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カラダの恋人【第一部】
12.間宮秋一の告白
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気がついたら、窓の外には音もなく雪が舞っていた。
時計を見ると、約束の時間から少し遅れている。
さすがにクリスマスイブで客が多く、ラストオーダーから最後の客が帰るまでいつもより遅くなってしまった。
もしかすると間宮が外で待っているかもしれないと思い、急いで店の片付けをすませ外に飛び出した。
案の定、間宮はコートの肩の上にうっすらと雪を積もらせて立っていた。
「間宮!なにやってんの、風邪引くぞ。中に入ってくればよかったのに」
呼びかけると、振り返った間宮はなぜか嬉しそうに微笑っている。
手のひらに小さな雪だるまを乗せていた。
「佐倉君に、プレゼント。メリークリスマス」
差し出した間宮の、手袋もしていない指が赤くなっている。
「馬鹿!なにやってるんだよ。指、こんなにして」
驚いてオレは咄嗟に間宮の両手を握って、自分の口許に引き寄せ息を吹きかけた。
「佐倉君、雪だるま溶けちゃうよ」
オレはしょうがないなあって顔で小さなそいつを受け取って、とりあえず足元に置いた。
「間宮、こんなことするなよ。大事な指だろ?おまえには」
「僕の指が?何もできないよ?」
「ピアノを弾くことが出来るじゃないか」
あんなに綺麗な、魔法のような音が出せるじゃないか。
「ありがとう。でもね、僕は料理をテーブルに並べたり窓ガラスを拭いたりする佐倉君の指のが好きだよ」
「え?」
オレは、間宮の両手を自分の両手に包んだまま、不思議なことを言う間宮を見上げた。
「去年の冬にね、このレストランに来て、君を見たんだ。調度、ピアノを続けようかやめようか悩んでいる時だった。足元に池が見える席に一人で座った僕に、君は温かいスープを運んでくれた」
「客に料理を運ぶのはオレの仕事なんだから、当たり前だろ」
「でもね、とても優雅な手つきと、心に残る素敵な笑顔だった。次の日、店の前を通りかかったら、君が窓ガラスを拭いていたんだ。どうしてだろね、君のことずっと忘れられなくて、大学で君に逢ったとき、すぐに君だってわかった。再会出来て、とても嬉しかったんだ」
そんなふうに自分の知らないところで自分のことを見ていたと言われて、オレは何て言っていいかわからなくて戸惑った。
「佐倉君、こういう気持ちを何て言うか知ってる?」
ふと、冷たい空気が和らいだと思ったら、間宮の長いコートの中に身体ごと包まれていた。
なに?と聞こうとして、思い切り顔をあげると間宮の顔が近づいてきて、不意に唇が触れた。
冷たい空気の中で触れた唇も冷たくて、息だけが熱かった。
結局オレたちはそれからどこかに出かけるのはやめた。
なんとなく気まずくて、どうにも目も合わせずらいような状態で遊びに行く気になれなくて。
間宮はオレを部屋の前まで送ってくれた。
一人の部屋でベッドに寝転びながら間宮のことを考えてみた。
好きだよ、ってあいつは言った。
重なった唇が離れて、まだ息が触れ合う場所にあるとき。
オレも多分、間宮のことは嫌いじゃない。
間宮の側は、居心地がいい。
そういう人間はそう多くない。
けどその気持ちが恋かって言われると、違うって気がする。
なんとなく目を閉じたら不意に瞼の裏に紺野の顔が浮かんで、オレは慌てて身体を起こして、頭を冷やすために窓を開けた。
そしたらなんと粉雪の舞う道を、その紺野がフラフラ歩いている。
「紺野!なにやってんだよ、おまえ」
紺野ははっとしてオレを見上げて、バツの悪さを隠すようにオレに向かって手を振った。
時計を見ると、約束の時間から少し遅れている。
さすがにクリスマスイブで客が多く、ラストオーダーから最後の客が帰るまでいつもより遅くなってしまった。
もしかすると間宮が外で待っているかもしれないと思い、急いで店の片付けをすませ外に飛び出した。
案の定、間宮はコートの肩の上にうっすらと雪を積もらせて立っていた。
「間宮!なにやってんの、風邪引くぞ。中に入ってくればよかったのに」
呼びかけると、振り返った間宮はなぜか嬉しそうに微笑っている。
手のひらに小さな雪だるまを乗せていた。
「佐倉君に、プレゼント。メリークリスマス」
差し出した間宮の、手袋もしていない指が赤くなっている。
「馬鹿!なにやってるんだよ。指、こんなにして」
驚いてオレは咄嗟に間宮の両手を握って、自分の口許に引き寄せ息を吹きかけた。
「佐倉君、雪だるま溶けちゃうよ」
オレはしょうがないなあって顔で小さなそいつを受け取って、とりあえず足元に置いた。
「間宮、こんなことするなよ。大事な指だろ?おまえには」
「僕の指が?何もできないよ?」
「ピアノを弾くことが出来るじゃないか」
あんなに綺麗な、魔法のような音が出せるじゃないか。
「ありがとう。でもね、僕は料理をテーブルに並べたり窓ガラスを拭いたりする佐倉君の指のが好きだよ」
「え?」
オレは、間宮の両手を自分の両手に包んだまま、不思議なことを言う間宮を見上げた。
「去年の冬にね、このレストランに来て、君を見たんだ。調度、ピアノを続けようかやめようか悩んでいる時だった。足元に池が見える席に一人で座った僕に、君は温かいスープを運んでくれた」
「客に料理を運ぶのはオレの仕事なんだから、当たり前だろ」
「でもね、とても優雅な手つきと、心に残る素敵な笑顔だった。次の日、店の前を通りかかったら、君が窓ガラスを拭いていたんだ。どうしてだろね、君のことずっと忘れられなくて、大学で君に逢ったとき、すぐに君だってわかった。再会出来て、とても嬉しかったんだ」
そんなふうに自分の知らないところで自分のことを見ていたと言われて、オレは何て言っていいかわからなくて戸惑った。
「佐倉君、こういう気持ちを何て言うか知ってる?」
ふと、冷たい空気が和らいだと思ったら、間宮の長いコートの中に身体ごと包まれていた。
なに?と聞こうとして、思い切り顔をあげると間宮の顔が近づいてきて、不意に唇が触れた。
冷たい空気の中で触れた唇も冷たくて、息だけが熱かった。
結局オレたちはそれからどこかに出かけるのはやめた。
なんとなく気まずくて、どうにも目も合わせずらいような状態で遊びに行く気になれなくて。
間宮はオレを部屋の前まで送ってくれた。
一人の部屋でベッドに寝転びながら間宮のことを考えてみた。
好きだよ、ってあいつは言った。
重なった唇が離れて、まだ息が触れ合う場所にあるとき。
オレも多分、間宮のことは嫌いじゃない。
間宮の側は、居心地がいい。
そういう人間はそう多くない。
けどその気持ちが恋かって言われると、違うって気がする。
なんとなく目を閉じたら不意に瞼の裏に紺野の顔が浮かんで、オレは慌てて身体を起こして、頭を冷やすために窓を開けた。
そしたらなんと粉雪の舞う道を、その紺野がフラフラ歩いている。
「紺野!なにやってんだよ、おまえ」
紺野ははっとしてオレを見上げて、バツの悪さを隠すようにオレに向かって手を振った。
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