229 / 269
第十三章
第一話 名犬ルオの朝は早い
しおりを挟む
~ルオ視点~
俺の名はシャカール……おっと、この名前は昔の名だったな。訂正しよう。俺の名前はルオ、ルーナの弟を略してルオだ。
俺と同じ容姿で、姉さんから俺と同じ名を授けてもらったシャカールの提案に乗り、俺は子犬の姿となって姉さんの側に居ることにした。
だが、姉さんは俺を飼ってくれないと言い出したんだ。
何でだよ! 姉さんに気に入ってもらおうと、あんなに一生懸命にアピールをしたと言うのに!
しかし、姉さんはシャカールに飼うように命じ、俺はこうして子犬の姿でシェアハウスの自宅警備員となって暮らしている。
自宅警備員の朝は早い。みんなが起きる時間よりも早く起床し、シェアハウスの見回りをしなければならない。
『よし、リビングも異常なし。次は脱衣所だな』
リビングに不審物がないことを確認し、俺は次に脱衣所に向かう。
うん? 何だ? あれは?
脱衣所に辿り着くと、白い布が落ちていることに気付いた。近付いてみると、誰かの白いパンツが落ちている。
こんなところに脱ぎ捨てているなんて。ちゃんと籠に入れないといけないじゃないか。
誰がこんなことをしたのか、犯人を特定するために、パンツに近付く。そして持ち主を特定するために匂いを嗅いだ。
クンクン。この匂いはアイリンのだな。全く、ちゃんと脱いだものは籠に入れる。でないと紛失する可能性だってあり得る。
パンツを加え、首を振って勢い良く放り投げる。すると、舞い上がったパンツは放物線を描くように移動し、籠の中へと落下した。
『これでよし』
一仕事を終えて気分良くこの場を去ろうと思った俺だった。だが、あることに気付いてしまう。
地面に落ちている女の子のパンツの匂いを嗅ぎ、口に咥える。完全に変態じゃないか!
いやいやいや、人の姿じゃないのだからセーフだろう? 匂いを嗅いだのだって、犬の嗅覚の鋭さを利用しただけだし、前足で掴んで後ろ足で立つなんて器用なこと、俺にはできない。
変態的な行動に正当性を述べる。しかし、肉体は子犬の姿でも、精神は男なんだ。
己が変態的な行動を取ったことにショックを感じつにはいられない。
『そうだ。俺がこんな気持ちになってしまったのも、アイリンのせいだ。後で、このことをシャカールに報告し、アイリンにはちゃんと脱いだ物を籠の中に入れるように言ってもらおう。
『そろそろ、みんなが起きる時間じゃないのか?』
ある程度シェアハウスの中の警備を終えると、目を覚ましたみんなが起きてリビングに集まってきた。
「あ、ルオおはよう。もう起きているなんて早いわね」
『ワン!』
タマモおはよう! 今日は寝起きが良さそうで良かったよ。あの時はすまなかったな。
「おはようございます。ルオさん今日も天気が良いですね」
『ワン!』
クリープおはよう! 今日も大人の雰囲気を醸し出しているじゃないか
「ルオちゃんおはよう! 今日もマーヤはシャカールちゃんを籠絡させるために頑張るね」
『ワン!』
マーヤおはよう! あいつは簡単には落ちないだろうが、頑張れよ!
「ルオおはよう。朝から尻尾を振って元気だね」
『ワン!』
ナナミおはよう! 早起きは三文の得と言うからな! 朝から元気バリバリだぜ!
「ふあー、ルオおはよう。あなたは朝から元気ですね。わたしは夜更かししていたので、まだ眠いです」
『ワン! ワン! ワン! ワワワン!』
アイリンてめぇ! 脱いだ服はちゃんと籠に入れろ! お前のせいで、俺は変態行動に出ないといけない状態になったんだぞ! 今すぐ謝れ!
「ルオは朝から元気で羨ましいです。犬は良いですね。家で1日ぐうたらと過ごすと良いのですから」
全然俺の言っていることが通じない。まぁ、当然と言えば当然だが。
アイリンに怒っていると、最後に黒髪の少年がやってきた。
「ルオ、おはよう」
『…………』
「おい、無視かよ! さっきまでみんなに挨拶していただろうが!」
「「「「「あははははははは」」」」」
俺が無視してシャカールがツッコミを入れた瞬間、女性陣たちが一斉に笑い出す。その後彼は俺を抱き抱えると顔を近付け、小声で囁く。
「おい、誰のお陰でこのシェアハウスで生活できていると思っているんだ。あんまり舐めた態度を取ると、今度こそ倒して強制的に成仏させてやるぞ」
『舐めた態度だと? それはこっちのセリフだ。お前の話では、俺は姉さんに飼われるはずだったじゃないか。それなのに、どうしてこうなってしまうんだよ。まずは約束を破ってごめんなさいって言え。じゃないと、お前のパンツを全て処分するからな』
「地味に嫌な仕返しだな。分かった。今度どうしてルーナがお前を飼ってくれないのかを聞いといてやる。今度はうまく説得してみせるから、今だけ我慢してくれ」
『チッ、絶対だからな。もし、次に約束を破ったら、パンツとズボンを全て処分して、フルチンで登校してもらう』
話がまとまると、俺は下ろしてもらい、自由となる。
しばらくすると、俺専用の皿の上にドックフードが入れられた。空腹状態だった俺は、喜んで朝食を食べる。
最初の頃は抵抗があった。何せ、肉体は犬でも、中身は神族なのだから。しかし食べてみると意外と美味い。
あのカリカリとした食感の中に、肉や野菜の旨味が凝縮されており、こんなに美味いものなのかと思ってしまうほどだった。
しばらくすると、みんなが校舎へと向かう時間となる。そんな彼らの背を見送りながら、俺は今日も一日、このシェアハウスの平和を守るために、自宅警備員の仕事を頑張るのであった。
俺の名はシャカール……おっと、この名前は昔の名だったな。訂正しよう。俺の名前はルオ、ルーナの弟を略してルオだ。
俺と同じ容姿で、姉さんから俺と同じ名を授けてもらったシャカールの提案に乗り、俺は子犬の姿となって姉さんの側に居ることにした。
だが、姉さんは俺を飼ってくれないと言い出したんだ。
何でだよ! 姉さんに気に入ってもらおうと、あんなに一生懸命にアピールをしたと言うのに!
しかし、姉さんはシャカールに飼うように命じ、俺はこうして子犬の姿でシェアハウスの自宅警備員となって暮らしている。
自宅警備員の朝は早い。みんなが起きる時間よりも早く起床し、シェアハウスの見回りをしなければならない。
『よし、リビングも異常なし。次は脱衣所だな』
リビングに不審物がないことを確認し、俺は次に脱衣所に向かう。
うん? 何だ? あれは?
脱衣所に辿り着くと、白い布が落ちていることに気付いた。近付いてみると、誰かの白いパンツが落ちている。
こんなところに脱ぎ捨てているなんて。ちゃんと籠に入れないといけないじゃないか。
誰がこんなことをしたのか、犯人を特定するために、パンツに近付く。そして持ち主を特定するために匂いを嗅いだ。
クンクン。この匂いはアイリンのだな。全く、ちゃんと脱いだものは籠に入れる。でないと紛失する可能性だってあり得る。
パンツを加え、首を振って勢い良く放り投げる。すると、舞い上がったパンツは放物線を描くように移動し、籠の中へと落下した。
『これでよし』
一仕事を終えて気分良くこの場を去ろうと思った俺だった。だが、あることに気付いてしまう。
地面に落ちている女の子のパンツの匂いを嗅ぎ、口に咥える。完全に変態じゃないか!
いやいやいや、人の姿じゃないのだからセーフだろう? 匂いを嗅いだのだって、犬の嗅覚の鋭さを利用しただけだし、前足で掴んで後ろ足で立つなんて器用なこと、俺にはできない。
変態的な行動に正当性を述べる。しかし、肉体は子犬の姿でも、精神は男なんだ。
己が変態的な行動を取ったことにショックを感じつにはいられない。
『そうだ。俺がこんな気持ちになってしまったのも、アイリンのせいだ。後で、このことをシャカールに報告し、アイリンにはちゃんと脱いだ物を籠の中に入れるように言ってもらおう。
『そろそろ、みんなが起きる時間じゃないのか?』
ある程度シェアハウスの中の警備を終えると、目を覚ましたみんなが起きてリビングに集まってきた。
「あ、ルオおはよう。もう起きているなんて早いわね」
『ワン!』
タマモおはよう! 今日は寝起きが良さそうで良かったよ。あの時はすまなかったな。
「おはようございます。ルオさん今日も天気が良いですね」
『ワン!』
クリープおはよう! 今日も大人の雰囲気を醸し出しているじゃないか
「ルオちゃんおはよう! 今日もマーヤはシャカールちゃんを籠絡させるために頑張るね」
『ワン!』
マーヤおはよう! あいつは簡単には落ちないだろうが、頑張れよ!
「ルオおはよう。朝から尻尾を振って元気だね」
『ワン!』
ナナミおはよう! 早起きは三文の得と言うからな! 朝から元気バリバリだぜ!
「ふあー、ルオおはよう。あなたは朝から元気ですね。わたしは夜更かししていたので、まだ眠いです」
『ワン! ワン! ワン! ワワワン!』
アイリンてめぇ! 脱いだ服はちゃんと籠に入れろ! お前のせいで、俺は変態行動に出ないといけない状態になったんだぞ! 今すぐ謝れ!
「ルオは朝から元気で羨ましいです。犬は良いですね。家で1日ぐうたらと過ごすと良いのですから」
全然俺の言っていることが通じない。まぁ、当然と言えば当然だが。
アイリンに怒っていると、最後に黒髪の少年がやってきた。
「ルオ、おはよう」
『…………』
「おい、無視かよ! さっきまでみんなに挨拶していただろうが!」
「「「「「あははははははは」」」」」
俺が無視してシャカールがツッコミを入れた瞬間、女性陣たちが一斉に笑い出す。その後彼は俺を抱き抱えると顔を近付け、小声で囁く。
「おい、誰のお陰でこのシェアハウスで生活できていると思っているんだ。あんまり舐めた態度を取ると、今度こそ倒して強制的に成仏させてやるぞ」
『舐めた態度だと? それはこっちのセリフだ。お前の話では、俺は姉さんに飼われるはずだったじゃないか。それなのに、どうしてこうなってしまうんだよ。まずは約束を破ってごめんなさいって言え。じゃないと、お前のパンツを全て処分するからな』
「地味に嫌な仕返しだな。分かった。今度どうしてルーナがお前を飼ってくれないのかを聞いといてやる。今度はうまく説得してみせるから、今だけ我慢してくれ」
『チッ、絶対だからな。もし、次に約束を破ったら、パンツとズボンを全て処分して、フルチンで登校してもらう』
話がまとまると、俺は下ろしてもらい、自由となる。
しばらくすると、俺専用の皿の上にドックフードが入れられた。空腹状態だった俺は、喜んで朝食を食べる。
最初の頃は抵抗があった。何せ、肉体は犬でも、中身は神族なのだから。しかし食べてみると意外と美味い。
あのカリカリとした食感の中に、肉や野菜の旨味が凝縮されており、こんなに美味いものなのかと思ってしまうほどだった。
しばらくすると、みんなが校舎へと向かう時間となる。そんな彼らの背を見送りながら、俺は今日も一日、このシェアハウスの平和を守るために、自宅警備員の仕事を頑張るのであった。
0
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる