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2051年4月5日(水) 後奏
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射撃場には先客がいた。綜舞だ。
イエローのシューティンググラス、拳銃を片手にアルミ製の黒いベンチに腰掛けている。
龙成「綜くん。帰ってたんだ。ごめんね、今日戻れなくて」
綜舞「ああ。俺もちょっと野暮用で、早めに切り上げた。なんで美久が?」
龙成「ちょっと勝負したくて笑」
綜舞「指導でなく? おもしろそうじゃん笑」
室内は黒を基調とした内装で、線状に走るグリーンの間接照明が必要最低限の光量を提供している。
美久「綜舞くんも銃撃つんだね」
綜舞「まあ。使える武器は多い方がいいからな」
龙成「もう綜くんに使えない武器とかないんじゃない?」
綜舞「否定はしない笑」
美久「かっこよ笑」
「⋯⋯そういえば的とかないの?」
おおよそ横幅2メートル、奥行き5メートルの射座が5つ、1つずつ隔てられて並んでいる。
標的は見当たらず、それぞれ三方の壁・天井・床に格子状の溝が刻まれ、一定間隔でライトのようなものが埋め込まれている。
龙成「的は立体映像なんだ。VAMPは弾を避けられるからね。止まった的じゃ話にならない。ちなみに雨とか風も再現できる」
美久「すご⋯⋯」
綜舞「とりあえず時間は1分、天候はノーマル、戦力は3にするか。1発でも多く命中させた方が勝ちな」
それぞれの射台にはタッチパネルが搭載され、様々なモードを設定できるようになっている。
綜舞が左から2番目の射台の設定をしていると、追って龙成がその右隣の射台の設定を始める。
綜舞「戦力何?」
龙成「⋯⋯5」
綜舞「7な」
龙成「っ」
小さくうめき、歯を食いしばりながら設定を変える龙成。標的の戦力差がハンデのようだ。
綜舞「銃の使い方はわかるか?」
美久「うん、昨日龙成に大体聞いた」
美久はリュックからガンケースを引っ張り出し、準備に取り掛かる。龙成も背負っていたケースを下ろし、慣れた手つきで銃を取り出す。
美久「すごい、刃も付いてるんだ」
龙成「ああ、うん。銃剣ってやつ。VAMP以外に当たりそうな時とか、撃てない状況は結構あるからね。まぁ装填時とか敵が多い時とか、とっさの防御目的で使う方が多いかな。至近距離すぎると、撃ち込めても多少やられる可能性あるから」
そう言って、刃の近くに配置されたスイッチを押して見せる龙成。薄暗い室内に、紫の光が走る剣身が浮かび上がる。
美久「おぉ、かっこいい」
綜舞「予備の弾倉はここ置いとくから。あとこれな。色付きもあるし、見やすいと思ったの好きに持ってって」
綜舞がクリアレンズのシューティンググラスを美久に手渡す。
壁一面を埋める備え付けの棚には様々な形状のUVガン、その他備品が取り揃えられている。
綜舞「⋯⋯いけるか?」
龙成「俺はいつでも」
美久「私も大丈夫」
いつもベルトに引っ掛けている、オレンジのシューティンググラスをかける龙成。美久は照準器を覗き込み、動作の確認をしている。
綜舞「セミだからな」
龙成「わかってる笑」
綜舞「じゃ、いくぞ。3、2、1⋯⋯」
綜舞が美久のパネルを、龙成は自身のパネルを操作する。束の間の緊張感。
綜舞「開始」
機械の作動音が聞こえたかと思うと、壁や床から発せられた光線が赤い人影を形作った。格子状の赤色のラインで模られた、10頭身ほどの標的が悠々と美久の前に立ちはだかる。
美久が圧倒されている間に、龙成は既に5発ほど撃ち放っている。ヒットを示す電子音が3回鳴った。
パァン!
