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【完結編】天に在らば比翼の鳥
3.大人の愉しみ
新宿の事務所に顔を出すと、綾瀬がいた。
高谷の顔を見て、「いいところに来たな。これから銀座に行く。付き合え」と言う。
高谷は呆れた顔を作った。
「毎晩飲み歩いてないで、たまには早く帰って、ありすと一緒に晩飯を食ってやったらどうだ」
綾瀬は高谷の忠告に顔を顰めた。
「オレの子供じゃない。ありすの面倒は見させている」
「寂しがっていると篤郎も言ってたぞ」
「そんなに気がかりなら、おまえが一緒に晩飯を食ってやれ」
とうとう本気で怒ったらしい綾瀬に負けて、高谷は綾瀬と一緒に銀座に行った。
グラスを2杯空けると、やっと綾瀬の口が軽くなった。
「オレに子供の相手は無理だ。子供は何を考えているのか、わからない」
「子供だと思わなければいい。ありすは普通の子供とは、違う」
ありすをテヘランから連れてきた河上が言っていた。
「この子は8才にして、英語、フランス語、日本語、ペルシャ語の4ケ国語を理解しています。並外れて頭のいい子ですが、環境のせいかもともとの性質か、ちょっと変わった子です。もちろん悪い子ではないのですが、学校とか、集団生活がうまく出来るか心配です」
桐生の屋敷には、そもそも「普通の人間」などいない。
社会からはみ出した男たちには、ありすは自然に馴染んで遊び相手にしている。
だが、外からやってくる家政婦には反抗的で、すでに3人、クビにしていた。
綾瀬がそのことを話すと、高谷は「どこかで聞いた話だな」と言って笑った。
ありすが桐生邸に住むようになってから、綾瀬の生活はそれまでと全く変わった。
綾瀬自身はなるべくありすのことを意識の外に置いて、関心も興味もない、というスタンスをとってはいるが、問題は次から次に起きて、否応なしに、ありすの保護者という役回りをさせられる。
ありすは8歳で、日本なら小学2年生ということになる。
綾瀬はコネを使って、ミッション系の私立の小学校にありすを通わせたが、一カ月で事実上の退学になった。
理由は花壇を荒らしたとか、授業態度が不真面目だとか、教師の言うことを全く聞かないなど、どれも些細なことだったが、積み重なって問題児となり、丁寧に転校をお願いされた。
仕方なく、退学される心配のない公立の小学校に転校したが、そこでもすぐに呼び出された。
クラスメイトの男児と喧嘩した、ということだったが、その男子児童は登校拒否になっているという。
「その男児にも、原因はあったんです。相川さんのお家のお仕事のことを、からかったようで」
中年の女教師は遠慮がちにそう言葉を濁したが、つまりその男児は、ありすに「おまえの家はヤクザだ」とでも、言ったのだろう。
「相川さんは、彼に、お家の人に言いつけて、裸にして、お腹をすかせた犬に生きたまま食べさせてやる、と…」
教師は恐ろしいものを見るように、ありすを見ながら言った。
「犬に?」
随分残酷な処刑を考え出すと綾瀬は感心したのだが、それは、ありすが実際に目で見た光景だと、後になってわかった。
そういえばありすは犬を異様に怖がった。
小さな愛玩用の犬ですら苦手だった。
綾瀬は、教師の言うことを聞かないとか、男児を虐めたことではありすを怒らなかった。
ただ、「面倒をかけさせるな。それと喧嘩するのに他人の力をアテにするな」と叱った。
***
その夜、銀座のクラブから桐生邸に戻ると、綾瀬は車に同乗していた高谷に「寄っていけ」と言った。
高谷は桐生邸に泊まることは滅多にない。
綾瀬と身体を合わせるのは、もっぱら高谷のマンションだった。
それも最近はご無沙汰だ。
二人きりで酒を飲んで愚痴を言えたせいか、それとも単純に溜まっているせいか、いつになく綾瀬は積極的だった。
部屋に入るとすぐに、高谷をベッドに引きずり込む。
普段はシャワーを浴びてからでないと、触れさせてもくれない。
