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そのこはツイン魔女。−プロローグ−

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 短い草の茂る地面に、光る幾何学模様のようなものが浮かび上がっている。
 そこに横たわっている、広いつばの、頭の上が三角でその先端は少し折れ曲がっている帽子を被った、黒っぽい服の少女。が、目を開けた。
 
 木の実を頬張った1体1体毛色が違う色とりどりだがリスによく似た姿をした、モフモフの生き物達や、地面に食い込みそうなカーブのかかった、鋭い爪のある四足の、背にトゲトゲとしたヒレ、全身鱗だらけの大きなトカゲの様な、しかし大小様々な角の生えた生き物達が、わぁっ!と声をあげた。
 驚きというよりは、歓声に近い声色だ。

 するとその少女を取り囲むようにいる群衆の奥から、『おお、目覚めたか?』としゃがれた年老いた声が上がり、気づいた者達が道を開けていった。
 
 コツっ、コツっ…音が近づいてくる。

一 現れたのは長い髭の生えた、人の背丈以上はある大蛇の様なしかし、杖をつきながらも二足歩行をする、見たこともない種類の爬虫類だった。

(…ううん、絵本でなら、見たことある姿…!そう、きっと…)

 龍!!

 少女が心の中で叫んだ瞬間、

『わしらは、18年もの間ずっと、心優しき“魔女”である貴方が再びこの世界に蘇るのを、待っておったのじゃよ。』

 シワシワのまぶたがゆっくりと下がっていき、目が笑む。

『一度死んだあなたの全身を、少しも腐敗させぬよう皆の魔力を集め維持するということには、すこぶる骨が折れそうじゃったわい!』


 龍が、そう云った。

 

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