焦ってひとまず1発撃つ美久だったが、標的の肩あたりを捉えた弾は易々とかわされる。
綜舞「胴体を狙うといい。もっと根本を持って、まっすぐ、指の腹で」
見かねた綜舞が美久を指導する。龙成は構わず撃ち続け、さらに2回のヒットを重ねている。
パァン!
美久「当たった」
美久の弾が標的の胸部を半ばかすめるように撃ち抜いた。続けて5発撃ち、2回ヒットする。
綜舞のアドバイスのおかげで手応えを感じる美久。しかし龙成のヒット音は絶え間なく聞こえている。
綜舞「1発目は捨てるくらいで、秒で回避方向に撃てたら強い。それとAI搭載してるから、ワンパターンにならないように」
「バーストなら1回引くだけで3発撃てるけど、変えるか?」
美久「うん!」
龙成「ちょ、セミだよねぇ?!」
綜舞「お前だけな」
美久の銃を一度手に取り、「ここで変えられるから」と側面のレバー部分を示す綜舞。下から安全装置、セミオート、バーストショットに切り替えられる。
パァン! パァン! パァン!
綜舞の助言通りに撃った美久の弾は、躍動する標的を戒めるかのように、その身を2度撃ち抜いた。
龙成「ねーめっちゃ雨!!」
いつの間にか龙成の射台に移動していた綜舞が、無言でパネルを操作している。明らかに土砂降りとわかる水音が響き渡る。
龙成「いや10! 10は厳しいって!!」
龙成のヒット音が止む。戦力を最大に変更されたらしい。
綜舞「俺でも10はないわ」
龙成「ならやめよ?!」
綜舞「俺は信じてるから。お前の可能性」
龙成「いや風はいいから! 信じすぎでしょ!!」
騒ぎをよそに、着実にヒットを重ねる美久。光る弾道が美しく薄闇を引き裂く。
綜舞「終了~」
結局スコアは龙成が12、美久が15で美久の勝利に終わった。肩を落とす龙成。
美久「やったー」
龙成「リアル悪夢⋯⋯」
綜舞「初手15はすげーよ。戦力も基本5でやるから大差ないし。やっぱ素質あるわ」
龙成「それはそう。まぐれじゃなかった」
美久「へへ、ありがとう。すごい楽しかった」
ベンチに並んで座る美久と龙成。綜舞が壁と一体化した冷蔵庫から清涼飲料水を3本取り出し、2人にも渡して座る。
綜舞「っはーうめ」
美久「⋯⋯綜舞くんってピアスすごいよね。私は耳たぶでも痛かったから、軟骨とか絶対無理だ」
片耳だけでも10以上のピアスを付けている綜舞。全て無機質なシルバーだ。
綜舞「痛みには慣れてる。それにこれはLYCANがやられる度にあけてた名残だから、痛くないと意味ない」
龙成「あける場所なくなってきて、次は鼻か口かとか言い出すもんだから、海央くんが伊勢さんにかけ合ってウルフタグが導入されたんだよね笑」
綜舞「そ。ドッグタグならぬ笑」
笑い合う2人だったが、美久は笑えなかった。笑えるほどに繰り返された喪失の影に、気が遠くなる。
いつも肩から斜め掛けにしているチェーンを眺める綜舞。勲章のように、たくさんのウルフタグがぶら下がっている。
青い金属製の十字架、先端が狼の横顔の形になっている。中央にはローマ字で人名が刻まれている。
美久「⋯⋯綜舞くんってすごいね。全部背負って、いつも強くて」
綜舞「1人じゃないからな。みんな俺の中で生き続けてる。だから立っていられる。迷わずに済む」
遠い目でそう話す綜舞は頼もしさと共に、いつか砕け散ってしまいそうな危うさを感じさせる。
美久「そのオッドアイは天然?」
綜舞「いや、偽装」
澄んだイエローの右目。黒い左目とのコントラストが、神秘的な魅力を放っている。
美久「そうなんだ。カラコン?」
綜舞「そ。かっこいいしょ?」
美久「うん。夜とか光ってて強そうだった」
綜舞「だろ? かっこよかったな⋯⋯」
噛み締めるようにそう呟く綜舞。
美久「? あ、狼の目ってタペタムっていうのがあるから、反射して光って見えるんだよね」
龙成「お、調べたの?」
美久「うん、ちょっと気になって。図鑑でハイイロオオカミのとこ読んだ」
綜舞「猫とかもそうだな。その代わり視力が悪い。動体視力は良いから戦闘には支障ないが、コンタクトしてる奴は多いよ。あと色も褪せて見えるな。遺伝レベルは個人差あるが」
美久「海央と陸翔もカラコン?」
海央はグリーン、陸翔はライトグリーンだったことを思い出す美久。
綜舞「海央は元からだな。LYCANは遺伝子の影響で、髪とか目とかカラフルな奴が結構いる」
龙成「俺もほんとは青いんだけど目立つから、視力矯正がてら黒にしてる。髪は面倒でそのままだけど」
美久「青?! そうなんだ、知らなかった」
龙成の髪は毛先にかけて、黒から青のグラデーションになっている。確かに均一に黒く染めるのは難しそうだ。
綜舞「ちなみに使われたDNAはハイイロオオカミじゃなくて、1万年前に絶滅したダイアウルフな」
美久「なんか聞いたことある、かも」
龙成「ゲームとかによく出てくるよ。背中に乗れたりしてね。実際はそこまで大きくなかったらしいけど」
綜舞「⋯⋯いや俺はクソデカ説を推すね」
自信ありげにそう主張する綜舞。手にしたペットボトルは既に空になっている。
龙成「えー骨残ってるのに笑?」
綜舞「小型ばっか見つかったかもしれないだろ。まだ絶滅してない説もあるしな。クソデカ狼型UMAの目撃例は数多くある」
龙成「クソデカ狼型UMAはえぐい笑」
美久「すごい語感⋯⋯笑」
3人で他愛のない雑談をしていると、誰かが入室してくる。
海央「美久いた~よかった無事で」
陸翔「兄貴、もういないっつってんのに結局迎えに行ってさ。0時に終わる学校があるかよ」
今夜のパトロールを終えたらしい2人。陸翔が冷蔵庫からエナジードリンクを取り出し、海央にも投げ渡す。「ナイスキャッチ」と、自画自賛する海央。
龙成「もうそんな時間か」
エリスリンクを確認する龙成。時刻は1:02。
美久「龙成は普通に学校あるし、帰らないとだね」
龙成「うん。いや美久ちゃんもでしょ笑」
まだ帰りたくなさそうな美久をたしなめる龙成。ちなみに終電は2時過ぎだ。
綜舞「2人が射撃勝負してさ、美久が勝ったのよ」
海央「龙成に勝ったの?! すごいじゃん!!」
龙成「不正がありました⋯⋯」
陸翔「言い訳すんな」
なぜか怒られる龙成。「はい⋯⋯」と、すぐに大人しくなる。
綜舞「また練習したくなったらいつでも来ていいからな。それと弾倉は常に満タンにしておくこと」
美久「うん、ありがとう」
海央「俺に会いたくなったらゲーセン来ていいからな。何かあったら常に俺を頼ること」
陸翔「いやキモいしサボんな」
綜舞「そういえば連絡先交換しとくか。海央以外」
ギロリと綜舞が海央を睨めつける。
海央「ごめんなさいごめんさい! 今日の戦利品全部あげるから仲間に入れて!!」
綜舞「殴りてー」
龙成「今日も行ったんだ笑」
陰のない賑やかな雰囲気に、深い安心感を覚える美久。初めての感覚だ。お互いを心から信頼し合っているのが伝わってくる。
VAMPあっての縁だけれど、VAMPがいない世界で出会ってたらーー、みんなが無事にこの戦いを終えられるよう、密かに願う美久だった。
イエローのシューティンググラス、拳銃を片手にアルミ製の黒いベンチに腰掛けている。
龙成「綜くん。帰ってたんだ。ごめんね、今日戻れなくて」
綜舞「ああ。俺もちょっと野暮用で、早めに切り上げた。なんで美久が?」
龙成「ちょっと勝負したくて笑」
綜舞「指導でなく? おもしろそうじゃん笑」
室内は黒を基調とした内装で、線状に走るグリーンの間接照明が必要最低限の光量を提供している。
美久「綜舞くんも銃撃つんだね」
綜舞「まあ。使える武器は多い方がいいからな」
龙成「もう綜くんに使えない武器とかないんじゃない?」
綜舞「否定はしない笑」
美久「かっこよ笑」
「⋯⋯そういえば的とかないの?」
おおよそ横幅2メートル、奥行き5メートルの射座が5つ、1つずつ隔てられて並んでいる。
標的は見当たらず、それぞれ三方の壁・天井・床に格子状の溝が刻まれ、一定間隔でライトのようなものが埋め込まれている。
龙成「的は立体映像なんだ。VAMPは弾を避けられるからね。止まった的じゃ話にならない。ちなみに雨とか風も再現できる」
美久「すご⋯⋯」
綜舞「とりあえず時間は1分、天候はノーマル、戦力は3にするか。1発でも多く命中させた方が勝ちな」
それぞれの射台にはタッチパネルが搭載され、様々なモードを設定できるようになっている。
綜舞が左から2番目の射台の設定をしていると、追って龙成がその右隣の射台の設定を始める。
綜舞「戦力何?」
龙成「⋯⋯5」
綜舞「7な」
龙成「っ」
小さくうめき、歯を食いしばりながら設定を変える龙成。標的の戦力差がハンデのようだ。
綜舞「銃の使い方はわかるか?」
美久「うん、昨日龙成に大体聞いた」
美久はリュックからガンケースを引っ張り出し、準備に取り掛かる。龙成も背負っていたケースを下ろし、慣れた手つきで銃を取り出す。
美久「すごい、刃も付いてるんだ」
龙成「ああ、うん。銃剣ってやつ。VAMP以外に当たりそうな時とか、撃てない状況は結構あるからね。まぁ装填時とか敵が多い時とか、とっさの防御目的で使う方が多いかな。至近距離すぎると、撃ち込めても多少やられる可能性あるから」
そう言って、刃の近くに配置されたスイッチを押して見せる龙成。薄暗い室内に、紫の光が走る剣身が浮かび上がる。
美久「おぉ、かっこいい」
綜舞「予備の弾倉はここ置いとくから。あとこれな。色付きもあるし、見やすいと思ったの好きに持ってって」
綜舞がクリアレンズのシューティンググラスを美久に手渡す。
壁一面を埋める備え付けの棚には様々な形状のUVガン、その他備品が取り揃えられている。
綜舞「⋯⋯いけるか?」
龙成「俺はいつでも」
美久「私も大丈夫」
いつもベルトに引っ掛けている、オレンジのシューティンググラスをかける龙成。美久は照準器を覗き込み、動作の確認をしている。
綜舞「セミだからな」
龙成「わかってる笑」
綜舞「じゃ、いくぞ。3、2、1⋯⋯」
綜舞が美久のパネルを、龙成は自身のパネルを操作する。束の間の緊張感。
綜舞「開始」
機械の作動音が聞こえたかと思うと、壁や床から発せられた光線が赤い人影を形作った。格子状の赤色のラインで模られた、10頭身ほどの標的が悠々と美久の前に立ちはだかる。
美久が圧倒されている間に、龙成は既に5発ほど撃ち放っている。ヒットを示す電子音が3回鳴った。
パァン!
焦ってひとまず1発撃つ美久だったが、標的の肩あたりを捉えた弾は易々とかわされる。
綜舞「胴体を狙うといい。もっと根本を持って、まっすぐ、指の腹で」
見かねた綜舞が美久を指導する。龙成は構わず撃ち続け、さらに2回のヒットを重ねている。
パァン!
美久「当たった」
美久の弾が標的の胸部を半ばかすめるように撃ち抜いた。続けて5発撃ち、2回ヒットする。
綜舞のアドバイスのおかげで手応えを感じる美久。しかし龙成のヒット音は絶え間なく聞こえている。
綜舞「1発目は捨てるくらいで、秒で回避方向に撃てたら強い。それとAI搭載してるから、ワンパターンにならないように」
「バーストなら1回引くだけで3発撃てるけど、変えるか?」
美久「うん!」
龙成「ちょ、セミだよねぇ?!」
綜舞「お前だけな」
美久の銃を一度手に取り、「ここで変えられるから」と側面のレバー部分を示す綜舞。下から安全装置、セミオート、バーストショットに切り替えられる。
パァン! パァン! パァン!
綜舞の助言通りに撃った美久の弾は、躍動する標的を戒めるかのように、その身を2度撃ち抜いた。
龙成「ねーめっちゃ雨!!」
いつの間にか龙成の射台に移動していた綜舞が、無言でパネルを操作している。明らかに土砂降りとわかる水音が響き渡る。
龙成「いや10! 10は厳しいって!!」
龙成のヒット音が止む。戦力を最大に変更されたらしい。
綜舞「俺でも10はないわ」
龙成「ならやめよ?!」
綜舞「俺は信じてるから。お前の可能性」
龙成「いや風はいいから! 信じすぎでしょ!!」
騒ぎをよそに、着実にヒットを重ねる美久。光る弾道が美しく薄闇を引き裂く。
綜舞「終了~」
結局スコアは龙成が12、美久が15で美久の勝利に終わった。肩を落とす龙成。
美久「やったー」
龙成「リアル悪夢⋯⋯」
綜舞「初手15はすげーよ。戦力も基本5でやるから大差ないし。やっぱ素質あるわ」
龙成「それはそう。まぐれじゃなかった」
美久「へへ、ありがとう。すごい楽しかった」
ベンチに並んで座る美久と龙成。綜舞が壁と一体化した冷蔵庫から清涼飲料水を3本取り出し、2人にも渡して座る。
綜舞「っはーうめ」
美久「⋯⋯綜舞くんってピアスすごいよね。私は耳たぶでも痛かったから、軟骨とか絶対無理だ」
片耳だけでも10以上のピアスを付けている綜舞。全て無機質なシルバーだ。
綜舞「痛みには慣れてる。それにこれはLYCANがやられる度にあけてた名残だから、痛くないと意味ない」
龙成「あける場所なくなってきて、次は鼻か口かとか言い出すもんだから、海央くんが伊勢さんにかけ合ってウルフタグが導入されたんだよね笑」
綜舞「そ。ドッグタグならぬ笑」
笑い合う2人だったが、美久は笑えなかった。笑えるほどに繰り返された喪失の影に、気が遠くなる。
いつも肩から斜め掛けにしているチェーンを眺める綜舞。勲章のように、たくさんのウルフタグがぶら下がっている。
青い金属製の十字架、先端が狼の横顔の形になっている。中央にはローマ字で人名が刻まれている。
美久「⋯⋯綜舞くんってすごいね。全部背負って、いつも強くて」
綜舞「1人じゃないからな。みんな俺の中で生き続けてる。だから立っていられる。迷わずに済む」
遠い目でそう話す綜舞は頼もしさと共に、いつか砕け散ってしまいそうな危うさを感じさせる。
美久「そのオッドアイは天然?」
綜舞「いや、偽装」
澄んだイエローの右目。黒い左目とのコントラストが、神秘的な魅力を放っている。
