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第十二章
第八話 もう一人のシャカール
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突然何者かの攻撃を受けた俺は、自身の目を疑った。攻撃をしてきた人物は、俺にそっくりの姿をしている。
『とは言え、俺のことだけはあるな。攻撃を当てるつもりで放ったのに』
俺にそっくりな人物がゆっくりとこちらに向かって歩く。
彼の視線は、攻撃を避けるために咄嗟に抱き抱えたルーナに向けられていた。
『姉さんも久しぶりだね。俺が死んでから10年は経ったかな?』
「お前……本当にシャカールなのか?」
『正真正銘の本物さ。そこにいる偽者ではなく、本物のシャカールだよ』
2人の会話のやり取りが耳に入ってくる中、俺は現状が理解できていなかった。
目の前に居る俺にそっくりな男は、おそらくルーナの弟なのだろう。だけど、彼はルーナがまだ子どもだった頃に、盗賊に殺されて亡くなっているはず。それなのに、どうして目の前に居る?
背丈も俺とあまり変わらない。亡くなった人物が成長して目の前に現れた感じだ。
『おい! 薄汚い手で姉さんを抱き抱えないでもらえるか。さっさと姉さんを離せ!』
ルーナを下すように要求され、一度彼女に視線を向ける。
この事態を頭の中で整理できていないのか、彼女は硬直した状態のままだ。このままルーナを下ろしたところで、直ぐに行動に移すことができないだろうな。
『姉さんを解放しろと言っているんだ! 離さないと言うのであれば、力尽くで離れてもらう! ウインドカッター!』
ルーナの弟がこちらに向かって風の刃を放ってきた。角度からして、俺の首を狙っているのだろう。
こいつ、後先のことを考えていないな。万が一、攻撃を受けて俺の首が飛ぶようなことになれば、血の雨がルーナに降り注ぐことになると言うのに。
体勢を低くして風の刃を躱す。その時、風向きが変わった。
風向きが変わった! なんだか嫌な予感がする。
気になって背後を見る。すると、攻撃を躱した風の刃が、ブーメランのように戻ってもう一度襲いかかってきていた。
チッ、気圧に変化が生じて風向きが変わったことで、風の刃の向きが変わったのか。
気圧にも強弱があり、強い気圧は弱い気圧を押し出す。それにより発生するのが風だ。
気圧が変化したことで風向きが変わり、ブーメランのように戻ってきたのだろう。
もう一度風の刃を避ける。だが、回避した直後にまた風向きが変わり、俺に三度襲ってくる。
一度なら偶然とも考えられた。だが、二度も短時間で風向きが変わることなど考えられない。おそらく、あの男が魔法で風向きに変化をつけて、風の刃が追尾できるようにしているのだろう。
絶対に逃さないと言う強い意志を感じる。この攻撃を止めるには、風の刃を操っているあいつを倒さなければならない。
そのためには、一度体勢を立て直して、あの男に魔法を当てる必要があるだろう。
「シャカール、ワタシを使え。あの男が本当にワタシの弟なら、ワタシの身を心配するはずだ。お前は完全に悪者扱いされている」
「どう言う……いや、そう言うことか」
一瞬ルーナが何を言っているのかが分からなかった。だが、数秒間を置くと、彼女が何を言いたいのかが理解することができた。
あの男は、完全に俺のことを悪者扱いしているのだ。なら、とことん悪役を演じるしかない。
「そんなに俺を攻撃して良いのか? 手元が狂えば、お前の姉は血塗れとなるぞ」
『脅しのつもりか? 悪いが、その手には乗らない。俺のコントロールを持ってすれば、そんなことにはならない自信がある』
チッ、ルーナを人質にして攻撃の手を緩めた隙に反撃に出る作戦が台無しか。こうなっては仕方がない。ルーナがどれだけ俺のことを信じてくれるかが鍵となるが。一か八かの策に出るしかないな。
「それは俺が逃げ続けた場合だろう。俺は一度もルーナを盾にはしないとは言ってはいない。その気になれば、この女を犠牲にして、俺だけが生き残ってお前を倒すことだってできる。このようにな」
飛んでくる風の刃をぎりぎりまで引き寄せ、間合いに入ったところで抱き抱えるルーナを前に出した。
『そんな! 嘘だろう! 脅しではなかったのかよ! くそう! 姉さんを殺させる訳にはいかない!』
風の刃がルーナに接触する寸前で、風の刃が消える。
あのタイミングでは、風向きを変えて風の刃の向きを変えることはできない。なら、残された方法は魔法自体を消すしかない。
危ない賭けだったが、あいつが姉思いの良いやつで助かった。
「リストレイント!」
風の刃が消滅した瞬間に拘束魔法を発動させる。
ランダムで拘束方法が変わるこの魔法だが、今回はなぜか塩のような結晶が飛び出し、ルーナの弟に目がけて飛んで行く。
どうしてこんなタイミングで大外れを引くことになる! しかも塩のような結晶と、拘束に何の因果関係がるって言うんだ!