性急な動作で服を脱がせあい、脱いだ服を次々にベッドの上から下に放り投げる。
全裸になって身体を隙間なく密着させ、濃厚な口付けを交わす。
舌を吸いあうだけで、お互いの性器が硬くなった。
それを押し付けあうように足を絡めた。
高谷は綾瀬の身体中に舌を這わせた。
性器を口に含むと、悩ましい声をあげて、ねだるように腰を浮かせる。
快楽に従順になることをよしとしない綾瀬には、珍しいことだった。
高谷は綾瀬が放出まで、性器を口で嬲った。
「気持ちよかったか」
イッたばかりの綾瀬の耳元に口を近づけて、わざわざそんなことを聞く。
綾瀬は顔を歪めて、息を乱しているくせに「まあまあだ」と、素っ気なく答えた。
「挿れさせろ。もっとよくしてやる」
綾瀬の耳の中に囁くように言って、指で秘部を探る。
人差し指を挿れて、焦らすように中をゆっくり擦る。
それから指を二本に増やして、解すように回しながら、抜き差しをした。
唇は綾瀬の首筋を味わっていた。
「…あっ…あ…はぁ…」
綾瀬は喘ぎながら、高谷の性器に手を伸ばす。
すでに十分硬くなっているものを、指で軽く握って扱いた。
「綾瀬…やめろ、出ちまう」
快感に顔を顰めて、高谷が言う。
「バカ、挿れる前に出すな」
それは、「もう欲しい」という意味だ。
今夜の高谷は正常位で、美しい顔を楽しみながら挿入することにしたようで、綾瀬の身体の上に重なった。
意を汲んで、綾瀬は高谷が挿入しやすいように、脚を広げ膝を曲げた。
繋がるために、自分から脚を広げる綾瀬に満足して、高谷は唇の端をあげて、笑う。
綾瀬は、そんな高谷を睨む。
けれどこんな体勢になってしまってはもはや綾瀬に主導権はなく、そんな目をしてもかえって高谷を喜ばせるだけだった。
綾瀬は、諦めたように、高谷の髪に触れて、「早く、挿れろ」と命令のような懇願をする。
秘部に、性器の先端があてがわれただけで、これから得られる悦楽を期待して、「はぁ…」と息を吐いて、首を反らし目蓋を閉じた。
高谷は少しずつ腰を落とすように綾瀬の中に挿いっていく。
離れていた肉体を繋げる。
この瞬間、受け入れる綾瀬には痛みもある。
痛みに耐えるように、閉じた目蓋が震えている。
けれど、内から前立腺を擦られることによって、痛みを凌駕する快感があった。
形の良い唇が半分開いて、「ああ…」と甘い声が漏れる。
高谷は自身を根元まで納めると、すぐには動かず綾瀬を抱きしめた。
綾瀬も、高谷の背中に腕を回して抱きしめかえす。
快感を得るためだけなら必要のない抱擁に、言葉には出来ない感情が溢れていた。
愛してると云いあったことなど一度もない。
必要がなかった。今までも、これからも。
「どうだ?気持ちいいか」
綾瀬を抱きしめたまま、高谷が聞く。
「これくらいでか。冗談だろ」
綾瀬の口は身体ほど素直ではない。
高谷は笑って、腰を使うために上体を浮かせた。
指と指を絡め合う。
見つめ合うと、引き寄せられるようにまた唇が重なる。
快感の波に乗るように、高谷の腰が動きはじめた。
けれど急がなくてもいい。
大人の夜の愉しみを存分に味わうつもりだった。
***
夜中、高谷は違和感を感じて目を覚ました。
ベッドの中、自分と綾瀬の間にありすが寝ていた。
「お、おい、綾瀬」
驚いて綾瀬を起こすと、綾瀬は不機嫌な顔で高谷を見て、それから、すやすや眠っているありすを見て、「またか」とため息を吐いた。
「またってなんだ。しょっちゅうあるのか」
高谷は滅多にないほど慌てている。
こんなことは想定外だ。
しかし綾瀬はのんびり欠伸をして、「最中に来なくて良かったな」と言う。
高谷も頷いて同意した。
男同士の激しい絡み合いなどを見せたら、「トラウマになるな」と声に出した。
しかし綾瀬は、鼻で笑った。
「ありすが中東で見て来たものは、そんなもんじゃない。生きたままの人間を犬に食わせる処刑や、爆弾で黒焦げになった人間の死体に比べたら、セックスくらいなんでもないだろ」
高谷は咄嗟には言葉が出なかった。
「ありすを変わってると言うが、そんな環境で育って、どうすれば普通になる。もっとも、オレにも普通なんてわからない」
「葉月はなんで、ありすを中東なんかに連れて行ったんだ。母親は、止めなかったのか」
ありすの母親はソフィア・リシャールという名前で、フランスでは有名なジャズシンガーだ。
高谷も写真を見たが、確かにありすによく似ていた。
「その母親だが、今、連絡を取っている」
「連絡?なんのために」
「無論、ありすを引き取るつもりがあるのか、確認するためだ」
「けど、葉月はおまえに託したんだろ。母親のことをあてにできるなら、そもそも中東に連れていかないだろ。もし、その女がありすを引き取ると言ったら、渡すのか」
「ここに置くよりマシだ。ありすは、馴染み過ぎる。葉月の娘を、極道にしたくない」
気が緩んだせいか、綾瀬はぽろっと本音を吐いた。
ありすを真ん中に挟んで、向き合って子供の行く末を相談しあう。
こんな夜が来るとは、考えたこともなかったと高谷は思った。
高谷は、安心して眠っている葉月の娘の寝顔と綾瀬を交互に見て、ふっと笑った。
「悪くないな」
そう言ってみる。
「なにが?」
こんな時間も悪くない、という意味だったが、高谷は違うことを言った。
「子供だよ。可愛いもんだ」
「だったら、おまえも自分の子供をつくればいい」
綾瀬は、あっさりそんなことを言う。
「オレが子供を作っても、おまえが育ててくれるのか」
高谷がとぼけて聞くと、綾瀬は「オレを何だと思ってるんだ」と怒った。
「だいたいオレはありすを育てるつもりなんかない」
綾瀬はこれ以上話はしないというように、寝返りをうって高谷に背中を向けた。
「ありすが自分で選んで極道になるなら、それはそれで運命ってやつだ」
高谷がそう言葉を続けても、しばらく返事がなかったが、やがて呆れたように、
「おまえは運命が好きだな」と言った。
どうやら綾瀬はこのまま眠るつもりらしい。
ありすを部屋に戻そうとはしない。
結局、朝まで三人で川の字で眠った。
高谷の顔を見て、「いいところに来たな。これから銀座に行く。付き合え」と言う。
高谷は呆れた顔を作った。
「毎晩飲み歩いてないで、たまには早く帰って、ありすと一緒に晩飯を食ってやったらどうだ」
綾瀬は高谷の忠告に顔を顰めた。
「オレの子供じゃない。ありすの面倒は見させている」
「寂しがっていると篤郎も言ってたぞ」
「そんなに気がかりなら、おまえが一緒に晩飯を食ってやれ」
とうとう本気で怒ったらしい綾瀬に負けて、高谷は綾瀬と一緒に銀座に行った。
グラスを2杯空けると、やっと綾瀬の口が軽くなった。
「オレに子供の相手は無理だ。子供は何を考えているのか、わからない」
「子供だと思わなければいい。ありすは普通の子供とは、違う」
ありすをテヘランから連れてきた河上が言っていた。
「この子は8才にして、英語、フランス語、日本語、ペルシャ語の4ケ国語を理解しています。並外れて頭のいい子ですが、環境のせいかもともとの性質か、ちょっと変わった子です。もちろん悪い子ではないのですが、学校とか、集団生活がうまく出来るか心配です」
桐生の屋敷には、そもそも「普通の人間」などいない。
社会からはみ出した男たちには、ありすは自然に馴染んで遊び相手にしている。
だが、外からやってくる家政婦には反抗的で、すでに3人、クビにしていた。
綾瀬がそのことを話すと、高谷は「どこかで聞いた話だな」と言って笑った。
ありすが桐生邸に住むようになってから、綾瀬の生活はそれまでと全く変わった。
綾瀬自身はなるべくありすのことを意識の外に置いて、関心も興味もない、というスタンスをとってはいるが、問題は次から次に起きて、否応なしに、ありすの保護者という役回りをさせられる。
ありすは8歳で、日本なら小学2年生ということになる。
綾瀬はコネを使って、ミッション系の私立の小学校にありすを通わせたが、一カ月で事実上の退学になった。
