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第七章
第二十話 ツインターボステークス⑥
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~アイリン視点~
『遂に地方の怪物が目覚めた! 物凄い末脚で芝を駆け、前方を走る走者を次々と牛蒡抜きして行くぞ!』
先頭を走るアイネスビジンさんを追いかける中、実況者の声が耳に入ってくる。
オグニさんって確か、第2のギミックでダウンしていたはず! それなのに、もう回復して追いかけて来ているって言うの!
彼女の回復力に驚きつつも、わたしは前方を走るアイネスビジンさんから視線を離さない。
後方から追いかけるオグニさんが気になるけれど、後を確認したらその分前が気になって速度を落としてしまう。ここは我慢してアイネスビジンさんを追い越すことだけを考えないと。
どうにかアイネスビジンさんから引き離されないで、食らい付くことに成功している。でも、ここから加速して追い抜きたくても、追い抜けない原因がある。
「もう! あの金ピカの勝負衣装のせいで、目がチカチカする!」
晴天の空にある太陽から降り注ぐ太陽光が、アイネスビジンさんの勝負服に反射してわたしに直撃している。そのせいで眩しく、まともに前を見てはいられない。
どうにか薄目で光の影響を最小限に留めているけれど、これでは視界が狭いから周囲の状況を把握しにくいわ。
『現在1番手はアイネスビジンのままだ! 2番手を走るアイリンは必死に食らい付くも、前に出ることが出来ない! 無駄に金ピカな勝負服による光の反射が原因か!』
「オーホホホ! ワタクシの盲目の太陽光は世界最強よ! ワタクシの先を越せるものなら越してみなさい! オーホホホ!」
高笑いをするアイネスビジンさんに正直イラッとします。まるで最初から狙っていたかのように言いますが、全て偶然ではありませんか。
でも、レースで勝つために必要な力のひとつとして、豪運が挙げられます。運を味方にする力は、彼女が強者である証拠にもなります。
まだ第3のギミックには到達していません。なので、きっとチャンスはあるはず。今は現状維持で2番手を死守することを大前提にしないと。
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
『迫る影の如く、オグニが着実に順位を上げて行く! 今、2番手のアイリンと並んだ!』
「なんて速さなのですか! もう、追い付くなんて!」
いつの間にか後に並んで走るオグニさんに驚きました。
まさか最後方からここまで追い上げて来るなんて。これが地方の怪物の力!
「くそう。あの無駄に金ピカな勝負服から反射される光のせいで眩しい」
さすがのオグニさんも、あの偶然により生み出された副産物の攻撃には、強行出来ないようです。
今のところは彼女が1番手に躍り出ることはなさそうですが、油断はできません。
「私は早くこのレースを終わらせたいんだ! もう、お腹が限界なんだ!」
鬼気迫る表情でオグニさんが叫びます。
あんなに必死になってレースを終わらせたいなんて……オグニさん、まさかお腹を下しているのでは!
うう、それはお辛いでしょう。わたしも1回経験があります。辛いですよね。どうしてこんなタイミングで! て思うでしょう。
彼女のためにも、早くアイネスビジンさんの光の反射をどうにかしないと。
何かないの? この状況を打破する方法は?
必死になって思考を巡らせていると、わたしは部屋で見た鏡に映る自分の顔を思い出します。
そうだ! あの手を使えば、もしかしたらアイネスビジンさんを怯ませて、前に出ることができるかもしれない!
でも、あの魔法は今まで使ったことがない。もちろん失敗することだって考えられる。
もし、失敗したら、わたしはこのまま前に出ることが出来ない……って、何を考えているのですか! わたしは!
マイナス思考をしている自分に気付き、その考えを振り払うかのように頭を左右に振ります。
失敗することなんて考えてはダメよ。レースはそんなに甘くない。成功させるつもりで挑まないと、わたしはこのレースに勝つことが出来ない。
右手を前に出し、体内の魔力を練り上げて魔力回路全体に行き渡らせる。そして魔法名を口走った。
「ミラー!」
「きゃああああああぁぁぁぁぁぁ!」
魔法を発動後、アイネスビジンさんの前に鏡が現れました。その鏡は太陽光を反射し、前方を走る彼女に直撃したようです。
アイネスビジンさんは悲鳴を上げ、速度を落とします。
やりました! 今の内に追い抜きましょう。
怯んだアイネスビジンさんとぶつからないように位置取り調整をした後、瞼を閉じて全力で駆け抜けました。
数秒後に閉じていた瞼を開けると、目の前にはアイネスビジンさんの姿はいません。
『2番手を走るアイリンが魔法で鏡を生み出し、その反射を利用してアイネスビジンを攻撃だ! 太陽光の直撃を受け、アイネスビジンは順位を落とす! 現在3番手だ』
どうやら上手く、アイネスビジンさんを追い抜くことができたみたいです。実況の言葉を聞く限り、2番手はオグニさんなのでしょう。
でも、油断はできません。オグニさんは便意とも闘っています。大衆の面前で漏らすかもしれない状況は、羞恥心などから力を発揮することもあるでしょう。
便意のある人に負けたなんてことになれば、笑い話にしかなりません。
負ける訳にはいきません。オグニさんには悪いですが、またわたしの魔法の矢で足止めをさせてもらいます。
『最終コーナーを曲がって最後のギミックにアイリンが差し掛かろうとしています』
魔法の矢を準備しようとしたタイミングで、実況者が最後のギミックに差し掛かろうとしていることを言いました。
もう、最後のギミックなのですね。長かったような短かったような、なんとも言えない気分です。
次第に最後のギミックエリアが見えてきたところで、わたしは大きく目を見開きます。
え? これってどういうことなの! わたし1位だったはずよね? それなのに、どうして前に走者がいるの!
視界には全身が黒い影のようなもので覆われていましたが、ツインテールの髪型にしている女の子の走者が前方を走っていました。
『遂に地方の怪物が目覚めた! 物凄い末脚で芝を駆け、前方を走る走者を次々と牛蒡抜きして行くぞ!』
先頭を走るアイネスビジンさんを追いかける中、実況者の声が耳に入ってくる。
オグニさんって確か、第2のギミックでダウンしていたはず! それなのに、もう回復して追いかけて来ているって言うの!
彼女の回復力に驚きつつも、わたしは前方を走るアイネスビジンさんから視線を離さない。
後方から追いかけるオグニさんが気になるけれど、後を確認したらその分前が気になって速度を落としてしまう。ここは我慢してアイネスビジンさんを追い越すことだけを考えないと。
どうにかアイネスビジンさんから引き離されないで、食らい付くことに成功している。でも、ここから加速して追い抜きたくても、追い抜けない原因がある。
「もう! あの金ピカの勝負衣装のせいで、目がチカチカする!」
晴天の空にある太陽から降り注ぐ太陽光が、アイネスビジンさんの勝負服に反射してわたしに直撃している。そのせいで眩しく、まともに前を見てはいられない。
どうにか薄目で光の影響を最小限に留めているけれど、これでは視界が狭いから周囲の状況を把握しにくいわ。
『現在1番手はアイネスビジンのままだ! 2番手を走るアイリンは必死に食らい付くも、前に出ることが出来ない! 無駄に金ピカな勝負服による光の反射が原因か!』
「オーホホホ! ワタクシの盲目の太陽光は世界最強よ! ワタクシの先を越せるものなら越してみなさい! オーホホホ!」
高笑いをするアイネスビジンさんに正直イラッとします。まるで最初から狙っていたかのように言いますが、全て偶然ではありませんか。
でも、レースで勝つために必要な力のひとつとして、豪運が挙げられます。運を味方にする力は、彼女が強者である証拠にもなります。
まだ第3のギミックには到達していません。なので、きっとチャンスはあるはず。今は現状維持で2番手を死守することを大前提にしないと。
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
『迫る影の如く、オグニが着実に順位を上げて行く! 今、2番手のアイリンと並んだ!』
「なんて速さなのですか! もう、追い付くなんて!」
いつの間にか後に並んで走るオグニさんに驚きました。
まさか最後方からここまで追い上げて来るなんて。これが地方の怪物の力!
「くそう。あの無駄に金ピカな勝負服から反射される光のせいで眩しい」
さすがのオグニさんも、あの偶然により生み出された副産物の攻撃には、強行出来ないようです。
今のところは彼女が1番手に躍り出ることはなさそうですが、油断はできません。
「私は早くこのレースを終わらせたいんだ! もう、お腹が限界なんだ!」
鬼気迫る表情でオグニさんが叫びます。
あんなに必死になってレースを終わらせたいなんて……オグニさん、まさかお腹を下しているのでは!
うう、それはお辛いでしょう。わたしも1回経験があります。辛いですよね。どうしてこんなタイミングで! て思うでしょう。
彼女のためにも、早くアイネスビジンさんの光の反射をどうにかしないと。
何かないの? この状況を打破する方法は?
必死になって思考を巡らせていると、わたしは部屋で見た鏡に映る自分の顔を思い出します。
そうだ! あの手を使えば、もしかしたらアイネスビジンさんを怯ませて、前に出ることができるかもしれない!
でも、あの魔法は今まで使ったことがない。もちろん失敗することだって考えられる。
もし、失敗したら、わたしはこのまま前に出ることが出来ない……って、何を考えているのですか! わたしは!
マイナス思考をしている自分に気付き、その考えを振り払うかのように頭を左右に振ります。
失敗することなんて考えてはダメよ。レースはそんなに甘くない。成功させるつもりで挑まないと、わたしはこのレースに勝つことが出来ない。
右手を前に出し、体内の魔力を練り上げて魔力回路全体に行き渡らせる。そして魔法名を口走った。
「ミラー!」
「きゃああああああぁぁぁぁぁぁ!」
魔法を発動後、アイネスビジンさんの前に鏡が現れました。その鏡は太陽光を反射し、前方を走る彼女に直撃したようです。
アイネスビジンさんは悲鳴を上げ、速度を落とします。
やりました! 今の内に追い抜きましょう。
怯んだアイネスビジンさんとぶつからないように位置取り調整をした後、瞼を閉じて全力で駆け抜けました。
数秒後に閉じていた瞼を開けると、目の前にはアイネスビジンさんの姿はいません。
『2番手を走るアイリンが魔法で鏡を生み出し、その反射を利用してアイネスビジンを攻撃だ! 太陽光の直撃を受け、アイネスビジンは順位を落とす! 現在3番手だ』
どうやら上手く、アイネスビジンさんを追い抜くことができたみたいです。実況の言葉を聞く限り、2番手はオグニさんなのでしょう。
でも、油断はできません。オグニさんは便意とも闘っています。大衆の面前で漏らすかもしれない状況は、羞恥心などから力を発揮することもあるでしょう。
便意のある人に負けたなんてことになれば、笑い話にしかなりません。
負ける訳にはいきません。オグニさんには悪いですが、またわたしの魔法の矢で足止めをさせてもらいます。
『最終コーナーを曲がって最後のギミックにアイリンが差し掛かろうとしています』
魔法の矢を準備しようとしたタイミングで、実況者が最後のギミックに差し掛かろうとしていることを言いました。
もう、最後のギミックなのですね。長かったような短かったような、なんとも言えない気分です。
次第に最後のギミックエリアが見えてきたところで、わたしは大きく目を見開きます。
え? これってどういうことなの! わたし1位だったはずよね? それなのに、どうして前に走者がいるの!
視界には全身が黒い影のようなもので覆われていましたが、ツインテールの髪型にしている女の子の走者が前方を走っていました。
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