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第三章
第四話 勘違いからのよしよし
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「さぁ、今すぐに解放してやろう。スキル発動! 【奴隷契約】」
襲いくる奴隷兵たちに向けてスキルを発動した。
奴隷兵の額にある奴隷の紋様が消えると、奴隷化された人々の動きがピタリと止まる。
「あれ? 俺の意思どおりに体が動く」
「本当だ。無理矢理体を動かされている感覚がなくなっている」
「やった! 俺たちは自由だ!」
奴隷化が解除された人々が歓喜の声を上げ、喜び合った。中には互いに抱き合い、涙を流しているものもいる。
「ありがとう。あなたが助けてくれたのですね」
「本当に助かりました。あなたがいなければ、一生あの女にこき使われていたでしょう。本当にありがとうございます」
「あなたがいてくれて本当に良かった」
解放された元奴隷兵の人たちが、口々に感謝の言葉を述べる。
本当に良かった。ゲームどおりにならなかったのなら、今ごろ大変なことになっていたよ。スキルの設定どおり、奴隷化を解除できるのは【奴隷契約】のユニークスキル持ちのみで間違いなかったな。
「「ユウリ!」」
背後からカレンとアリサの声が聞こえ、振り返る。門の外から様子を見ていた彼女たちが、安全になったと判断してこちらに来てくれた。
「一応ここら一帯にいた奴隷は解放した。だけどまだ奥にもいるはずだ」
「本当に奴隷たちを解放するなんてすごい! デートした甲斐があったわね!」
「まさか、本当に奴隷を解放できるなんて……ま、まぁ、少しだけなら認めてあげてもいいわよ」
カレンは素直に喜んでくれたが、アリサはツンツンした言い方で俺のことを誉めてくれた。
みんなから称賛の声を浴びせられる中、コワイがいると思われる建物がある方角を見る。
今度こそカレンに猿轡を噛ませて、女王様プレイを楽しもうとした罰を受けさせてやる。
「やったー! いたたたた」
自由にになって喜んでいた町民の男が、苦痛で顔を歪め、腕を抑える。
今まで無理に体を動かさられたことで、体が悲鳴を上げ出したのかもしれない。
「はぁー、もう、しょうがないわね」
アリサが小さく息を吐くと、腕を抑えている男性のもとに近付く。
「【自然治癒】」
金髪ツインアップの女の子が、男に手をかざしてスキルを発動する。すると彼の腕が青白く光り、その光は一秒ほどで消えた。
「はい。治療終わりよ。もう痛くないはずだから」
「本当だ! 全然痛くない! ありがとう。まさかこんなに直ぐに痛みが引くとは」
「当たり前よ。だってアタシ、聖女だもの」
「聖女様! この度は本当にありがとうございます!」
ケガを治してもらった男は声を上げて感謝の言葉を述べると、アリサはいきなりドヤ顔をして俺たちを見た。
いやいや、ドヤ顔しているけど、聖女なのはお前自身じゃなくって、ユニークスキルの方だからな。
心の中でツッコミを入れる。だが、痛がっている人に率先して傷の手当てをする姿は、本当の聖女のようにも見えた。
「いたたたた! いったい!」
「俺も急に体の全身が痛み出した!」
アリサに傷を治してもらった男性を見て、次々と解放された奴隷たちが痛みを思い出したかのように口々に痛いと言い出す。
中には本当に痛がっているのか怪しいやつもいた。
「はいはい、わかったわよ。アタシに癒されたい人は並びなさい。全員の傷を治してやるから」
金髪ツインアップの女の子の言葉に、元奴隷たちは顔を綻ばせて一列に並び出す。
「アリサ、急にみんなの人気ものになったね」
「まぁ、傷付いたところに優しくされれば、誰だってああなるだろう」
男って単純だからな。まぁ、それを言ってしまってはブーメランなんだけど。
「ねぇ、ユウリも傷付いた時に、アリサに優しくされたら彼女のことを好きになるの?」
「え?」
唐突な言葉に俺は驚いてしまう。
もしかして、カレンは俺のことを心配しているのか? 俺がアリサのことを好きになると心配している?
