むしゃくしゃして喚んだ。今は反省している。

第二章

神様の気遣い

「あれ、そういえばウズメちゃん、今って《神々の遊戯》の最中じゃないの？　もう負けちゃった？」
「アマテラス様…それについては言いたい事がたくさんっありますが！」
「え～なんかあったっけ～。私、もう歳だから物忘れが激しくてぇ」
「うっ！」

なんか手玉に取らてるって感じだなぁ。

「アマノウズメ、いいから早く剣を借りるドン！」
「あ、はい、そうでした！」
「え、剣って何？　どういうこと？」

そこで俺たちは現在の状況と、ここに来た理由を説明した。


「なるほど、キミが今回の人間の戦士なのね。ウズメちゃんが適当に召喚したせいで迷惑かけたねぇ～」
「それはっ…！　元はといえばアマテラス様のせいで…！」
「いやまぁ、責任がどちらにあろうとも俺が迷惑被っている事実は変わらないんで、とにかく何とかしてください」
「分かりました！　では高天原の最高神、アマテラスの名のもとにタイチ少年に神器『草薙の剣』を貸し与えましょう！」

おお…やっとか。
しかし草薙の剣が強いのか、どんな性能をもっているのか、そもそも俺がその剣を扱えるのかどうかは分からない。
不安要素だらけである。

「クシナダちゃーん、いる？」 
「はい、ここに！」

あれ？
クシナダさんいつの間に？

「さっきの『漫画で読む古事記』はクシナダちゃんのセレクトだね？」
「はい、いかがでしたか？」
「うーん、残念。今日は日本書紀の気分かな～」 
「も、申し訳ございません！」

この人…引きこもりのくせに偉そうに…。

「まぁいいや！　クシナダちゃん、あれを持って来て！」
「はい、ただいま…！」

アマテラス宅の方から、クシナダさんが荷台を運んできた。
その荷台にあるのは…岩に刺さった剣!?

「はいっ！　これが草薙の剣です！　これを抜けるのは真の勇者のみという伝説の剣だよ！」

おいおい、そりゃエクスカリバーの伝説だろうが！
俺でも知ってるぞ！

「ほう、草薙の剣にはそんな伝説があったのかドン」

騙されるなよポセイドン…。

「さぁどうぞタイチくん！　剣を握って！」
「あ、あぁ…」

しかしこれ、設定はパクりだけど本当に勇者にしか抜けなかったら困るなぁ。
俺で抜けるか？
剣の柄を握って軽く力を入れると…あっさり抜けた。

「おおおー！　剣が抜けたよクシナダちゃん！」
「抜けましたね！　タイチさん、あなたこそ真の勇者です！」

い、いらねぇ演出…！
つーか刺さってもいないぞこれ！
差し込んであるだけじゃんか！

「なんだと！ただの小僧かと思っていたが、お前は勇者だったのかドン！」

騙されるなよポセイドン…！（2回目）

「あはは、一応、キミをやる気にさせようとしているんだよ。頑張って欲しいんじゃない？」

アマテラス様の行動をウズメがフォローする。
仕方ない、そういう事にしておくか。