ネコ耳ばすた~ず 1

七海玲也

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第一章 女王の婚約者

業を背負った伝承者

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 朝日が部屋に差し込んでいる。
 用意されていた服に着替え、窓の外を眺めているとドアを叩く音がした。
 どうやら迎えが来たらしい。

「女王陛下よりレイヴ殿を鍛えるようにと仰せつかり、お迎えに参りました」

「あぁ、宜しく頼む。
 準備は出来ているから早速行こうか。
 それと、かしこまった言い方は止めてくれ」

「かしこまりました。
 では、闘技場へ案内します。
 私はアルバート。
 今日から宜しくお願いします」

 握手を交わし、闘技場とやらに案内してもらう。
 円形になっている闘技場では騎士達が訓練に励んでいた。

「闘技祭では本物の剣で望んで頂くのですが、慣れるまでは木製でやりましょう」

「そうしてくれ。
 持ち方からお願いするよ」

 こうして剣の扱い方を一から教えて貰った。
 特に難しいとは感じず基本動作なら大分形になってきた。

「流石です。
 旅をしているだけあってこういったことは飲み込みが早いですね。
 少し休憩しましょうか」

「そうしてくれ。
 いくら飲み込みが早いと言われても慣れてない事は疲れるよ」

 壁際に移動するとアルバートが飲み物を放ってよこした。

「ありがとう、助かるよ。
 闘技祭ってのはどの位やれればいいんだ?」

「そう、ですね。
 私に一度でも勝てるようになれば充分かと思いますよ。
 流石に、伝説の剣士ヴァイオレットのような相手はいませんから」

 ヴァイオレット……どこかで聞いた名だが。

「知りませんか?
 伝説の剣士、五人の言い伝えですよ。
 真紅の女王の名は知られていますが、最後の一人、ヴァイオレットは騎士の間でしかあまり知られていませんからね」

「最後の一人とは業を背負ったとかいう」

「そうです。
 伝承には剣士なのか魔術師なのか何も伝えられていませんが、彼は神に仇なした剣士なのです。
 業とは仇なした罪として不老不死、つまり死ねない体になったらしいです」

「ということは、今も生きているのか?」

「そのようですよ、会ったことはありませんがね。
 誰にも負けたこともなく、不死でなくても敵う者はいないと言われるくらいの強さらしいです。
 髪が紫色だったら気をつけたほうが良いですよ」


 アルバートが笑いながら言うところをみると信じてはいないのだろう。
 確かに噂話など尾ひれが付いて伝わるものだ。

 しかし、紫色の髪で剣士とは何か気になる。
 会ったことがあるような。

「さて、始めましょうか。
 ヴァイオレットに敵うくらい鍛えて差しあげますよ」




 どれだけの間交えていたのか酷く疲れた。
 部屋に戻るとシャワーへ直行するほどだった。
 思い通りに動かない体でのんびりと汗を流していると誰かが訪ねてきた。

「ちょっ、ちょっと!
 服着てにゃ!」

 タオル一枚で出たのがまずかったらしい。
 一瞬にして背を向けたミィが恥ずかしがっているのが手に取るように分かる。

「あ、いや。
 うん、ちょっと待て。
 すぐ着るから」

 着替えた後、訪ねて来た理由を聞いてみると、昨晩頼んでいたことの経過だった。

「やっぱり怪しいにゃ。
 まだ色々と聞いてみるけど用心に越したことはないかにゃ。
 わたしの正体もまだバレてないみたいだし」

「そうか、無茶はするなよ。
 人猫ワーキャットだと知れたらどうなるか分からないからな」

 そう話すと腰に手を当て鼻を鳴らす。

「ふふん。
 これでもちゃんと作戦を立てながら行動してるにゃ」

 どんな作戦なのかは特に聞こうとはしない。
 ミィのことだ、作戦と呼べるほど大層なことはしていないだろう。

「じゃあ、それで頼んだ。
 オレはもう寝るよ」

「そうなの?
 ん~じゃあ行くにゃ。
 レイヴも頑張るにゃ」

 遊んで欲しかったのか、少し寂しい表情もしたが元気に出て行ってくれた。
 ルニとリズの姉妹もいる分、安心してミィと離れて居られる。
 ベッドに潜り込み眠りにつこうかとした矢先、ルニとリズのことから思い出した。

 話にあった剣士、ヴァイオレットと思わしき人物と会っていたことを。
 あれは姉妹と出会う直前、追っ手から逃げる為に下水道から出た後のことだ。

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