それって、もしかしてカレンはそうなって欲しくないと思っている。つまり妬いているのか!
カレンが赤い瞳で見詰めてくる。気のせいかもしれないが、彼女の目が潤んでいるような気がした。
「な、何言っているんだ。俺が好きなのはカレンだけだ。アリサなんか好きになる訳がないだろう」
心臓の鼓動が激しく高鳴る中、俺は言葉を噛みそうになりながらもカレンが一番だと伝え、安心させようとした。
「何だ。好きになってくれないんだ」
「え?」
今度は別の意味で驚かされた。
どうしてカレンがそんなことを言うんだよ。何? アリサのことを好きになってほしいの? それってもう、俺は恋人候補から除外されたってことなのか!
彼女の言葉を聞いた直後、様々な嫌な妄想が膨らむ。
もう終わった。俺の恋愛は完全に終わりを告げられた。カレンのへの愛を貯められる気がしないし、もう、コワイに勝てる気がしなくなった。もう終わりだ。
「だって、少しでもアリサのことを好きになってくれたら、二人が仲良くなってくれるでしょう。私、二人とも好きだから仲良くなってほしいんだ」
「え? 今なんて?」
「だから二人には仲良くなってほしいって」
「その後!」
「え? 二人とも好きって言ったけど?」
カレンが小首を傾げる中、彼女の言葉を聞いた瞬間、絶望の淵から一気に天界へと登った気分になった。
良かった! 俺、カレンから嫌われていなかった!
喜びのあまりか、俺は両の目尻から涙が流れる。
「ど、どうして急に涙を流すのよ。私傷付けるようなこと言った?」
彼女の言葉に、俺は無言で首を振る。
「いや、俺の早とちりだ。てっきり、カレンが俺のことを嫌いになって、アリサとくっつけたいからあんな言葉を言ったのだと思い込んで。それでそうじゃないとわかったから、嬉しくって」
嬉し涙を流しながら、素直に思ったことを告げる。涙で視界が滲む中、カレンの頬が朱色に染まったような気がした。
「か、勝手に変な妄想しないでよ。急に泣き出したから、私の方が焦ってしまったじゃない。ほら、ハンカチ貸すからこれで涙を拭いて」
差し出されたハンカチを受け取り、軽く目に当てて涙を拭う。
ハンカチからは、カレンの優しさが伝わってきた。
「言っておくけど、本当に嫌いになったらその時は振るわよ。それまでは友達として好きでいてあげるから、心配しないでいいからね。だから変な妄想をして自分を追い込まないでよ。余程のことがない限りは嫌いにならないから」
嫌いになったら振る。そのことが分かっただけでも俺の心は晴れやかな気分になった。もう、些細なことで嫌われるんじゃないかと思わないでいいんだ。
「誤解を招く言い方をして傷つけてごめんね。よしよし」
ハンカチで涙を拭う中、カレンが俺の頭を撫でてくる。彼女の優しさが伝わり、俺はやっぱりカレンが好きだと再認識した。
「ちょっと! 何やっているのよ! 人がケガ人を治療している間に、カレンに何をさせているのよ、変態!」
町民の治療が終わったアリサが俺たちに気付き、駆け寄って来るとカレンを引き剥がす。
カレンの手が離れる中、名残惜しさを感じてしまうが、今はこの幸せを大事にしたい。
「ほら、早くあの女のところに行くわよ」
アリサがカレンの腕を引っ張り、コワイがいると思われる建物の方に歩いて行く。
彼女たちを先行させる訳にはいかない。
「待てよ、俺を置いていくな」
急いで二人に追い付き、目的の建物に向かっていると、こちらに向かって来る集団がいた。
「見つけたぞ。今度こそお前たちを倒し、サクの仇を討ってやる!」
ボンテージ姿であるコワイが俺たちに指を向けた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
面白かった! この物語は期待できる! 続きが早く読みたい!
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襲いくる奴隷兵たちに向けてスキルを発動した。
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「本当だ。無理矢理体を動かされている感覚がなくなっている」
「やった! 俺たちは自由だ!」
奴隷化が解除された人々が歓喜の声を上げ、喜び合った。中には互いに抱き合い、涙を流しているものもいる。
「ありがとう。あなたが助けてくれたのですね」
「本当に助かりました。あなたがいなければ、一生あの女にこき使われていたでしょう。本当にありがとうございます」
「あなたがいてくれて本当に良かった」
解放された元奴隷兵の人たちが、口々に感謝の言葉を述べる。
本当に良かった。ゲームどおりにならなかったのなら、今ごろ大変なことになっていたよ。スキルの設定どおり、奴隷化を解除できるのは【奴隷契約】のユニークスキル持ちのみで間違いなかったな。
「「ユウリ!」」
背後からカレンとアリサの声が聞こえ、振り返る。門の外から様子を見ていた彼女たちが、安全になったと判断してこちらに来てくれた。
「一応ここら一帯にいた奴隷は解放した。だけどまだ奥にもいるはずだ」
「本当に奴隷たちを解放するなんてすごい! デートした甲斐があったわね!」
「まさか、本当に奴隷を解放できるなんて……ま、まぁ、少しだけなら認めてあげてもいいわよ」
カレンは素直に喜んでくれたが、アリサはツンツンした言い方で俺のことを誉めてくれた。
みんなから称賛の声を浴びせられる中、コワイがいると思われる建物がある方角を見る。
今度こそカレンに猿轡を噛ませて、女王様プレイを楽しもうとした罰を受けさせてやる。
「やったー! いたたたた」
自由にになって喜んでいた町民の男が、苦痛で顔を歪め、腕を抑える。
今まで無理に体を動かさられたことで、体が悲鳴を上げ出したのかもしれない。
「はぁー、もう、しょうがないわね」
アリサが小さく息を吐くと、腕を抑えている男性のもとに近付く。
「【自然治癒】」
金髪ツインアップの女の子が、男に手をかざしてスキルを発動する。すると彼の腕が青白く光り、その光は一秒ほどで消えた。
「はい。治療終わりよ。もう痛くないはずだから」
「本当だ! 全然痛くない! ありがとう。まさかこんなに直ぐに痛みが引くとは」
「当たり前よ。だってアタシ、聖女だもの」
「聖女様! この度は本当にありがとうございます!」
ケガを治してもらった男は声を上げて感謝の言葉を述べると、アリサはいきなりドヤ顔をして俺たちを見た。
いやいや、ドヤ顔しているけど、聖女なのはお前自身じゃなくって、ユニークスキルの方だからな。
心の中でツッコミを入れる。だが、痛がっている人に率先して傷の手当てをする姿は、本当の聖女のようにも見えた。
「いたたたた! いったい!」
「俺も急に体の全身が痛み出した!」
アリサに傷を治してもらった男性を見て、次々と解放された奴隷たちが痛みを思い出したかのように口々に痛いと言い出す。
中には本当に痛がっているのか怪しいやつもいた。
「はいはい、わかったわよ。アタシに癒されたい人は並びなさい。全員の傷を治してやるから」
金髪ツインアップの女の子の言葉に、元奴隷たちは顔を綻ばせて一列に並び出す。
「アリサ、急にみんなの人気ものになったね」
「まぁ、傷付いたところに優しくされれば、誰だってああなるだろう」
男って単純だからな。まぁ、それを言ってしまってはブーメランなんだけど。
「ねぇ、ユウリも傷付いた時に、アリサに優しくされたら彼女のことを好きになるの?」
「え?」
唐突な言葉に俺は驚いてしまう。
もしかして、カレンは俺のことを心配しているのか? 俺がアリサのことを好きになると心配している?
それって、もしかしてカレンはそうなって欲しくないと思っている。つまり妬いているのか!
カレンが赤い瞳で見詰めてくる。気のせいかもしれないが、彼女の目が潤んでいるような気がした。
「な、何言っているんだ。俺が好きなのはカレンだけだ。アリサなんか好きになる訳がないだろう」
心臓の鼓動が激しく高鳴る中、俺は言葉を噛みそうになりながらもカレンが一番だと伝え、安心させようとした。
「何だ。好きになってくれないんだ」
「え?」
今度は別の意味で驚かされた。
どうしてカレンがそんなことを言うんだよ。何? アリサのことを好きになってほしいの? それってもう、俺は恋人候補から除外されたってことなのか!
彼女の言葉を聞いた直後、様々な嫌な妄想が膨らむ。
もう終わった。俺の恋愛は完全に終わりを告げられた。カレンのへの愛を貯められる気がしないし、もう、コワイに勝てる気がしなくなった。もう終わりだ。
「だって、少しでもアリサのことを好きになってくれたら、二人が仲良くなってくれるでしょう。私、二人とも好きだから仲良くなってほしいんだ」
「え? 今なんて?」
「だから二人には仲良くなってほしいって」
「その後!」
「え? 二人とも好きって言ったけど?」
カレンが小首を傾げる中、彼女の言葉を聞いた瞬間、絶望の淵から一気に天界へと登った気分になった。
良かった! 俺、カレンから嫌われていなかった!
喜びのあまりか、俺は両の目尻から涙が流れる。
「ど、どうして急に涙を流すのよ。私傷付けるようなこと言った?」
彼女の言葉に、俺は無言で首を振る。
「いや、俺の早とちりだ。てっきり、カレンが俺のことを嫌いになって、アリサとくっつけたいからあんな言葉を言ったのだと思い込んで。それでそうじゃないとわかったから、嬉しくって」
嬉し涙を流しながら、素直に思ったことを告げる。涙で視界が滲む中、カレンの頬が朱色に染まったような気がした。
「か、勝手に変な妄想しないでよ。急に泣き出したから、私の方が焦ってしまったじゃない。ほら、ハンカチ貸すからこれで涙を拭いて」
差し出されたハンカチを受け取り、軽く目に当てて涙を拭う。
ハンカチからは、カレンの優しさが伝わってきた。
「言っておくけど、本当に嫌いになったらその時は振るわよ。それまでは友達として好きでいてあげるから、心配しないでいいからね。だから変な妄想をして自分を追い込まないでよ。余程のことがない限りは嫌いにならないから」
嫌いになったら振る。そのことが分かっただけでも俺の心は晴れやかな気分になった。もう、些細なことで嫌われるんじゃないかと思わないでいいんだ。
「誤解を招く言い方をして傷つけてごめんね。よしよし」
ハンカチで涙を拭う中、カレンが俺の頭を撫でてくる。彼女の優しさが伝わり、俺はやっぱりカレンが好きだと再認識した。
「ちょっと! 何やっているのよ! 人がケガ人を治療している間に、カレンに何をさせているのよ、変態!」
町民の治療が終わったアリサが俺たちに気付き、駆け寄って来るとカレンを引き剥がす。
カレンの手が離れる中、名残惜しさを感じてしまうが、今はこの幸せを大事にしたい。
「ほら、早くあの女のところに行くわよ」
アリサがカレンの腕を引っ張り、コワイがいると思われる建物の方に歩いて行く。
彼女たちを先行させる訳にはいかない。
「待てよ、俺を置いていくな」
急いで二人に追い付き、目的の建物に向かっていると、こちらに向かって来る集団がいた。
「見つけたぞ。今度こそお前たちを倒し、サクの仇を討ってやる!」
ボンテージ姿であるコワイが俺たちに指を向けた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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