172 / 269
第十章
第五話 新学期
しおりを挟む
俺たちは、一度学園に帰った。新学期が始まり、クラスメートたちは夏合宿の間どんなことがあったのか、話し合っていた。
「よぉ、シャカール。夏合宿の間どんなイベントがあった? 俺、夏の間ずっと学園に残って補習授業をさせられていたから、合宿に参加できなかったんだよ」
頭は豚、体をゴリラという容姿をしている魔族のピックが話しかけてくる。
こいつ、結局補習を合格できないまま夏を終えてしまったのか。可愛そうなやつだ。
「なぁ、なぁ、いったいどんなエロいイベントがあったんだよ。俺にこっそりと話してくれないか? あのメンバーで合宿に行ったんだ。何か過ちのひとつやふたつはあっただろう?」
ニヤニヤと下品な笑みを浮かべながら話しかけてくるが、正直に言ってキショい。
こいつ、まだ発情期が続いているのか? 最近バカキャラから変態キャラになりつつあるような気がするのだが。
「何を言っているんだよ。俺たちは走者だぞ。己を鍛えるための訓練が目的とされている夏合宿で、そんなことが起きる訳が……ない……だろう?」
彼の言葉を否定しようとした瞬間、脳裏に夏合宿の出来事がフラッシュバックされる。
サザンクロスの裸を見てしまい、一緒のベッドで寝ると言う名目で、彼女の脅迫と言う手段で抱きつかれてしまった。
そしてコールドシーフには捕らえた際に亀甲縛りをしてしまい、レース中にも彼女の際どい水着姿のチェキを見せられ、受け取ったら胸を揉ませてやると言われた。
シェアハウスのメンバーからは何も起きなかったが、別の学園の生徒とは、エロいイベントが起きてしまった。
「おい、なんだよその間は! 絶対に何かあっただろう! 頼むから話してくれよ」
「いや、何もなかった。あの間は念の為に思い返したから、一時的に言葉が出てこなかっただけだ」
嘘を付いて、ピックを宥める。
本当のことを言ってしまえば、これ以上に付き纏わられる。そんな気がしてならなかった。
「嘘だ! その間は絶対に何かあった! 俺の勘がそう訴えている」
胸の前で腕を組み、ピックは睨んできた。
全く、どうしてそんなしょうもないことに関しては鋭いんだよ。その直感を少しでも勉強に当ててくれれば、成績も良くなるだろうに。
「分かった。お前がテストで50点取れたら話してやろう」
「そんなの無理に決まっている! ひとつでも赤点を回避できたのがあればにしてくれ!」
「いや、そこは頑張ろうとしてくれよ。100点満点のテストなんだから」
「お前、絶伝に俺が無理だと分かって言っているな。ちくしょう! 覚えておれよ!」
雑魚キャラの捨て台詞を吐くと、ピックは自分の席へと戻って行った。
全く、新学期早々から下ネタを言わないでほしい。いや、年齢からしたら、年相応の発言になってしまうのか?
ホームルーム開始の鐘の音が鳴ると同時に、担任の教師が教室に入って来る。
「それでは、今からホームルームを開始します」
担任の教師が次々と連絡事項を話す。その内容は特に特別なものはなかった。
「あ、そうそう。シャカール君、ルーナ学園長が放課後の学園長室に来るようにとのことです。必ず忘れずに行ってくださいね。忘れた時には、あなたの嫌がることをするとのことです」
担任の教師が俺宛に言伝を述べた。
サラッと脅迫までしやがって。ルーナのやつ、俺に何の用だ?
そんなことを思いつつも、新学期の1日はあっという間に終わり、放課後となる。
俺は学園長室の前に来ると、扉を叩く。
「ルーナ、呼ばれたから来てやったぞ」
「入りたまえ」
部屋の中から入室を許可する声が聞こえ、俺は扉を開けて中に入る。
学園長の席には、白銀の長い髪を編み込みしている女性が座っており、俺に視線を向けている。
「ルーナ、俺に何の用だ?」
「ああ、昨日学園に戻ってから、早速例の件に付いて調べたんだ。そしたら君が以前いた研究所とコンタクトを取ることに成功してね。アポ取ったから、一緒に行こうとデートの誘いをするために誘ったんだ」
言葉には冗談も混じっているが、まさかたった数時間でそこまでするとは驚きだった。
できる女とは、ここまで凄いものなのだと改めて思い知らされる。
「分かった。それで、いつなんだ?」
「今週末さ。午後の3時にワタシたちの方から研究所に出向くことになる」
「了解した」
まさか、こんなに早くあの所長と再会することになるとは思わなかった。上手く交渉をして、ナナミを救出できるようにしないと。
拳を軽く握り、俺は決意する。
それから週末までは長いようで短かった。
俺とルーナは、学園を出ると所長の居る研究所へと向かう。
「なぁ、ルーナの持っているそれはなんだ?」
「菓子折りだ。手土産のひとつくらいは必要だろう?」
「あんなクソ野郎たちに食わせる菓子はない」
「その言葉には同感だが、何も持たないでいると、礼儀を弁えられない愚か者扱いをされてしまう。交渉には、前準備が必要だ。手土産がないことを理由に、ナナミを引き渡す訳にはいかないと言われたら、どうする?」
ルーナの言葉に、思わず黙ってしまう。
確かに、ある意味研究所側が有利な状況だ。少しはゴマを擦ることは必要か。
そんなことを思っていると、懐かしく、できることなら二度と戻ってきたくなかった建物が見えてきた。
さて、うまくナナミを引き取ることができるかどうか、それは俺たちの話術次第だな。