大事なタイミングで魔法が失敗したが、やつは大きく後方に跳躍して出現した塩のような結晶を回避した。
『チッ、まさかこんな魔法を持っているとはな。くそう、これも俺の魔術回路を持っているせいか』
俺の攻撃を避け、やつは焦りの表情を見せる。そして一度俺のことを睨んできた。
『良いか! 今日のところは戦略的撤退をしてやる。だが、必ず俺の魔術回路と姉さんは返してもらうからな! 姉さんにいやらしいことでもしてみろ! テメーの首を刎ねてションベン塗れの瓶の中に押し込んでやるからな!』
何とも締まりのない捨て台詞を吐くと、男は俺に背を向けて走り、この場から離れていく。
ブッヒーの魔王復活計画の件が片付いていないのに、新たな問題が発生してしまったな。
それに、あの男が言った言葉『俺の魔術回路を返してもらう』あれってどう言う意味だったんだ? 俺の魔術回路は俺のものだろう?
『とは言え、俺のことだけはあるな。攻撃を当てるつもりで放ったのに』
俺にそっくりな人物がゆっくりとこちらに向かって歩く。
彼の視線は、攻撃を避けるために咄嗟に抱き抱えたルーナに向けられていた。
『姉さんも久しぶりだね。俺が死んでから10年は経ったかな?』
「お前……本当にシャカールなのか?」
『正真正銘の本物さ。そこにいる偽者ではなく、本物のシャカールだよ』
2人の会話のやり取りが耳に入ってくる中、俺は現状が理解できていなかった。
目の前に居る俺にそっくりな男は、おそらくルーナの弟なのだろう。だけど、彼はルーナがまだ子どもだった頃に、盗賊に殺されて亡くなっているはず。それなのに、どうして目の前に居る?
背丈も俺とあまり変わらない。亡くなった人物が成長して目の前に現れた感じだ。
『おい! 薄汚い手で姉さんを抱き抱えないでもらえるか。さっさと姉さんを離せ!』
ルーナを下すように要求され、一度彼女に視線を向ける。
この事態を頭の中で整理できていないのか、彼女は硬直した状態のままだ。このままルーナを下ろしたところで、直ぐに行動に移すことができないだろうな。
『姉さんを解放しろと言っているんだ! 離さないと言うのであれば、力尽くで離れてもらう! ウインドカッター!』
ルーナの弟がこちらに向かって風の刃を放ってきた。角度からして、俺の首を狙っているのだろう。
こいつ、後先のことを考えていないな。万が一、攻撃を受けて俺の首が飛ぶようなことになれば、血の雨がルーナに降り注ぐことになると言うのに。
体勢を低くして風の刃を躱す。その時、風向きが変わった。
風向きが変わった! なんだか嫌な予感がする。
気になって背後を見る。すると、攻撃を躱した風の刃が、ブーメランのように戻ってもう一度襲いかかってきていた。
チッ、気圧に変化が生じて風向きが変わったことで、風の刃の向きが変わったのか。
気圧にも強弱があり、強い気圧は弱い気圧を押し出す。それにより発生するのが風だ。
気圧が変化したことで風向きが変わり、ブーメランのように戻ってきたのだろう。
もう一度風の刃を避ける。だが、回避した直後にまた風向きが変わり、俺に三度襲ってくる。
一度なら偶然とも考えられた。だが、二度も短時間で風向きが変わることなど考えられない。おそらく、あの男が魔法で風向きに変化をつけて、風の刃が追尾できるようにしているのだろう。
絶対に逃さないと言う強い意志を感じる。この攻撃を止めるには、風の刃を操っているあいつを倒さなければならない。
そのためには、一度体勢を立て直して、あの男に魔法を当てる必要があるだろう。
「シャカール、ワタシを使え。あの男が本当にワタシの弟なら、ワタシの身を心配するはずだ。お前は完全に悪者扱いされている」
「どう言う……いや、そう言うことか」
一瞬ルーナが何を言っているのかが分からなかった。だが、数秒間を置くと、彼女が何を言いたいのかが理解することができた。
あの男は、完全に俺のことを悪者扱いしているのだ。なら、とことん悪役を演じるしかない。
「そんなに俺を攻撃して良いのか? 手元が狂えば、お前の姉は血塗れとなるぞ」
『脅しのつもりか? 悪いが、その手には乗らない。俺のコントロールを持ってすれば、そんなことにはならない自信がある』
チッ、ルーナを人質にして攻撃の手を緩めた隙に反撃に出る作戦が台無しか。こうなっては仕方がない。ルーナがどれだけ俺のことを信じてくれるかが鍵となるが。一か八かの策に出るしかないな。
「それは俺が逃げ続けた場合だろう。俺は一度もルーナを盾にはしないとは言ってはいない。その気になれば、この女を犠牲にして、俺だけが生き残ってお前を倒すことだってできる。このようにな」
飛んでくる風の刃をぎりぎりまで引き寄せ、間合いに入ったところで抱き抱えるルーナを前に出した。
『そんな! 嘘だろう! 脅しではなかったのかよ! くそう! 姉さんを殺させる訳にはいかない!』
風の刃がルーナに接触する寸前で、風の刃が消える。
あのタイミングでは、風向きを変えて風の刃の向きを変えることはできない。なら、残された方法は魔法自体を消すしかない。
危ない賭けだったが、あいつが姉思いの良いやつで助かった。
「リストレイント!」
風の刃が消滅した瞬間に拘束魔法を発動させる。
ランダムで拘束方法が変わるこの魔法だが、今回はなぜか塩のような結晶が飛び出し、ルーナの弟に目がけて飛んで行く。
どうしてこんなタイミングで大外れを引くことになる! しかも塩のような結晶と、拘束に何の因果関係がるって言うんだ!
大事なタイミングで魔法が失敗したが、やつは大きく後方に跳躍して出現した塩のような結晶を回避した。
『チッ、まさかこんな魔法を持っているとはな。くそう、これも俺の魔術回路を持っているせいか』
俺の攻撃を避け、やつは焦りの表情を見せる。そして一度俺のことを睨んできた。
『良いか! 今日のところは戦略的撤退をしてやる。だが、必ず俺の魔術回路と姉さんは返してもらうからな! 姉さんにいやらしいことでもしてみろ! テメーの首を刎ねてションベン塗れの瓶の中に押し込んでやるからな!』
何とも締まりのない捨て台詞を吐くと、男は俺に背を向けて走り、この場から離れていく。
ブッヒーの魔王復活計画の件が片付いていないのに、新たな問題が発生してしまったな。
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