11 / 12
11. 消費期限切れの末路
しおりを挟む
季節は巡りに巡って、新しい春の訪れと共に快楽殺人事件の記憶も皆の記憶から消え去っていった――
なんておしゃれなエピローグで終わらせられたら、かの小説大賞の受賞も容易なんだろうが、生憎これは現実だ。そう簡単に物事は終わるはずは無い。任意同行に踏み切った警視庁は複雑な工程の事務作業を終えた後、俺の本業である検察官へと仕事がバトンタッチされた。そう、裁判を行うときがようやく来た、というわけであった。そこで冒頭へと時間軸を戻して、裁判の様子を傍聴して頂こう。
「では、質問を変えます。」
「あなたは、フラワーアレンジメントをなさるということですが、人の心に寄り添
うためにあるものが、このような醜い形で利用され、汚れたものとして扱われることについては、どうお考えですか?」
奥原の頭が一瞬動いた。動揺している。
「今回の犯罪は全くといって美しくない、無差別な殺人は心が籠もっておらず、同情や共感の余地もない。数だけこなしても、メディアを騒がせても、人々はあなたのしたことを認めてくれる日は来ませんよ。」検察官と奥原の視線が交わり、沈黙が法廷内に響いた。幽霊が本当に存在するのであれば、この沈黙こそが殺されたものの魂の叫びである、なんていつかの時代の文学者が綴っていそうな、そんな雰囲気に包まれた。
「私たちの作品は美しい、」そう発したのは、傍聴席に座っていた石森だった。
「汚れてなんていない、神聖な作品であり、作品を完成させるためであったら手段は選ばない。そして、その作品の価値を理解できないこの世の人たちの方が、醜くく、汚れている。」作品を否定されたのがよほど気に触ったのか、気が動転したように石森は声を張り上げていた。瞳孔が開いており、瞳の中から心の闇が垣間見えるような気がした。
所謂、殺人鬼の形相であった。
傍聴席は大きなざわめきが湧いたが、裁判官はそれを止めなかった。検察官と共に安堵の表情を浮かべ、石森を見つめた。
つまらない。問い詰められてからの自白があまりにも早い。文字数に迫られた三流小説みたいだ。私はもう少しドラマチックな散り方を望んでいたというのに。二人の最期は華が無かったな。なんてことを言ったら殺された上で口にラフレシアでも詰め込まれそうだが。
私は傍聴席から立ち上がり、そっと法廷を出た。
犯罪心理学者のロバート・ヘアのサイコパシーチェックリストでは、刺激のニーズ・退屈傾向、病的嘘、後悔や罪悪感の欠如がある人は殺人鬼になりやすい等と書いているが、その中でプライドが異常に高い自己中心的、自己価値が高い人というのも項目の一つとなっている。故に作品を否定されると一瞬で崩れる。案外殺人鬼も脆いものである。
なんておしゃれなエピローグで終わらせられたら、かの小説大賞の受賞も容易なんだろうが、生憎これは現実だ。そう簡単に物事は終わるはずは無い。任意同行に踏み切った警視庁は複雑な工程の事務作業を終えた後、俺の本業である検察官へと仕事がバトンタッチされた。そう、裁判を行うときがようやく来た、というわけであった。そこで冒頭へと時間軸を戻して、裁判の様子を傍聴して頂こう。
「では、質問を変えます。」
「あなたは、フラワーアレンジメントをなさるということですが、人の心に寄り添
うためにあるものが、このような醜い形で利用され、汚れたものとして扱われることについては、どうお考えですか?」
奥原の頭が一瞬動いた。動揺している。
「今回の犯罪は全くといって美しくない、無差別な殺人は心が籠もっておらず、同情や共感の余地もない。数だけこなしても、メディアを騒がせても、人々はあなたのしたことを認めてくれる日は来ませんよ。」検察官と奥原の視線が交わり、沈黙が法廷内に響いた。幽霊が本当に存在するのであれば、この沈黙こそが殺されたものの魂の叫びである、なんていつかの時代の文学者が綴っていそうな、そんな雰囲気に包まれた。
「私たちの作品は美しい、」そう発したのは、傍聴席に座っていた石森だった。
「汚れてなんていない、神聖な作品であり、作品を完成させるためであったら手段は選ばない。そして、その作品の価値を理解できないこの世の人たちの方が、醜くく、汚れている。」作品を否定されたのがよほど気に触ったのか、気が動転したように石森は声を張り上げていた。瞳孔が開いており、瞳の中から心の闇が垣間見えるような気がした。
所謂、殺人鬼の形相であった。
傍聴席は大きなざわめきが湧いたが、裁判官はそれを止めなかった。検察官と共に安堵の表情を浮かべ、石森を見つめた。
つまらない。問い詰められてからの自白があまりにも早い。文字数に迫られた三流小説みたいだ。私はもう少しドラマチックな散り方を望んでいたというのに。二人の最期は華が無かったな。なんてことを言ったら殺された上で口にラフレシアでも詰め込まれそうだが。
私は傍聴席から立ち上がり、そっと法廷を出た。
犯罪心理学者のロバート・ヘアのサイコパシーチェックリストでは、刺激のニーズ・退屈傾向、病的嘘、後悔や罪悪感の欠如がある人は殺人鬼になりやすい等と書いているが、その中でプライドが異常に高い自己中心的、自己価値が高い人というのも項目の一つとなっている。故に作品を否定されると一瞬で崩れる。案外殺人鬼も脆いものである。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
怪異の忘れ物
木全伸治
ホラー
千近くあったショートショートを下記の理由により、ツギクル、ノベルアップ+、カクヨムなどに分散させました。
さて、Webコンテンツより出版申請いただいた
「怪異の忘れ物」につきまして、
審議にお時間をいただいてしまい、申し訳ありませんでした。
ご返信が遅くなりましたことをお詫びいたします。
さて、御著につきまして編集部にて出版化を検討してまいりましたが、
出版化は難しいという結論に至りました。
私どもはこのような結論となりましたが、
当然、出版社により見解は異なります。
是非、他の出版社などに挑戦され、
「怪異の忘れ物」の出版化を
実現されることをお祈りしております。
以上ご連絡申し上げます。
アルファポリス編集部
というお返事をいただいたので、本作品は、一気に全削除はしませんが、ある程度別の投稿サイトに移行しました。
www.youtube.com/@sinzikimata
私、俺、どこかの誰かが体験する怪奇なお話。バットエンド多め。少し不思議な物語もあり。ショートショート集。
いつか、茶風林さんが、主催されていた「大人が楽しむ朗読会」の怪し会みたいに、自分の作品を声優さんに朗読してもらうのが夢。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる