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08騎士の願いごと①
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ルイの王宮での暮らしは単調だ。
ベッドから起き上がったら、すぐに身だしなみを整えに洗面台へ向かう。小一時間をかけて肌や髪に潤いを与え、故郷から持ち込んだ万能クリームと香油を塗りたくる。
朝食は日によって食べる日と食べない日がある。気だるい時には食事を抜いて、自室をさっさと出ていくことも。侍女からすると健康を気にして食事をしてほしいところだが、「私は動かないから」とルイは体型を理由に断ってくる。綺麗な肢体がよく映える、彼のスタイルの維持はこのようなところから来る。
ルイは王宮で働く従者たちとは仲が良い。そのため朝はもっぱら彼らと世間話をして盛り上がる。勤務前の目の保養にちょうどいいと、ルイの周りには男女問わずに人が集まる。
衛兵や侍従女官にはお世話になっているからと、彼らに日用品や故郷の品をプレゼントしたりする。交流には気を遣い始めた彼なので、この点には余念がない。
正午前になると、図書館で読書をしたり持参金についての帳簿をまとめたりする。自室のお菓子のストックが切れていれば、そちらの補充を優先する。厨房の一部を貸し切って、侍女たちと共に、あっという間に焼き菓子を作ってみせてしまう。
「おすそ分けに来ました」
「やったぁーールイ様のほどこし!!大好きですーー」
これもまた従者たちにあげると喜ばれるので、ルイは余分にお菓子を作ることとしている。
昼下がりには軽食をとってから、中庭の方へと足を運ぶことが多い。王宮の内部にそなえられた運動場のようなところで、日光浴をしたり、読書を徒然とするようにぜいたくできる。
また、王家の子どもたちが鍛錬に使用していることもある。それを期待して出向いているわけではないが、同世代の王子たちがどのように力を向上しているのか観察することもあった。
「ルイ様ですか?」
「これは、ロイド殿下」
ルイはその姿を見て会釈した。レオポルドの兄で、第二王子のロイド。長男ほどではないが体格に恵まれており、目元の彫りが誰よりも深い。
また16歳とは思えないほどに思慮深いと聞く。女性たちが好きそうな洗練された印象で、ひとり黙々と運動をしているだけでも華がある。まさしく文武両道を絵に描いたような少年である。
「レオポルドは元気にしていますか」
会うたびにロイドは、弟レオポルドの調子を尋ねてくる。王族のなかでも彼はルイに対して好意的だ。
「ええ、元気すぎるといいますか。いつも外を無邪気に走っていますよ」
「もっとあの活力を勉強に分けてほしいところです」
ふだん、兄弟で接する機会はあまり無いようである。兄弟といえど16歳と10歳の年齢の開きがあり、話題もそれぞれ違う。一緒にいてもどちらかが気を遣うのが目に見えている。
「学校に入ったら、レオポルドも変わってくれるでしょう」
ロイドの呟きにルイは確かにと相槌を打った。王侯貴族の子どもは11歳になると王立学校に入学するのが決まりとなっている。もちろん、レオポルドもその例外ではない。
他の兄たちと同様に、勉強と鍛錬まみれの日々が待っている。レオポルドの忙しい学校生活ももうじき。「楽しみだ」と幼い彼自身が胸をときめかせていたことを、ルイはこっそり思い出していた。
「あいつの良き話し相手でいてやってください。よろしくお願いします」
屋内に戻ろうとする王子に向かって、ルイはもう一度深く頭を下げた。ロイド王子も日々に追われているのだとわかる。かつてレオポルドがひとりで心細い思いをしていたが今なら理解できる。この王宮で10歳前後の男の子といったら、レオポルド以外は見たことがないからだ。
ロイド王子が出ていったあとの中庭は、穏やかな風が続いて居心地が良かった。王子のお付きの従者だけでも10人以上いる。あんなに人が多いと、どこにいても落ち着かなさそうだ。
「おーい、ルイーーーーここにいたのかーー」
ばたばたと奥から少年の声と足音がしてくる。兄と入れ替わるように今度はレオポルドが来たらしかった。
ベッドから起き上がったら、すぐに身だしなみを整えに洗面台へ向かう。小一時間をかけて肌や髪に潤いを与え、故郷から持ち込んだ万能クリームと香油を塗りたくる。
朝食は日によって食べる日と食べない日がある。気だるい時には食事を抜いて、自室をさっさと出ていくことも。侍女からすると健康を気にして食事をしてほしいところだが、「私は動かないから」とルイは体型を理由に断ってくる。綺麗な肢体がよく映える、彼のスタイルの維持はこのようなところから来る。
ルイは王宮で働く従者たちとは仲が良い。そのため朝はもっぱら彼らと世間話をして盛り上がる。勤務前の目の保養にちょうどいいと、ルイの周りには男女問わずに人が集まる。
衛兵や侍従女官にはお世話になっているからと、彼らに日用品や故郷の品をプレゼントしたりする。交流には気を遣い始めた彼なので、この点には余念がない。
正午前になると、図書館で読書をしたり持参金についての帳簿をまとめたりする。自室のお菓子のストックが切れていれば、そちらの補充を優先する。厨房の一部を貸し切って、侍女たちと共に、あっという間に焼き菓子を作ってみせてしまう。
「おすそ分けに来ました」
「やったぁーールイ様のほどこし!!大好きですーー」
これもまた従者たちにあげると喜ばれるので、ルイは余分にお菓子を作ることとしている。
昼下がりには軽食をとってから、中庭の方へと足を運ぶことが多い。王宮の内部にそなえられた運動場のようなところで、日光浴をしたり、読書を徒然とするようにぜいたくできる。
また、王家の子どもたちが鍛錬に使用していることもある。それを期待して出向いているわけではないが、同世代の王子たちがどのように力を向上しているのか観察することもあった。
「ルイ様ですか?」
「これは、ロイド殿下」
ルイはその姿を見て会釈した。レオポルドの兄で、第二王子のロイド。長男ほどではないが体格に恵まれており、目元の彫りが誰よりも深い。
また16歳とは思えないほどに思慮深いと聞く。女性たちが好きそうな洗練された印象で、ひとり黙々と運動をしているだけでも華がある。まさしく文武両道を絵に描いたような少年である。
「レオポルドは元気にしていますか」
会うたびにロイドは、弟レオポルドの調子を尋ねてくる。王族のなかでも彼はルイに対して好意的だ。
「ええ、元気すぎるといいますか。いつも外を無邪気に走っていますよ」
「もっとあの活力を勉強に分けてほしいところです」
ふだん、兄弟で接する機会はあまり無いようである。兄弟といえど16歳と10歳の年齢の開きがあり、話題もそれぞれ違う。一緒にいてもどちらかが気を遣うのが目に見えている。
「学校に入ったら、レオポルドも変わってくれるでしょう」
ロイドの呟きにルイは確かにと相槌を打った。王侯貴族の子どもは11歳になると王立学校に入学するのが決まりとなっている。もちろん、レオポルドもその例外ではない。
他の兄たちと同様に、勉強と鍛錬まみれの日々が待っている。レオポルドの忙しい学校生活ももうじき。「楽しみだ」と幼い彼自身が胸をときめかせていたことを、ルイはこっそり思い出していた。
「あいつの良き話し相手でいてやってください。よろしくお願いします」
屋内に戻ろうとする王子に向かって、ルイはもう一度深く頭を下げた。ロイド王子も日々に追われているのだとわかる。かつてレオポルドがひとりで心細い思いをしていたが今なら理解できる。この王宮で10歳前後の男の子といったら、レオポルド以外は見たことがないからだ。
ロイド王子が出ていったあとの中庭は、穏やかな風が続いて居心地が良かった。王子のお付きの従者だけでも10人以上いる。あんなに人が多いと、どこにいても落ち着かなさそうだ。
「おーい、ルイーーーーここにいたのかーー」
ばたばたと奥から少年の声と足音がしてくる。兄と入れ替わるように今度はレオポルドが来たらしかった。
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