建物の前にたどり着くと、ルーナがベルを鳴らした。
「よぉ、シャカール。夏合宿の間どんなイベントがあった? 俺、夏の間ずっと学園に残って補習授業をさせられていたから、合宿に参加できなかったんだよ」
頭は豚、体をゴリラという容姿をしている魔族のピックが話しかけてくる。
こいつ、結局補習を合格できないまま夏を終えてしまったのか。可愛そうなやつだ。
「なぁ、なぁ、いったいどんなエロいイベントがあったんだよ。俺にこっそりと話してくれないか? あのメンバーで合宿に行ったんだ。何か過ちのひとつやふたつはあっただろう?」
ニヤニヤと下品な笑みを浮かべながら話しかけてくるが、正直に言ってキショい。
こいつ、まだ発情期が続いているのか? 最近バカキャラから変態キャラになりつつあるような気がするのだが。
「何を言っているんだよ。俺たちは走者だぞ。己を鍛えるための訓練が目的とされている夏合宿で、そんなことが起きる訳が……ない……だろう?」
彼の言葉を否定しようとした瞬間、脳裏に夏合宿の出来事がフラッシュバックされる。
サザンクロスの裸を見てしまい、一緒のベッドで寝ると言う名目で、彼女の脅迫と言う手段で抱きつかれてしまった。
そしてコールドシーフには捕らえた際に亀甲縛りをしてしまい、レース中にも彼女の際どい水着姿のチェキを見せられ、受け取ったら胸を揉ませてやると言われた。
シェアハウスのメンバーからは何も起きなかったが、別の学園の生徒とは、エロいイベントが起きてしまった。
「おい、なんだよその間は! 絶対に何かあっただろう! 頼むから話してくれよ」
「いや、何もなかった。あの間は念の為に思い返したから、一時的に言葉が出てこなかっただけだ」
嘘を付いて、ピックを宥める。
本当のことを言ってしまえば、これ以上に付き纏わられる。そんな気がしてならなかった。
「嘘だ! その間は絶対に何かあった! 俺の勘がそう訴えている」
胸の前で腕を組み、ピックは睨んできた。
全く、どうしてそんなしょうもないことに関しては鋭いんだよ。その直感を少しでも勉強に当ててくれれば、成績も良くなるだろうに。
「分かった。お前がテストで50点取れたら話してやろう」
「そんなの無理に決まっている! ひとつでも赤点を回避できたのがあればにしてくれ!」
「いや、そこは頑張ろうとしてくれよ。100点満点のテストなんだから」
「お前、絶伝に俺が無理だと分かって言っているな。ちくしょう! 覚えておれよ!」
雑魚キャラの捨て台詞を吐くと、ピックは自分の席へと戻って行った。
全く、新学期早々から下ネタを言わないでほしい。いや、年齢からしたら、年相応の発言になってしまうのか?
ホームルーム開始の鐘の音が鳴ると同時に、担任の教師が教室に入って来る。
「それでは、今からホームルームを開始します」
担任の教師が次々と連絡事項を話す。その内容は特に特別なものはなかった。
「あ、そうそう。シャカール君、ルーナ学園長が放課後の学園長室に来るようにとのことです。必ず忘れずに行ってくださいね。忘れた時には、あなたの嫌がることをするとのことです」
担任の教師が俺宛に言伝を述べた。
サラッと脅迫までしやがって。ルーナのやつ、俺に何の用だ?
そんなことを思いつつも、新学期の1日はあっという間に終わり、放課後となる。
俺は学園長室の前に来ると、扉を叩く。
「ルーナ、呼ばれたから来てやったぞ」
「入りたまえ」
部屋の中から入室を許可する声が聞こえ、俺は扉を開けて中に入る。
学園長の席には、白銀の長い髪を編み込みしている女性が座っており、俺に視線を向けている。
「ルーナ、俺に何の用だ?」
「ああ、昨日学園に戻ってから、早速例の件に付いて調べたんだ。そしたら君が以前いた研究所とコンタクトを取ることに成功してね。アポ取ったから、一緒に行こうとデートの誘いをするために誘ったんだ」
言葉には冗談も混じっているが、まさかたった数時間でそこまでするとは驚きだった。
できる女とは、ここまで凄いものなのだと改めて思い知らされる。
「分かった。それで、いつなんだ?」
「今週末さ。午後の3時にワタシたちの方から研究所に出向くことになる」
「了解した」
まさか、こんなに早くあの所長と再会することになるとは思わなかった。上手く交渉をして、ナナミを救出できるようにしないと。
拳を軽く握り、俺は決意する。
それから週末までは長いようで短かった。
俺とルーナは、学園を出ると所長の居る研究所へと向かう。
「なぁ、ルーナの持っているそれはなんだ?」
「菓子折りだ。手土産のひとつくらいは必要だろう?」
「あんなクソ野郎たちに食わせる菓子はない」
「その言葉には同感だが、何も持たないでいると、礼儀を弁えられない愚か者扱いをされてしまう。交渉には、前準備が必要だ。手土産がないことを理由に、ナナミを引き渡す訳にはいかないと言われたら、どうする?」
ルーナの言葉に、思わず黙ってしまう。
確かに、ある意味研究所側が有利な状況だ。少しはゴマを擦ることは必要か。
そんなことを思っていると、懐かしく、できることなら二度と戻ってきたくなかった建物が見えてきた。
さて、うまくナナミを引き取ることができるかどうか、それは俺たちの話術次第だな。
建物の前にたどり着くと、ルーナがベルを鳴らした。
0
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる