共学の学校にもしも男子が1人しかいなくなったら?

文字の大きさ
4 / 31

3話 涼の心の変化

しおりを挟む
涼は、朝の通学路を歩きながら、自分の中で少しずつ変化を感じていた。学校が始まってから数週間が経過し、男子一人という状況にも少しずつ慣れつつあった。しかし、完全に心の中でその変化を受け入れられたわけではない。涼はまだ、他の男子生徒たちがいない寂しさや、女子たちに気を使われることへの複雑な感情が消えないことに気づいていた。

朝のホームルームが始まると、涼はいつものようにクラスの席についた。周りでは女子たちがいつものようにおしゃべりしているが、今日の涼はその会話に少しだけ参加したいという気持ちが湧いていた。昨日までは、女子たちの会話に自分が混じることに少し抵抗を感じていたが、今日はその気持ちが少し薄れていた。

「おはよう、涼。」

美咲がいつものように挨拶をしてくる。その言葉に、涼は心の中で少しだけほっとした。美咲は、涼が男子一人でいることに対して特別な気を使うことなく、自然に接してくれる数少ない存在だ。

「おはよう、美咲。」

涼は少し照れくさく答えると、美咲はにっこりと笑った。

「今日、放課後にみんなで勉強会しようと思ってるんだけど、涼も来る?」

涼はその提案に少し驚いた。これまで、女子たちと一緒に勉強する機会はあまりなかった。男子が一人だけという状況で、どうしても気を使われていると感じていたからだ。しかし、美咲は何の違和感もなくその話を持ちかけてきた。

「うーん、いいよ。じゃあ、少し顔を出すかな。」

涼は少し迷ったが、思い切って参加することに決めた。勉強会が終わった後の女子たちとの会話は、涼にとって新しい体験になるかもしれなかった。

放課後、教室の一角に集まった女子たちの中で、涼は少し緊張しながらも席に着いた。女子たちはみんなで分け合って教科書を広げ、問題を解く準備をしていた。涼は自分もその中に加わることに少しの抵抗を感じながらも、普段のように問題集を開いた。

「涼、ここの問題分からないんだけど、教えてくれる?」

最初に声をかけてきたのは、委員長の真琴だった。真琴は少し戸惑った様子で問題を指さしながら、涼に助けを求めてきた。涼はそのお願いに対して、普段通りに淡々と答える。

「この部分はこうやって解けばいいんだよ。」

涼が問題を解いてみせると、真琴は感心したように目を輝かせた。

「さすがだね、涼くん。本当に頭いいんだね。」

涼は少し照れくさそうに笑った。それでも、真琴の言葉に、心のどこかで嬉しい気持ちを感じていた。涼は、男子が一人でいることに対して最初は不安や抵抗を感じていたが、少しずつ自分の存在がクラスで認められ、受け入れられつつあることを実感していた。

勉強会が進んでいく中で、涼は他の女子たちとも少しずつ会話を交わすようになった。最初はぎこちなかったが、次第にその距離が縮まり、涼も自分がこのグループに溶け込んでいる感覚を持つようになった。

「涼って、意外と面白いんだね。」

「うん、最初は真面目すぎるかなって思ってたけど、ちゃんと話すと楽しいよ。」

涼は、その言葉に少し驚きながらも、どこかで安心していた。彼にとって、これまで男子が一人だけという状況がどれほど特別で気まずいものであるかを、他の女子たちが理解し、受け入れようとしてくれていることが感じられた。特別扱いされることが多かったが、今ではその扱いが心地よく感じ始めていた。

勉強会が終わり、みんなが帰る準備をしていると、美咲が涼に声をかけてきた。

「涼、今日もありがとう。すごく助かったよ。」

涼は笑って答えた。

「うん、何かあったらまた教えてね。」

「うん! また明日ね。」

その言葉に、涼は自然に笑顔を返した。美咲が言ったように、今日は少しだけでもみんなと一緒に過ごせたことで、心が軽くなったような気がした。

帰り道、涼は一人で歩きながら、今日のことを振り返っていた。確かに男子が一人だけという状況は未だに不安を感じることもあるが、少しずつ周囲が自分を受け入れ、自然に接してくれるようになったことを実感していた。そして、涼自身もその中で少しずつ変わり始めていた。

以前は、周りからの視線や気遣いが重荷に感じていたが、今ではその中に安心感や心地よさを感じることができるようになった。涼は、自分がどんどん周囲に溶け込んでいる感覚を覚え、少しだけ未来に希望を感じるようになった。

「これから、少しずつ楽しくなっていくのかな…」

涼はそう思いながら、ゆっくりと歩を進めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...