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第七章≪過去≫
5.夜の児童公園
わたしは、翔平に秘密を打ち明けてしまった。
街燈のささやかな明かりしかない児童公園のベンチに並んで座って、翔平に言った。
兄を、愛していること。
兄もわたしを愛していること。
わたしたちが、兄妹でありながら、恋人同士のような関係だということ。
そして、もしかしたら、兄は幼かったわたしを……。
秘密を打ち明けたせいで、ジュディスを失ったことを思ったけど、たとえ翔平に軽蔑されても、わたしはもう、一人では抱えきれなくなっていた。
翔平は、もちろん驚いたに決まっているのに、ほとんど表情にそれを出さないで、わたしの話を聞いてくれた。
「オレの考えを、言ってもいいか?」
翔平にそう言われて、わたしは覚悟した。
どんな言葉にも、傷ついたりしない。
だって、自分で選んで、翔平に打ち明けたんだから。
「花音と奏さんは、兄妹といっても、長い間、会ってもいなかっただろ。だから、二人が再会して、お互いを、兄妹というより、異性として好きになるっていうのは、わかる気がするっていうか、あんまり、不思議じゃないんだ」
「え?」
わたしは驚いて、間の抜けたような顔をしてしまったみたい。
だって翔平が、わたしの顔を見て笑った。
「それに、そのことは、なんとなく、そうなんじゃないかなって、思ってた」
「嘘!?どうして」
「嫌なことを思い出させちゃうけど、あのとき、オレにしがみつきながら、花音はお兄ちゃんお兄ちゃんって、必死で呼んでて、なんていうか、絆の深さがわかったんだ。あと、あのときは奏さんの憔悴もヤバかったんだ」
「お兄ちゃんが?」
「花音は自分のことで精一杯だったから、知らなくてもしょうがないよ。奏さんは何日も寝てなかったと思う。倒れないのか不思議だった」
警察の取り調べや学校のこと、兄は、わたしを表に出さないように、一人で処理してくれたと、翔平は教えてくれた。
「花音、奏さんに、約束させただろ?あいつに、復讐しないように。それ、正解だった。その約束がなかったら、奏さん、あいつを殺してたかもしれない」
翔平のその言葉に、わたしは胸を撫で下ろした。
よかった、と思った。
「すごい強い愛だと思ったよ。でも、奏さんのそれは、肉親の愛情とはちょっと違うような気もしたんだ。なんて言うんだろう、独占欲、っていうか、執着?そういう種類の、愛情を」
「うん…」
「二人が愛し合っているってことは、いいんだ。それは、二人だけの問題だと思う。だけど、もし花音が小さい頃に、そういうことをしたのなら、オレは、許せない。そんな卑劣なことをしといて、今更、好きだとか、ふざけんなって思う」
「そう、だよね…」
「でも、花音は覚えてないのか?普通、8歳とか9歳なら、ある程度は記憶に残っていると思うけど」
「それが、全然、覚えてないんだ。最近、そんな夢を見るってだけなの」
「ほかのことも?花音は自分が小さかった頃のこと、奏さんと一緒に住んでいたときのことは?」
「ぼんやりとしか、覚えてない」
そう言われると、たしかに変だ。
わたしの記憶は、あまりに曖昧だ。
「団地に引っ越してきたのは、9歳の時だったよな。それまでは、どこに住んでいたんだ?」
「えっと、神奈川のどこか」
「なんだか、頼りない答えだな」
翔平は苦笑して、少し考えてから、言った。
「花音、行ってみないか?花音が、小さい頃、住んでた家に」
思ってもいなかった提案だった。
「わたしが、住んでいた家…」
なんでもいいから、手がかりが欲しかった。
その時、わたしは自分が何を探しているのか、少しもわかっていなかった。
街燈のささやかな明かりしかない児童公園のベンチに並んで座って、翔平に言った。
兄を、愛していること。
兄もわたしを愛していること。
わたしたちが、兄妹でありながら、恋人同士のような関係だということ。
そして、もしかしたら、兄は幼かったわたしを……。
秘密を打ち明けたせいで、ジュディスを失ったことを思ったけど、たとえ翔平に軽蔑されても、わたしはもう、一人では抱えきれなくなっていた。
翔平は、もちろん驚いたに決まっているのに、ほとんど表情にそれを出さないで、わたしの話を聞いてくれた。
「オレの考えを、言ってもいいか?」
翔平にそう言われて、わたしは覚悟した。
どんな言葉にも、傷ついたりしない。
だって、自分で選んで、翔平に打ち明けたんだから。
「花音と奏さんは、兄妹といっても、長い間、会ってもいなかっただろ。だから、二人が再会して、お互いを、兄妹というより、異性として好きになるっていうのは、わかる気がするっていうか、あんまり、不思議じゃないんだ」
「え?」
わたしは驚いて、間の抜けたような顔をしてしまったみたい。
だって翔平が、わたしの顔を見て笑った。
「それに、そのことは、なんとなく、そうなんじゃないかなって、思ってた」
「嘘!?どうして」
「嫌なことを思い出させちゃうけど、あのとき、オレにしがみつきながら、花音はお兄ちゃんお兄ちゃんって、必死で呼んでて、なんていうか、絆の深さがわかったんだ。あと、あのときは奏さんの憔悴もヤバかったんだ」
「お兄ちゃんが?」
「花音は自分のことで精一杯だったから、知らなくてもしょうがないよ。奏さんは何日も寝てなかったと思う。倒れないのか不思議だった」
警察の取り調べや学校のこと、兄は、わたしを表に出さないように、一人で処理してくれたと、翔平は教えてくれた。
「花音、奏さんに、約束させただろ?あいつに、復讐しないように。それ、正解だった。その約束がなかったら、奏さん、あいつを殺してたかもしれない」
翔平のその言葉に、わたしは胸を撫で下ろした。
よかった、と思った。
「すごい強い愛だと思ったよ。でも、奏さんのそれは、肉親の愛情とはちょっと違うような気もしたんだ。なんて言うんだろう、独占欲、っていうか、執着?そういう種類の、愛情を」
「うん…」
「二人が愛し合っているってことは、いいんだ。それは、二人だけの問題だと思う。だけど、もし花音が小さい頃に、そういうことをしたのなら、オレは、許せない。そんな卑劣なことをしといて、今更、好きだとか、ふざけんなって思う」
「そう、だよね…」
「でも、花音は覚えてないのか?普通、8歳とか9歳なら、ある程度は記憶に残っていると思うけど」
「それが、全然、覚えてないんだ。最近、そんな夢を見るってだけなの」
「ほかのことも?花音は自分が小さかった頃のこと、奏さんと一緒に住んでいたときのことは?」
「ぼんやりとしか、覚えてない」
そう言われると、たしかに変だ。
わたしの記憶は、あまりに曖昧だ。
「団地に引っ越してきたのは、9歳の時だったよな。それまでは、どこに住んでいたんだ?」
「えっと、神奈川のどこか」
「なんだか、頼りない答えだな」
翔平は苦笑して、少し考えてから、言った。
「花音、行ってみないか?花音が、小さい頃、住んでた家に」
思ってもいなかった提案だった。
「わたしが、住んでいた家…」
なんでもいいから、手がかりが欲しかった。
その時、わたしは自分が何を探しているのか、少しもわかっていなかった。
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