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第5話 「お兄ちゃん」

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その日は、朝から物凄い量の雨が降っていた。
そして気づくと、外はまるで川のようになっていた。

「レオン、流石に雨漏りはしないよね?」
「俺の魔法があるうちはな」
「あと、こんなにジメジメすると嫌だから雨止ませてくれない?」
「それが、俺のどんな魔法使っても止まないんだ。わざわざこれの為に<スキル生成>まで使ったのに」
「まさか、この雨って魔王軍の仕業!?」
「かもな。けど、こんな陰湿なことしてくるか?」
「一般人には雨漏りとか浸水の被害がでるから、それを狙ってるんじゃないかな」
「だとしたら、止めないとな。もしその犯人が分かったらとっちめるか?」
「相手が魔王軍だったらね。どっかの祈祷師がうっかりこの量を降らせちゃったとかなら許すけど」
「それじゃあ、<原因特定>」

<原因特定>を使って、すぐに犯人は絞れた。しかし、分かったわけではない。
『原因:魔王軍幹部クラスの禁忌により自然発生したものの可能性大。また、半径3キロ圏内に魔王軍幹部を検出』

あー、マズいわこれ。

「な、なあ、魔王軍幹部が半径3キロ圏内にいるらしい。どうする、逃げる?戦う?」
「なんで仮にも勇者として召喚されたレオンの選択肢に逃げるが入ってるの?戦うに
決まってるじゃん」
「分かった」

その時、玄関のベルを何者かが鳴らした。
こんな大雨の中で来客はおかしい。いや、魔王軍幹部だったら奇襲してくるはずだから奴らではないはず。

「はい、どちらさまで?」

ドアが開き、マントに身を包んだ青色の髪の少女が泣きながら入ってきた。
どうやら迷子らしい。こんな森の奥地なら迷っても仕方ないか。
その娘が入ってきてすぐ、シーファは神聖魔法を展開して臨戦態勢に入っていた。

「おいシーファ、この娘は敵じゃな…」
「よく見て!頭から2本の角が生えてる。どうみても魔族、しかも観測できる魔力量的には上級の」
「た、確かに…」

まだ魔物慣れしていない俺にはこの娘が魔族だとは気がつけなかった。
ただ、一切敵意を感じない。

「なあ、お前。お前が上級の魔族なら俺たちが勇者だって分かってるはずだろ。どうしてこんなところに?」
「や、やっぱり生きてたんだ、勇者」
「もしかして、勇者が殺されたって話は魔王軍にも伝わってるのか?」
「うん。でも、ボクの固有スキル<ワールドテラー>が勇者は生きてるって教えてくれた。なのにみんな信用できない、お前はまだ子供だから、って言って。ボクだって立派な魔王軍幹部の1人なのに」
「つまり、お前はスキルで分かったことを伝えただけなのに他の魔王軍幹部に嘘だって決めつけられたワケだな」
「うん。だから、逃げてきた。勇者の仲間になって復讐してやる、って」
「そうか。俺たちの仲間になりたいなら…」

その時、シーファに後ろから肩をぐいっと掴まれた。

「ねえ、もしもその娘の言ってることが全部嘘で、私たちを嵌めようとしてるんだとしたら?何かあってからじゃ遅いよ」
「それもそうだな…」

俺がシーファの意見に納得してすぐに、その娘は更に悲しそうな顔になった。
うーむ。何かしてやれることはないか。

「なら、俺のスキルで判断すればいいな」
「そんなことが分かるスキルなんかあるの?魔道具の嘘発見器でもないと無理なんじゃない?」
「今、俺はスキル<真偽判定>を作った。これをこの娘の発言にかけて、嘘だった場合は討伐か遠くに追放づるか。もしも本当だったら一緒に住まわせる。それでいいか?」
「まあ、いいけど」

俺としては魔族だろうと困ってる子供を見捨てるわけにはいかないし、俺たちと魔王軍に復讐したいっていうのが本当であってくれるといいが。

「それじゃあ、質問だ。本当にお前は、俺たちの仲間になって魔王軍に復讐したいのか?正直に答えてほしい」
「うん。絶対、復讐する」

そして、俺の<真偽判定>は<真>を示した。つまり、嘘じゃない。

「どうやら、嘘じゃないらしいな。っていうことで、一緒に住んでいいぞ」
「やったぁ!!」

ただ、シーファは何故か不機嫌そうだった。

「どうした?魔王軍幹部を討伐し損ねて少々悔しいのか?」
「いや、これって一緒に住む女の子が増えたってことでしょ!?もしもこの娘までレントのことを好きになったらどうするの!?」
「ま、まあ、この娘の前で俺たちがイチャつけば察してくれるんじゃないのか?」
「そ、そんなこと…!!」
「恥ずかしいのか」

こんな俺たちの会話を見て、その娘はクスッと笑った。

「そういえば、お前の名前は?」
「ボクはファレア・リーテェアーカ。ファレアでいいよ、お兄ちゃん」
「お兄ちゃん、か。いやー、昔っから妹欲しかったんだよねー」

その時、シーファが俺の胸ぐらを掴んできた。

「妹が欲しかったんなら言ってくれればよかったのに~(圧)。私がいくらでも妹になってあげたのにな~、お兄ちゃん・・・・・?(圧)」
「いや、シーファは彼女枠だし、それに歳も俺の2倍近くあるじゃん」
「最後の一言が余分だね!!」

この前の激痛とは似て非なるものが俺の体を駆け抜けたような気がした。俺は気絶した。
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