地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ

文字の大きさ
12 / 200
魔法学校編

アルフィスとアゲハ

しおりを挟む
今日の学校は昨日の対応とは打って変わっていた。

朝の登校時、魔法学校の男子生徒はアルフィスを見る度、声を掛ける。

「よう!アルフィス!」

「昨日はカッコよかったぜ!」

「聖騎士に勝ったなんてマジかよ!」

一体何人に話しかけられたことやら。
アルフィスは戸惑って語彙力を失い、"おう"とか"まあな"という言葉しか出なかった。

昨日の試合を観戦していた男子生徒達が、ある事ない事を語り、瞬く間にその噂は流布していた。

"魔法使いが聖騎士に勝った"

しかもこの実力主義の世界で魔法学校の落第寸前のアルフィスが聖騎士学校の学年最強と言われるアゲハを圧倒し勝利を納めたことは衝撃的だった。

「なんか、今日みんなに声掛けられるだが、俺なんかしたか?」

ザックとライアンと校門前で出会い、三人で教室へ向かう。

「なんかもなにも、魔法使いが聖騎士に勝つなんて前代未聞だぞ!」 

「そうだよ。それが学生同士であってもね!」

「ふーん」

話を人ごとのように聞くアルフィスを見て呆れる二人。
アルフィスは全くことの重大さを理解していなかった。

「まぁでもエンブレムを最初から使われてたら負けてたね」

「確かに。相手からハンデもらってんだから、勝ったかどうかと言われれば微妙だぞ」

ザックとライアンは二人で昨日の決闘に盛り上がる。
否定的な意見を言っておきながら、凄く楽しそうだった。

「エンブレム使われても勝ってたさ」

アルフィスの発言に少し小馬鹿にした笑いが出るザックとライアン。
二人は流石にアルフィスが強がっているのだろうと思った。

「はぁ?無理に決まってんだろ」

「そうだよ。特にアルの戦闘スタイルは近接型。補助魔法が掻き消され放題じゃないか」

やっぱり否定的な意見を言う二人だが、お構い無しにアルフィスは続ける。

「エンブレムには弱点があるんだよ」

そのアルフィスの発言にザックとライアンは驚いていた。
この世界で最強と言われるほどのスキルであるエンブレムに弱点があるとは一体どういうことかと。

「弱点ってなんなんだよ」

「そんなの聞いたことないよ?」

「お前らに言ってもわからんさ」

話しをしているうちに教室まで辿り着くと、やはり昨日とは真逆で、まるで英雄が帰還したかのような眼差しでアルフィスはクラスメイトから見られた。

アルフィスは悪い気はしなかった。


_________________________



下校途中、校門前に人だかりができていた。
アルフィスがまたかと呟き、人だかりの方を見ると、アームホルダーをしたアゲハが立っていた。

「またなんか用か?」

アルフィスがぶっきらぼうに尋ねる。
アゲハの周りの女子生徒はアルフィスを睨んでいる。
男子からの支持は集めたが、女子からの評価はまた下がったらしい。

「昨日は油断しました。自分の強さを証明するはずが、恥を晒すとは」

「わかったろ、まだ自分が弱いってことが」

アゲハはその言葉を聞いて目を閉じる。
自分はまだまだで、学年最強と周りから言われて慢心していたのだと痛感した。
"強くなった気でいると成長は止まる"と先生にも言われたなとアゲハは昔のことを思い出した。

「ところで、お前、バディは決まったのか?」

アルフィスが思いもよらないことを尋ねる。
周りにいる生徒達も騒めく。
さすがに昨日の今日ですぐ決まるはずはない。

「まだですが」

「俺と取引しないか?」

「取引?」

どこかで聞いたことがある会話にアゲハは戸惑い、ザックとライアンは顔を見合わせる。

「俺とバディを組まないか?そのかわり学位を取ったら水の国の最北端の医療施設へついてきてもらう。母さんが死にそうでな。その後なら火の国でもどこでも行ってやる」

思ってもないことにアゲハはさらに驚いた。
この発言には男子生徒も女子生徒もみな顔を見合わせた。

「なるほど、あなたはこういう気持ちだったんですね……いいでしょう。そのかわり必ず今年優勝する」

「決まりだな」

このやり取りに、周りの生徒達は沸き立つ。
もはや最強パーティなのではないかと。

学年最下位の魔法使いと学年最強の聖騎士のバディがここに誕生した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  ブックマーク・評価、宜しくお願いします。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...