理由は花壇を荒らしたとか、授業態度が不真面目だとか、教師の言うことを全く聞かないなど、どれも些細なことだったが、積み重なって問題児となり、丁寧に転校をお願いされた。
仕方なく、退学される心配のない公立の小学校に転校したが、そこでもすぐに呼び出された。
クラスメイトの男児と喧嘩した、ということだったが、その男子児童は登校拒否になっているという。
「その男児にも、原因はあったんです。相川さんのお家のお仕事のことを、からかったようで」
中年の女教師は遠慮がちにそう言葉を濁したが、つまりその男児は、ありすに「おまえの家はヤクザだ」とでも、言ったのだろう。
「相川さんは、彼に、お家の人に言いつけて、裸にして、お腹をすかせた犬に生きたまま食べさせてやる、と…」
教師は恐ろしいものを見るように、ありすを見ながら言った。
「犬に?」
随分残酷な処刑を考え出すと綾瀬は感心したのだが、それは、ありすが実際に目で見た光景だと、後になってわかった。
そういえばありすは犬を異様に怖がった。
小さな愛玩用の犬ですら苦手だった。
綾瀬は、教師の言うことを聞かないとか、男児を虐めたことではありすを怒らなかった。
ただ、「面倒をかけさせるな。それと喧嘩するのに他人の力をアテにするな」と叱った。
***
その夜、銀座のクラブから桐生邸に戻ると、綾瀬は車に同乗していた高谷に「寄っていけ」と言った。
高谷は桐生邸に泊まることは滅多にない。
綾瀬と身体を合わせるのは、もっぱら高谷のマンションだった。
それも最近はご無沙汰だ。
二人きりで酒を飲んで愚痴を言えたせいか、それとも単純に溜まっているせいか、いつになく綾瀬は積極的だった。
部屋に入るとすぐに、高谷をベッドに引きずり込む。
普段はシャワーを浴びてからでないと、触れさせてもくれない。
性急な動作で服を脱がせあい、脱いだ服を次々にベッドの上から下に放り投げる。
全裸になって身体を隙間なく密着させ、濃厚な口付けを交わす。
舌を吸いあうだけで、お互いの性器が硬くなった。
それを押し付けあうように足を絡めた。
高谷は綾瀬の身体中に舌を這わせた。
性器を口に含むと、悩ましい声をあげて、ねだるように腰を浮かせる。
快楽に従順になることをよしとしない綾瀬には、珍しいことだった。
高谷は綾瀬が放出まで、性器を口で嬲った。
「気持ちよかったか」
イッたばかりの綾瀬の耳元に口を近づけて、わざわざそんなことを聞く。
綾瀬は顔を歪めて、息を乱しているくせに「まあまあだ」と、素っ気なく答えた。
「挿れさせろ。もっとよくしてやる」
綾瀬の耳の中に囁くように言って、指で秘部を探る。
人差し指を挿れて、焦らすように中をゆっくり擦る。
それから指を二本に増やして、解すように回しながら、抜き差しをした。
唇は綾瀬の首筋を味わっていた。
「…あっ…あ…はぁ…」
綾瀬は喘ぎながら、高谷の性器に手を伸ばす。
すでに十分硬くなっているものを、指で軽く握って扱いた。
「綾瀬…やめろ、出ちまう」
快感に顔を顰めて、高谷が言う。
「バカ、挿れる前に出すな」
それは、「もう欲しい」という意味だ。
今夜の高谷は正常位で、美しい顔を楽しみながら挿入することにしたようで、綾瀬の身体の上に重なった。
意を汲んで、綾瀬は高谷が挿入しやすいように、脚を広げ膝を曲げた。
繋がるために、自分から脚を広げる綾瀬に満足して、高谷は唇の端をあげて、笑う。
綾瀬は、そんな高谷を睨む。
けれどこんな体勢になってしまってはもはや綾瀬に主導権はなく、そんな目をしてもかえって高谷を喜ばせるだけだった。
綾瀬は、諦めたように、高谷の髪に触れて、「早く、挿れろ」と命令のような懇願をする。
秘部に、性器の先端があてがわれただけで、これから得られる悦楽を期待して、「はぁ…」と息を吐いて、首を反らし目蓋を閉じた。
高谷は少しずつ腰を落とすように綾瀬の中に挿いっていく。
離れていた肉体を繋げる。
この瞬間、受け入れる綾瀬には痛みもある。
痛みに耐えるように、閉じた目蓋が震えている。
けれど、内から前立腺を擦られることによって、痛みを凌駕する快感があった。
形の良い唇が半分開いて、「ああ…」と甘い声が漏れる。
高谷は自身を根元まで納めると、すぐには動かず綾瀬を抱きしめた。
綾瀬も、高谷の背中に腕を回して抱きしめかえす。
快感を得るためだけなら必要のない抱擁に、言葉には出来ない感情が溢れていた。
愛してると云いあったことなど一度もない。
必要がなかった。今までも、これからも。
「どうだ?気持ちいいか」
綾瀬を抱きしめたまま、高谷が聞く。
「これくらいでか。冗談だろ」
綾瀬の口は身体ほど素直ではない。
高谷は笑って、腰を使うために上体を浮かせた。
指と指を絡め合う。
見つめ合うと、引き寄せられるようにまた唇が重なる。
快感の波に乗るように、高谷の腰が動きはじめた。
けれど急がなくてもいい。
大人の夜の愉しみを存分に味わうつもりだった。
***
夜中、高谷は違和感を感じて目を覚ました。
ベッドの中、自分と綾瀬の間にありすが寝ていた。
「お、おい、綾瀬」
驚いて綾瀬を起こすと、綾瀬は不機嫌な顔で高谷を見て、それから、すやすや眠っているありすを見て、「またか」とため息を吐いた。
「またってなんだ。しょっちゅうあるのか」
高谷は滅多にないほど慌てている。
こんなことは想定外だ。
しかし綾瀬はのんびり欠伸をして、「最中に来なくて良かったな」と言う。
高谷も頷いて同意した。
男同士の激しい絡み合いなどを見せたら、「トラウマになるな」と声に出した。
しかし綾瀬は、鼻で笑った。
「ありすが中東で見て来たものは、そんなもんじゃない。生きたままの人間を犬に食わせる処刑や、爆弾で黒焦げになった人間の死体に比べたら、セックスくらいなんでもないだろ」
高谷は咄嗟には言葉が出なかった。
「ありすを変わってると言うが、そんな環境で育って、どうすれば普通になる。もっとも、オレにも普通なんてわからない」
「葉月はなんで、ありすを中東なんかに連れて行ったんだ。母親は、止めなかったのか」
ありすの母親はソフィア・リシャールという名前で、フランスでは有名なジャズシンガーだ。
高谷も写真を見たが、確かにありすによく似ていた。
「その母親だが、今、連絡を取っている」
「連絡?なんのために」
「無論、ありすを引き取るつもりがあるのか、確認するためだ」
「けど、葉月はおまえに託したんだろ。母親のことをあてにできるなら、そもそも中東に連れていかないだろ。もし、その女がありすを引き取ると言ったら、渡すのか」
「ここに置くよりマシだ。ありすは、馴染み過ぎる。葉月の娘を、極道にしたくない」
気が緩んだせいか、綾瀬はぽろっと本音を吐いた。
ありすを真ん中に挟んで、向き合って子供の行く末を相談しあう。
こんな夜が来るとは、考えたこともなかったと高谷は思った。
高谷は、安心して眠っている葉月の娘の寝顔と綾瀬を交互に見て、ふっと笑った。
「悪くないな」
そう言ってみる。
「なにが?」
こんな時間も悪くない、という意味だったが、高谷は違うことを言った。
「子供だよ。可愛いもんだ」
「だったら、おまえも自分の子供をつくればいい」
綾瀬は、あっさりそんなことを言う。
「オレが子供を作っても、おまえが育ててくれるのか」
高谷がとぼけて聞くと、綾瀬は「オレを何だと思ってるんだ」と怒った。
「だいたいオレはありすを育てるつもりなんかない」
綾瀬はこれ以上話はしないというように、寝返りをうって高谷に背中を向けた。
「ありすが自分で選んで極道になるなら、それはそれで運命ってやつだ」
高谷がそう言葉を続けても、しばらく返事がなかったが、やがて呆れたように、
「おまえは運命が好きだな」と言った。
どうやら綾瀬はこのまま眠るつもりらしい。
ありすを部屋に戻そうとはしない。
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