地球防衛軍!

フジキフジコ

文字の大きさ
7 / 49
【第一部】戦士誕生

7.サイキックソルジャー

しおりを挟む
「おい、おまえ」
次の朝、朝食を食べ終わったあと、廊下で終夜タケルに呼びとめられて、千里は身構えた。
「な、なんですか」
「ちょっと言っておきたいことがある」

壁にもたれかかり、腕を組んで立っている終夜の姿はサマになっていて、確かに無敵のヒーローに近いイメージがある。
しかし、黙って立っていればの話だ。
昨日、妃咲涼に「ヤラせろ」と迫っていたことを思い出して千里は身震いした。
なんとしても貞操だけは守らねば。
「誰がてめーなんか犯すかっ、バカ!」
心の中を読まれて、千里はギクッとする。
剣といい彼といい、どうもここの人間は勘が良過ぎてやりずらい。

「前のグリーンの話を聞いたか」
「郵便局で怪我をして逃げたって…」
「その前のグリーンだ」
千里は首を振った。
「オレがボコボコにして追い出してやったんだよ」
「な、な、なんでですか」
不穏なことを言われて、千里はビクビクする。
「ブルーにセクハラしやがったから」
千里はきょとんと、した。
要するに「オレのブルーに手を出すな」と言うことが言いたいらしい。
「オ、オ、オレはホモじゃありませんから!ホモじゃ!ホモじゃないですから!」
終夜は嫌な表情で千里を睨む。
「ホモホモ言うな。オレだってべっつにホモじゃねえーよ」
「えっ。だって、昨日、ブルーのこと…」
「あいつだけだ。あいつ以外の男には興味ねーの」

ダン!と千里の耳の側の壁に片手をついて、ビックリした千里が壁に背中をつけると、終夜はにっこり微笑して、千里の顎に手をかけた。
それからゆっくりと顔を近づけてくる。
「もっともおまえがそんなに興味があって、どうしてもカマ掘って欲しいつーなら、協力してやらないこともないぜ?あん?」
キス寸前のところでそう言われ、ヒィイイと喉の奥で悲鳴をあげて千里は首を振った。
たとえ男でもこれほど綺麗な顔で迫られたら間違いをおかしかねない。
万が一その気になってしまったら一生の不覚だ。

「ひぃー!ごめんなさい、ごめんなさい!」
「あ、終夜が新入り苛めてる」
足音が近付いて、終夜はチラッと後ろを見た。
「九郎」
九郎は標本にされた虫のように壁に張りついて身動きの出来ない千里に近付いて、千里の厚い胸板を指で突付いた。
「ほんと、いい身体してるよね。終夜、飽きたら僕にも貸してよ」
うわ~ん、やっぱりここはホモの巣窟だった!
なにが防衛軍だあ!絶対逃げてやる!
千里は心の中で泣き叫んだ。




***




結局、二人で苛めているところを涼に見つかって、終夜と九郎は涼に散々怒られた。
二人が怒られているところを、ザマーミロと思いながら見ていた千里は、改めて妃咲涼という男がこのグループのリーダーであることを納得した。
見かけだけなら、終夜のが強そうだし、個性なら九郎のが際立っている。
けれど妃咲涼には他人にはない風格というか気品というか、要するに魅力がある。
少し影があるところも人の関心を引く。
それでいてあの美貌なのだから、男でもお近付きになりたくなる気持ちは少し理解できる。
そう考えていたらいつのまにか終夜にじっと睨みつけられていて、千里は慌てて首を振った。
嘘です嘘です、ブルーには近付きません。




「翠川千里。さっそくだが、訓練だ」
千里は基地の裏手の草むらに連れてこられた。
メンバーは全員が揃っている。
「剣、手本を見せてやれ」
「OK」
涼に言われて、剣が他のメンバーよりも一歩前に出た。
十メートルくらい先に、脚のついた長方形の台がある。
その上に等間隔に並んだ、空缶が置かれていた。
要するに、あれを撃てってことだろうなあ、と千里がそう思った瞬間に、カンカンカンと音がして、空缶が次々に台の上から倒れて落ちた。

「すっ、スゲエ!剣くん、すごいね!」
命中率百%に興奮して千里は叫んだ。
それから、剣を見た。
しかし、なにかが変だった。
剣はそこに立っている。
しかし、その手にはなにも持っていないのだ。
そういえば、カンカンカンという音は缶が落ちるときに台にぶつかった音で、弾が缶に当たった音や銃声はまったく聞えなかった、ような気がする。
そもそも銃声といっても、剣は銃なんか持ってない。
銃を持ってない?

「えーっ?!な、な、な、なんでっ?!」
他の三人はとくに驚いた様子もなく、退屈そうに見物してる。
「剣、もう1回見せてやれ。九郎」
涼に言われて九郎が「はいはい」と言いながら、缶を元の位置に戻しにいく。
千里は目を見開いて、剣を見ていた。
剣は右手を地面と平行に上げた。
なにも持っていない手の平が標的を向いている。
千里の目にはやはり何も見えない。
けれど缶はまたしても倒れた。一つ残らず、全部。

「うっそ、どんな仕掛けなの、これ?」
「仕掛けなんかない。サイコキネシス、念動力だ」
「ねんどうりき?」
「地球防衛軍のメイン構成員は全員、サイキックソルジャーだ。翠川千里、おまえもだ」
サイキックソルジャーって?
それって、もしかして、超能力者ってこと?
うっそ、マジ?
結論。やっぱりこの人たちはおかしい。今すぐ逃げよう。
さようなら。

「ざ、残念ながら僕には超能力なんかありません。スプーンも曲げたことないんです。お門違い、いえ期待ハズレですみません!さようなら!」
慌てて謝りながら、背中を見せるのは怖いので後ろ向きで後退していく千里に、妃咲涼が不敵に微笑んだ。
「おまえが見た求人広告だが。普通の人間には見えないようになってるんだ。潜在能力のある、特別な人間にしかな」
「ま、そういうワケだ。せいぜい、おまえの能力の開発には協力してやるよ。オレたちも戦力不足で過剰労働なんでね、一人でも仲間は多い方がいいしよ。おい、千里、逃げんなよ」
終夜にそう言われて千里は悲鳴を上げた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

処理中です...