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青は藍より出でて藍より青し
季節が変わるとき〔2〕
風が、窓を叩く。
カーテンの隙間から夜を眺めて、綾瀬は呟いた。
「季節が変わるときは必ず強い風が吹く」
綾瀬の開かれた両脚の間に座っていた葉月は、綾瀬の言葉には耳を傾けただけで、綾瀬の中心を愛撫する手を止めようとはしなかった。
「葉月…」
掠れた声で呼ばれて、葉月は微笑した。
そして、綾瀬の求めているものを与えてやるために、勃ちあがったそれに舌を近付ける。
「……あっ」
ソファーの背凭れに上体を倒し、首を仰け反らせて綾瀬はその感覚に酔う。
一点を目指して身体中の血液が激しく、妖しく流動する。
喘ぎを堪えて唇を噛むが、到底我慢出来るものではない。
「あっ…うっ…葉月…」
巧みに絡まってくる熱く濡れた舌に、腰が痺れ、自然に浮き上がる。
別の場所に、刺激が欲しくなる。
浅ましい身体と厭っても、我慢出来ない。
「……葉月…っ、抱けよ…オレを…抱け」
目に涙を浮かべて懇願する綾瀬に、葉月は応えようとしない。
「葉月!」
綾瀬のそれから唇を離し、内腿の柔らかな肉に口づけて葉月は言う。
「駄目です」
「……なんで…だめ…」
「オレには綾瀬を、慰めることしか出来ない。本当の快楽は与えられるものじゃない。欲しいのなら、自分から求めなければ」
「欲しいって、言ってる…おまえがっ!」
「それは、嘘です」
「葉月!」
再び、綾瀬のそれを口の中に包み追いたてる葉月の髪を掴んで、綾瀬は自分の中の膿を出すように、苦しそうな表情で、達する。
イってしまえば、もうどうでもよくなる。
「出てけよ。…行け」
ソファーの背凭れにしがみ付いて、葉月を見ないように追い払う。
慣れているのか葉月は冷静に立ち上がり、綾瀬を残して部屋を出た。
こういうとき綾瀬は絶対に葉月を見ない。
だから自分を置いて部屋を出る葉月の表情を、綾瀬は知らない。
綾瀬は、5年前に誘拐されたとき、そのチンピラに強姦されたという。
葉月はそのことを、父親から聞かされていた。
それが理由なのかはわからない、綾瀬は射精するために自分の手で自分のものに触れることが出来なかった。
誰よりも側にいた葉月だけがそのことに気づいた。
葉月は、綾瀬自身の代わりに、手をそえる。
肉体の欲望を解放してやる。
その度にそれだけだ、と自分に言い聞かさなければならなかった。
弱みにつけこむような真似で綾瀬を抱いてはいけないと。
綾瀬の部屋を出て、渡り廊下から庭に降りた。
強い風に吹かれて庭の木々が梢を鳴らしている。
今夜のうちに、だいぶ葉が落ちるだろう。
季節はもう秋より冬に近い。
「季節が変わるときには強い風が吹く」
綾瀬の言ったことを口に出して言ってみた。
「人が変わるときには、どんな前兆がある」
季節も人も、いつまでもひとつの場所に留まることは出来ない。
流れる雲の隙間に見え隠れする月を仰ぎ見ながら、葉月は思う。
人には宿命があるのだろうか。
そうは思わない。
人は、望んだ場所に行けるのだ。望みさえすれば。
綾瀬はそれに気づきながら気づかないふりをしている。
あの人に、風は吹くか。
綾瀬の望みのままに綾瀬を自由にしてやりたいと思っても、組に対する恩義という枷が葉月にそれを許さない。
葉月に出来るのは、綾瀬が組織のトップに立つ日まで、綾瀬を守ることだけだ。
いつからか、その当り前のことが酷く辛く感じるようになった。
もし、誰かが、綾瀬を宿命から解き放とうとしたら自分はどう出るだろう。
組にとって綾瀬は必要な人間だ。
手放すわけには、いかない。
そして、なにより。
本当は葉月自身が綾瀬を、手放したくないと思っている。
彼を縛っているのは誰よりも自分なのかもしれない。
「……綾瀬」
強い風を予感しながら、今はまだ生温い矛盾の中に葉月はいる。
カーテンの隙間から夜を眺めて、綾瀬は呟いた。
「季節が変わるときは必ず強い風が吹く」
綾瀬の開かれた両脚の間に座っていた葉月は、綾瀬の言葉には耳を傾けただけで、綾瀬の中心を愛撫する手を止めようとはしなかった。
「葉月…」
掠れた声で呼ばれて、葉月は微笑した。
そして、綾瀬の求めているものを与えてやるために、勃ちあがったそれに舌を近付ける。
「……あっ」
ソファーの背凭れに上体を倒し、首を仰け反らせて綾瀬はその感覚に酔う。
一点を目指して身体中の血液が激しく、妖しく流動する。
喘ぎを堪えて唇を噛むが、到底我慢出来るものではない。
「あっ…うっ…葉月…」
巧みに絡まってくる熱く濡れた舌に、腰が痺れ、自然に浮き上がる。
別の場所に、刺激が欲しくなる。
浅ましい身体と厭っても、我慢出来ない。
「……葉月…っ、抱けよ…オレを…抱け」
目に涙を浮かべて懇願する綾瀬に、葉月は応えようとしない。
「葉月!」
綾瀬のそれから唇を離し、内腿の柔らかな肉に口づけて葉月は言う。
「駄目です」
「……なんで…だめ…」
「オレには綾瀬を、慰めることしか出来ない。本当の快楽は与えられるものじゃない。欲しいのなら、自分から求めなければ」
「欲しいって、言ってる…おまえがっ!」
「それは、嘘です」
「葉月!」
再び、綾瀬のそれを口の中に包み追いたてる葉月の髪を掴んで、綾瀬は自分の中の膿を出すように、苦しそうな表情で、達する。
イってしまえば、もうどうでもよくなる。
「出てけよ。…行け」
ソファーの背凭れにしがみ付いて、葉月を見ないように追い払う。
慣れているのか葉月は冷静に立ち上がり、綾瀬を残して部屋を出た。
こういうとき綾瀬は絶対に葉月を見ない。
だから自分を置いて部屋を出る葉月の表情を、綾瀬は知らない。
綾瀬は、5年前に誘拐されたとき、そのチンピラに強姦されたという。
葉月はそのことを、父親から聞かされていた。
それが理由なのかはわからない、綾瀬は射精するために自分の手で自分のものに触れることが出来なかった。
誰よりも側にいた葉月だけがそのことに気づいた。
葉月は、綾瀬自身の代わりに、手をそえる。
肉体の欲望を解放してやる。
その度にそれだけだ、と自分に言い聞かさなければならなかった。
弱みにつけこむような真似で綾瀬を抱いてはいけないと。
綾瀬の部屋を出て、渡り廊下から庭に降りた。
強い風に吹かれて庭の木々が梢を鳴らしている。
今夜のうちに、だいぶ葉が落ちるだろう。
季節はもう秋より冬に近い。
「季節が変わるときには強い風が吹く」
綾瀬の言ったことを口に出して言ってみた。
「人が変わるときには、どんな前兆がある」
季節も人も、いつまでもひとつの場所に留まることは出来ない。
流れる雲の隙間に見え隠れする月を仰ぎ見ながら、葉月は思う。
人には宿命があるのだろうか。
そうは思わない。
人は、望んだ場所に行けるのだ。望みさえすれば。
綾瀬はそれに気づきながら気づかないふりをしている。
あの人に、風は吹くか。
綾瀬の望みのままに綾瀬を自由にしてやりたいと思っても、組に対する恩義という枷が葉月にそれを許さない。
葉月に出来るのは、綾瀬が組織のトップに立つ日まで、綾瀬を守ることだけだ。
いつからか、その当り前のことが酷く辛く感じるようになった。
もし、誰かが、綾瀬を宿命から解き放とうとしたら自分はどう出るだろう。
組にとって綾瀬は必要な人間だ。
手放すわけには、いかない。
そして、なにより。
本当は葉月自身が綾瀬を、手放したくないと思っている。
彼を縛っているのは誰よりも自分なのかもしれない。
「……綾瀬」
強い風を予感しながら、今はまだ生温い矛盾の中に葉月はいる。
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