共学の学校にもしも男子が1人しかいなくなったら？

19 秋風とともに

8月の終わりが近づき、夏休みが終わるのを感じさせる涼しげな風が校庭を吹き抜けていた。新学期が始まる前の最後の休日、涼は美咲と一緒に秋の始まりを感じる散歩に出かけた。

「ねえ、涼。今日、どこ行きたい？」

美咲は涼に問いかけながら、歩きながら笑顔を見せた。涼は少し考えてから、ふと立ち止まった。

「うーん、近くの公園に行こうか。最近あまり行ってなかったから、静かに歩きたい気分だな」

美咲は頷きながら、涼の隣を歩き続けた。

「うん、いいね。涼がそう言うなら、私はどこでもついていくよ」

ふたりは静かな午後の空気を楽しみながら、近くの公園へと向かった。周囲の木々がほんのり色づき始め、秋の気配が感じられる。

公園のベンチに座ると、美咲がしばらく黙って遠くを見つめていた。

「涼、私、最近ちょっと思うんだけど…」

涼はその言葉に少し緊張しながら顔を向けた。

「うん、何？」

美咲は涼を見つめると、少しだけ照れたように微笑んだ。

「涼って、なんだか最近ますますかっこよくなった気がする」

その言葉に、涼は思わず顔を赤らめた。

「え…そうかな？」

美咲は嬉しそうに笑った。

「うん！最初は、少しおとなしくて引っ込み思案な感じだったけど、最近は自分のことを少しずつ大事にしてるって感じがする」

涼はその言葉に驚きながらも、心の中で嬉しさを感じていた。

「そう言われると、ちょっと照れるな。でも、美咲も、もっと素敵になったよ」

美咲は照れくさそうに笑った。

「本当？ありがとう。でも、私は涼がいるから、もっと頑張ろうって思えるんだよ」

その瞬間、涼の胸が温かくなった。美咲の言葉に、何かを深く感じる自分がいた。

「これからも、ずっと一緒に頑張ろうな」

美咲は涼の言葉に静かに頷いた。そして、しばらく沈黙が続いたが、それは心地よいものだった。

その時、涼のスマホが鳴った。画面を見ると、クラスのグループLINEだった。

「体育祭の反省会、明日やるってさ」

涼は少し面倒だなと思いつつ、返信を打った。

「わかった、参加するよ」

美咲もその通知を見て、ふっと笑った。

「またみんなで集まるんだね。楽しかったし、少し寂しいけど、こうしてみんなと関わっていけるのは本当に嬉しい」

涼はその言葉に深く頷きながら、改めて感じた。

（俺も、もっとみんなと関わっていきたい。美咲と一緒に、みんなと一緒に）

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次の日、反省会が終わると、涼は改めてクラスメイトたちと積極的に関わるようになった。以前よりも、もっと自然に会話ができるようになり、心地よい距離感で接することができた。

「涼、最近、ほんとうに変わったよね」

クラスメイトの一人、加藤が言った。

「うん、最初はおとなしい印象だったけど、今はリーダーシップを取ることも増えたし、みんなと良い関係を築いてるよな」

涼は少し照れくさそうに笑った。

「まあ、少しずつ慣れてきたのかもな。でも、美咲やみんながいたからこそ、こんな風に成長できたんだと思う」

その言葉に、周囲は温かい笑顔を見せてくれた。

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秋風が吹く中、涼と美咲は、心の中で確かな絆を感じていた。夏の終わりと共に、二人の関係は少しずつ変わり、確かなものになりつつあった。

次の学期が始まり、涼は新しい挑戦を迎えようとしていた。

（これからも、みんなと一緒に。美咲と一緒に、もっと楽しい時間を過ごしていけるように）

涼の心には、未来への希望が確かにあった。