美久「そうなんだ。カラコン?」
綜舞「そ。かっこいいしょ?」
美久「うん。夜とか光ってて強そうだった」
綜舞「だろ? かっこよかったな⋯⋯」
噛み締めるようにそう呟く綜舞。
美久「? あ、狼の目ってタペタムっていうのがあるから、反射して光って見えるんだよね」
龙成「お、調べたの?」
美久「うん、ちょっと気になって。図鑑でハイイロオオカミのとこ読んだ」
綜舞「猫とかもそうだな。その代わり視力が悪い。動体視力は良いから戦闘には支障ないが、コンタクトしてる奴は多いよ。あと色も褪せて見えるな。遺伝レベルは個人差あるが」
美久「海央と陸翔もカラコン?」
海央はグリーン、陸翔はライトグリーンだったことを思い出す美久。
綜舞「海央は元からだな。LYCANは遺伝子の影響で、髪とか目とかカラフルな奴が結構いる」
龙成「俺もほんとは青いんだけど目立つから、視力矯正がてら黒にしてる。髪は面倒でそのままだけど」
美久「青?! そうなんだ、知らなかった」
龙成の髪は毛先にかけて、黒から青のグラデーションになっている。確かに均一に黒く染めるのは難しそうだ。
綜舞「ちなみに使われたDNAはハイイロオオカミじゃなくて、1万年前に絶滅したダイアウルフな」
美久「なんか聞いたことある、かも」
龙成「ゲームとかによく出てくるよ。背中に乗れたりしてね。実際はそこまで大きくなかったらしいけど」
綜舞「⋯⋯いや俺はクソデカ説を推すね」
自信ありげにそう主張する綜舞。手にしたペットボトルは既に空になっている。
龙成「えー骨残ってるのに笑?」
綜舞「小型ばっか見つかったかもしれないだろ。まだ絶滅してない説もあるしな。クソデカ狼型UMAの目撃例は数多くある」
龙成「クソデカ狼型UMAはえぐい笑」
美久「すごい語感⋯⋯笑」
3人で他愛のない雑談をしていると、誰かが入室してくる。
海央「美久いた~よかった無事で」
陸翔「兄貴、もういないっつってんのに結局迎えに行ってさ。0時に終わる学校があるかよ」
今夜のパトロールを終えたらしい2人。陸翔が冷蔵庫からエナジードリンクを取り出し、海央にも投げ渡す。「ナイスキャッチ」と、自画自賛する海央。
龙成「もうそんな時間か」
エリスリンクを確認する龙成。時刻は1:02。
美久「龙成は普通に学校あるし、帰らないとだね」
龙成「うん。いや美久ちゃんもでしょ笑」
まだ帰りたくなさそうな美久をたしなめる龙成。ちなみに終電は2時過ぎだ。
綜舞「2人が射撃勝負してさ、美久が勝ったのよ」
海央「龙成に勝ったの?! すごいじゃん!!」
龙成「不正がありました⋯⋯」
陸翔「言い訳すんな」
なぜか怒られる龙成。「はい⋯⋯」と、すぐに大人しくなる。
綜舞「また練習したくなったらいつでも来ていいからな。それと弾倉は常に満タンにしておくこと」
美久「うん、ありがとう」
海央「俺に会いたくなったらゲーセン来ていいからな。何かあったら常に俺を頼ること」
陸翔「いやキモいしサボんな」
綜舞「そういえば連絡先交換しとくか。海央以外」
ギロリと綜舞が海央を睨めつける。
海央「ごめんなさいごめんさい! 今日の戦利品全部あげるから仲間に入れて!!」
綜舞「殴りてー」
龙成「今日も行ったんだ笑」
陰のない賑やかな雰囲気に、深い安心感を覚える美久。初めての感覚だ。お互いを心から信頼し合っているのが伝わってくる。
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