ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第十二章

第九話 どうしてベッキーがこんなところにいる!

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 キメーラの頭の上から顔を出した人物に、俺は驚く。

 顔に化粧を施している男は、ヴィクーリアお嬢様を攫った野盗の頭だった。

「お前はベッキー!」

「お、なんだ。二人は知り合いだったのか」

 思わず声を上げると、セシリオさんが意外そうな顔で俺たちを見た。

「そうなのよ、ボス。あたしたち、ちょっとした縁があってね。リュシアンちゃんとは知り合いなのよ」

 ベッキーがキメーラから降りると、手を頬に当てながら腰をくねらせていた。

 この男、相変わらずだな。

 うん? そう言えば、セシリオさんはベッキーからボスって言われていなかったか?

「セシリオさん。ベッキーがボスって言っているのは……もしかして」

「ああ、そう言えば今の俺が何をやっているのか教えていなかったな。俺、ハンターを辞めて野盗をしているんだ」

「ええー!」

 予想していなかったカミングアウトに、驚きの声を上げてしまう。

「セ、セシリオさん、ど、どうして野盗なんかに!」

 憧れの人物が野盗となって落ちぶれたと聞き、心臓の鼓動が早鐘を打つ。

 驚いてしまうが、彼が野盗だと知った途端にユリヤたちが警戒し、得物を構える。

「ま、待ってくれよ。確かに野盗っていう肩書きにはなっているが、俺たちが襲っているのは庶民から金を巻き上げている悪徳貴族だけだ。その報酬の一部は頂戴しているが、殆どの金品は町の貧しい人たちにばら撒いている」

 慌てながらセシリオさんが説明し、以前ベッキーから聞いたことを思い出す。

 あのときの彼の言葉は、簡単には信用できなかった。だが、セシリオさんなら彼なりの深い事情があってのことだと、己に言い聞かせることができる。

「分かりました。セシリオさんの言葉を信じましょう」

「リュシアン王子、良いのですか? どんな形とはいえ、野盗は野盗なのですよ」

 エリーザ姫が驚いた表情をみせる。

 彼女の気持ちも分かるが、あのセシリオさんが理由もなく悪党に落ちぶれるなんてことはしないはずだ。

「理解して貰えて助かる。リュシアンのような人間ばかりなら、この世界は平和でいられるのにな。よし、ベッキーと合流することができたことだし、早速天空龍スリシオがいる場所に向かおう。やつがいるのはあの山の頂上だ」

 セシリオさんが指を向け、そちらに顔を向ける。

 え? あの山を登るの?

 彼が示した場所は、山と言うよりも塔のような形になっていた。ほぼ垂直であり、ロッククライミングをしながら進まないと、頂上には辿り着けそうもない。

 俺やセシリオさんならなんとか頂上まで登ることができたとしても、直ぐには戦える状態ではないはず。それにユリヤたち女性陣は体力的にムリだろう。

「あの山を登って行くのですか? 流石に体力的に厳しいと思いますが?」

「誰がロッククライミングをすると言った。そのためにも、キメーラを操るベッキーを呼んでいたんだ。こいつの背中に乗って一気に山を駆け登ってもらう」

 セシリオさんが親指を突き立て、後を指差す。

「なるほど。よろしくなキメーラ」

『クーン、クーン』

 モンスターに声をかけると、ヤギの頭は犬が甘えるときに出す鳴き声のような声を出すが、蛇の尻尾を獅子の体の下に入れている。

 どうやら怯えられているようだな。

「キメーラが怯えるなんてな。何かあったのか?」

「こいつが操られているときに、俺がボコボコにしたことがあって、その時の記憶が残っているみたいなんですよね。だから俺のことを怖がっているみたいです」

「クッ、ククク、アーハハハハ!」

 どうしてキメーラが怯えているのか、その理由を語る。すると、セシリオさんは突然声を上げて笑い出した。

「急にどうしたのですか? セシリオさん」

「いやー、こいつを怯えさせるほどの力をつけているとは思っていなくってよ。こいつはベッキー以外にはなつかなくって、俺も稀に噛まれることがある。それなのに、モンスターを力で分からせることができるお前の成長が嬉しくってよ。つい笑ってしまった」

 笑い出した理由を語ると、セシリオさんは俺の頭に手を置く。

「お前が真のSランクハンターになっていることが分かって安心した。万が一のことが起きたとしても、これで恐れるものは何もない」

 彼の表情が柔らかくなると、セシリオさんはキメーラに近付く。

「あの岩山まで、よろしく頼むな」

 そう言って、セシリオさんがモンスターを触ろうとすると、ヤギが彼の手を噛む。

「いて!」

 痛そうに顔を歪めるセシリオさんを見て、俺はキメーラを睨み付ける。

『クーン、クーン』

 視線に気付いたモンスターは、セシリオさんの手を離す。そして犬にように鳴き、再び蛇の尻尾を獅子の体の下に入れる。

「キメちゃん。大丈夫よ。あなたが悪さをしない限りは、リュシアンちゃんはあなたを討伐しないから」

 怯えた表情を見せるキメーラに、ベッキーが優しく声をかける。するとモンスターはその場で足を曲げて地面に座り、俺たちを背中に乗せる準備を終える。

「それじゃあ、みんなキメちゃんに乗ってねぇ。体にしがみついていれば、振り落とされないから」

 モンスターの背中に乗るようにベッキーが促し、彼が先に乗る。続いてセシリオさんが乗り、その次に俺が乗った。

 しかし女性陣は誰一人として乗ろうとはしない。

 どうしたのだろうか? もしかしてキメーラの背中に乗ることに抵抗があるのだろうか?

 首を傾げていると、彼女たちは真剣な表情をして顔を見合わせる。

「言わなくとも分かっているわよね」

「はい。この勝負だけは絶対に譲れません」

「全ては天運に任せるのみですわ。恨みっこなしですからね」

「「「ジャンケンポン」」」

 三人はいきなりジャンケンを始めた。

 なんの順番決めなのか分からないが、とりあえず様子を見る。だが、一向に決着がつかなかった。

 三人とも仲良く、グー、チョキ、パーの順番であいこになり、中々決着がつかない。

 好い加減にしてほしいと思った頃、ようやく決着がついた。最初にエリーザ姫が勝ち抜き、その後にテレーゼが勝つ。そして最後がユリヤとなった。

「それではリュシアン王子、後ろ失礼しますわね」

 後ろに座ることになったエリーザ姫が、俺の体に手を回してくる。

「エリーザ姫、いくらなんでも密着しすぎでは?」

「慣れないモンスターに乗っての移動でしてよ。なら、一番安心できるリュシアン王子に引っ付いていた方が安心ですわ。万が一落ちたら、責任を取っていただけますの?」

 エリーザ姫が挑発的な言葉を、耳元で囁く。

 彼女の生暖かい吐息が耳の奥に届き、ゾクゾクしてしまう。

 確かに、エリーザ姫はハンターになったとは言え、隣国のお姫様だ。彼女に大怪我をさせてしまったら、バーンズ王に顔向けができない。

「わ、分かった。それなら仕方がないな」

「そうです。仕方がないのですわ!」

 嬉々とした声音でエリーザ姫が言うと、彼女のホールドが強くなった。彼女の胸が背中に当たり、鼓動が激しくなる。

 これがテレーゼだった場合、僅かにしか胸の感触がないから、平常心でいられたのかもしれない。

「それじゃあ、キメちゃん出発して!」

 そんなことを思っていると、ベッキーがキメーラに指示を出し、モンスターは目的地に向けて歩き出した。
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