追放騎手の霊馬召喚〜トウカイテイオーを召喚できずに勘当された俺は、伝説の負け馬と共に霊馬競馬界で成り上がる!

仁徳

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第二章

第二話 ハルウララのもう一つのデメリット

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 俺が壊れていたと思っていたデバイスが、丸善好マルゼンスキー学園長のシムに差し替えた途端に正常に反応した。

 つまり、動作には問題がないと言うことが、これで証明された。

「これでデバイスの故障ではないと言うことが証明されたわね」

 ニコッと笑みを浮かべる丸善好マルゼンスキー学園長だが、このことがきっかけで新たな疑問が浮上してきた。

 デバイスの故障ではない。なら、どうしてあの時反応しなかった?

「信じてくれるかどうかは君次第だけど、レースが拒否できないのは、君が契約している霊馬と関係があると思うわ」

「ハルウララがデバイスの不具合と関係している?」

 霊馬とデバイスの関係性が分からず、首を傾げる。

「契約者の君なら分かっていることだとは思うけれど、ハルウララはとんでもない伝説持ちの競走馬なの」

「生前、1勝もできなかったと言う伝説ですね」

「そうね、他にもあるけれど、今はその話をしましょう。競走馬が現役で活躍するのは大体5~6歳、そして引退まで走るレースの数は、平均20~24となっているわ」

「そんなに少なかったんだ? あれ? でも、ハルウララは生前113回もレースに出走していたのだよね? それってすごくない?」

 丸善好マルゼンスキー学園長の話を聴きながら、クロは人差し指を頬に当て、首を傾げる。

 彼女の言う通り、平均回数を多く上回っている。

「少しだけ話が逸れてしまうのだけど、競走馬はとにかくレースに勝ち続けて、賞金を獲得しないといけない。その理由としては、1頭あたりにかかる年間の維持費が300万を超えてしまうからなの。だからレースに負け続けるような弱い馬を飼い続ける余裕は、馬主にはないわ。だから弱い馬は、強制的に引退をさせられ、最後は馬肉となって出荷される運命にある」

 当時の競走馬の過酷さを聞かされ、頭が痛くなる。

 馬も大変だったんだな。

「でも、ならどうしてハルウララは馬肉にならなかったの? その話が本当だったら、矛盾しているじゃない?」

 俺の代わりにクロが代弁してくれた。

「それにはちょっとしたカラクリがあるのよ。それが、ハルウララが生前113戦もして負け続けたのにも関わらず、馬肉にならずに済んだ理由ね。ハルウララが生きていた時の時代は、出走手当と言うものが貰えて、1回レースに出ることで6万の収入が手に入る。ハルウララは年間20回ほどレースに出走していたから、120万ほど稼いでいたわ。だから馬主の負担も少なく済んで、最終的には馬肉にならずに済んだのよ」

 どうしてハルウララが出荷されずに済んだのか、その理由を聞き納得した。

 確かに馬主の負担が少なければ、別に負け続けても殺さずに済む。寧ろ連敗記録を更新する度に話題となり、多くの人が負けの更新を見るために集まってきて、収益が出ると言う訳か。

「話を元に戻すのだけど、召喚される霊馬は全盛期の状態で顕現する。だから、状況は生前だった頃のハルウララの伝説や伝承、逸話の影響を強く受けるのよ。それが、デバイスにも影響を与えたって訳ね」

「つまり、ハルウララが生涯113戦もしたと言う逸話がデバイスに不具合を与え、レースのキャンセルができなくなっているってことですか?」

 丸善好マルゼンスキー学園長に訊ねてみると、彼女は無言のまま頷く。

「ハルウララが怪我をしないでレースに挑み続けた事実が仇となったわね。わたくしからしたら、ご愁傷様としか言えないけれど、これも霊馬騎手として経験を積むチャンスだと思って諦めるしかないわね」

 彼女の言葉に肩を落とす。まさかこんな結果になるとは思っていなかったので、驚きと言うよりも残念な気持ちだ。

 ハルウララが、俺にとって疫病神のように思えてきた。

「どうする? またシムを入れ替える? それともこのまま使う?」

 先ほどまで丸善好マルゼンスキー学園長の物となっていたデバイスを、そのまま使うかどうかを聞かれる。

 またわざわざシムを入れ替えてもらうのは手間をかけさせることになる。学園長だって暇ではないだろうし、そのまま受け取った方が時間を無駄にしないで済むだろう。

「いえ、そのままで――」

「シムを入れ替えてください!」

 そのままで構わない。そう言おうとしたところで、クロが横から口出しをする。

「分かったわ。ちょっと待ってね」

 クロの声音が大きかったから、俺の言葉が掻き消されてしまった。その結果丸善好マルゼンスキー学園長は彼女の言葉に従い、シムを入れ替え直す。

「はい。どうぞ」

「ありが――」

 学園長に礼を言ってデバイスを受け取ろうとすると、俺よりも早くクロが受け取る。そして彼女はポケットからハンカチを取り出し、何故かデバイスを全体的に拭き取り、俺に手渡す。

「ごめんね。デバイスに汚れが付いていから」

「そうか。それはサンキュウ」

 綺麗に拭き取られたデバイスを受け取り、胸ポケットに入れる。

 汚れなんてなかったと思うのだけど、俺が気付かないところにでもあったのだろうか? でも、念入りに拭いていたような? クロってそんなに綺麗好きだったけ?
 




 その日の放課後、俺は学生寮に帰るために廊下を歩いていた。すると曲がり角のところで、パーマを当てられて軽くウエーブのかかった赤いロングの女の子と出会す。

「あら? 東海帝王じゃない。あなたも今帰り?」

 彼女は俺の真名を口にする。周辺には他の生徒の姿が見当たらないからなのだろう。

「ああ、そういう大和鮮赤ダイワスカーレットも学生寮に帰るのか?」

「そうよ。道は一緒だし、一緒に帰りましょうか?」

「別に良いが?」

 偶然一緒になった大和鮮赤ダイワスカーレットと一緒に学生寮に帰ることになった。でも、彼女はそれで良いのだろうか? 大和鮮赤ダイワスカーレットは先日、俺との勝負に負けた。

 自分を負かせた相手と一緒に居て、普通は良い気分にはならないのではないのだろうか?

 まぁ、彼女自身はあんまりそんなことは気にしてはいなさそうだし、あんまり深く考えるのは止めておくことにしよう。

「見つけたぜ! ブォン! ブォン! ブオオオォン!」

 どこからか変な言葉が聞こえて来たかと思えば、1人の女の子がこちらに向かって走って来ているのが視界に入る。

 黒いショートヘアーだが、毛先は白くなっているツートンカラーの女の子だ。

 廊下を走ってはいけないと言う決まりを破って現在も爆走している女の子は、俺たちの前に来ると止まり、そして指を向けて来る。

「アタイと勝負しやがれ!」
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