクラスの生徒が行方不明って話が飛び込んできて、滅茶苦茶心臓に悪かったわよ」
「ゴメンゴメン。けど、学園ダンジョンの脱出ポータルが別のダンジョンに出るポータルと入れ替わってるなんて、誰も予測なんてできなかっただろ?」
――イザナギダンジョンの事は知ってたけどな……。
「まぁそれもそうね。傷が塞がってるとはいえ、あんまり激しく動くんじゃないわよ。そういえば、この後直ぐに帰れるの?」
「ん? もうちょい事情聴取されてから帰れるらしい」
「……そっか。それじゃあ、先に帰ってるからね! 今日の洗濯当番私が代わっておくから!」
「サンキューな」
俺とソフィアがそんな会話をしていると、冬香がさび付いたような動作でこちらを見てくる。
「洗濯当番? ……え? ……は?」
――……あ。
――ああ、どうやら終わったようだな。
――よく寝た……ってお前は何者だ!
――やっと起きたかロト、こっちは強欲の龍アウァリティアだ。
――は? あの大罪の? 我が寝てる間に何があったのだ!?
――あー、話せば長くなるから後でな。
「鈴木悠馬! 無事ですの!?」
龍装を解除してから俺は大の字に寝そべると、エミリーヌが駆け寄ってきた。
「大丈夫大丈夫」
「そんなわけがないでしょう!? 血が……あら?」
エミリーヌは俺の傷口を抑えて止血しようとしたが、首をかしげる。
「痛い痛い痛い! ……あれ? そういえば、血が止まってんな」
――言い忘れていたが、龍装中は少しだけ回復するぞ。
――オートリカバリー付かよ、スゲェな。
あれだけ強いのに自動回復機能もついてるなんて……ぶっ壊れすぎないか? 俺がそんな事を考えていると、エミリーヌが泣き出した。
「良かったですわ……本当に……もしわたくしのせいで貴方が死んだらわたくし……わたくし!」
「あー、もう泣くなよ。言ったろ、見捨てないって。だから、お前を置いて死んだりなんかしねぇよ。それにまだやることもあるし、何よりも俺が死んだら悲しむ人たちが居るからな」
俺はエミリーヌの頭を撫で、その後起き上がろうとしたが……。
「……体に力が入らん」
エミリーヌに支えられながら、出口のポータルから学園ダンジョンの入り口まで戻り、校舎に向かっていた。
「なぁエミリーヌ」
「なんですの?」
俺は、ゲーム内で語られたエミリーヌの家庭環境を思い浮かべながら言う。
「お前の心の中で抱えてる葛藤はお前にしかわからない。けどさ、それでお前が暗い顔をするってんなら、俺に助けてって言えよ。そしたら必ず俺が、お前の顔を曇らせる奴をぶっ飛ばしてやる」
――人の家庭の事を勝手にとやかく言う権利なんてないからな、俺に出来るのはそれくらいだ。
「本当に、頼っても良いんですの?」
「あぁ」
「絶対、迷惑になりますわよ?」
「んな事気にしねーよ」
「本当に?」
「本当だって」
「感謝……しますわ」
そう言うと、エミリーヌは俯く。
「泣くなってば。俺はお前を泣かせたくて、こんな事言ってるわけじゃないんだからな? 俺はお前のちょっと上から目線で、高笑いを浮かべてるいつもの姿が見たいんだ。だからさ、笑えよ。エミリーヌ」
「はい……はいですわ!」
エミリーヌは顔を上げると、満面の笑みで言った。
「お前、泣き笑いとか器用なことするな。初めて見たぞ」
――だけど、やっぱりお前には笑顔が一番似合ってるよ。
「そういえば、龍装? とかいうの、してた方が良いんじゃないですの? 回復できるのなら、そうしてた方がいいと思いますわよ」
「それもそうだな」
俺は、龍装を発動させた。
「それにしても不思議な鎧ですわね」
「まあな」
そうして暫く歩いて校舎に着くと、茜が姉さんに薙刀を突きつけられながら慌てていた。
「ま、待て。落ち着くんだ円華! 悠馬達は今人員をフルに使って捜索してる! だからその薙刀をしまえ!?」
「そもそも、学園ダンジョン如きで悠馬が行方不明になる訳がありません。誘拐か、犯罪に巻き込まれたか……最近、警備が緩すぎませんか? ねぇ、学園長?」
「邪神教団の幹部相手に守り切れるレベルの警備なんて、学校の警備じゃない気が……申し訳ありませんでした! 口答えはしません! ……俺にとっても悠馬は大事な身内だし、エミリーヌも大事な生徒だ。必ず……」
「あのーすいません」
「一体何処に行って……誰だ君は!」
「え、ちょ! 姉さん!?」
俺が声を掛けた瞬間、姉さんは薙刀を突き付けてきた。
「鈴木悠馬、今は龍装を解除した方が良いと思いましてよ……」
「あ、そっかそっか。ごめん姉さん、茜さん。心配掛けた」
そして俺が龍装を解除すると、茜と姉さんは目を丸くした。
傷は塞がってたので、保健室で休んだ後。放課後、駆け付けた冬香とソフィアの二人と話をしていた。
「それにしても、トラブルに巻き込まれやすい体質だよね。悠馬」
「ホント、この入学してからの短い期間で巻き込まれすぎよ」
「巻き込まれたくて巻き込まれてんじゃないんだけど……」
「円華さんなんて、ずーっと右往左往してたよ? 私達も凄く心配したんだから」
ソフィアはむすっとした顔でそう言う。
「いきなり、学園ダンジョンで悠馬とAクラスの生徒が行方不明って話が飛び込んできて、滅茶苦茶心臓に悪かったわよ」
「ゴメンゴメン。けど、学園ダンジョンの脱出ポータルが別のダンジョンに出るポータルと入れ替わってるなんて、誰も予測なんてできなかっただろ?」
――イザナギダンジョンの事は知ってたけどな……。
「まぁそれもそうね。傷が塞がってるとはいえ、あんまり激しく動くんじゃないわよ。そういえば、この後直ぐに帰れるの?」
「ん? もうちょい事情聴取されてから帰れるらしい」
「……そっか。それじゃあ、先に帰ってるからね! 今日の洗濯当番私が代わっておくから!」
「サンキューな」
俺とソフィアがそんな会話をしていると、冬香がさび付いたような動作でこちらを見てくる。
「洗濯当番? ……え? ……は?」
――……あ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる