上 下
7 / 26

6

しおりを挟む
「脅迫や誘拐?」

随分と物騒なことだ。
とはいえ、世界観的にはよくあるファンタジーの中世ヨーロッパ風、いわゆる「ナーロッパ」な世界観だから貧富の差もスラムも悪徳領主もテンプレは一通りそろっていた覚えがある。
ゲームの世界であればプレイヤーは自分で判断してやりたいことをできるかもしれないが、実際の世界であれば権力をかさに着て有能なエイドーロンを道具のように使う貴族が出ても不思議ではない。

「ええ。厳しい取り締まりの目をくぐってエイドーロンを良いように扱おうとする商人や貴族が後を絶たないわ。…セシルも、エイドーロンの知識を得たおかげで多少の理性は得ただろうけど気を付けなさい。」

多少の理性…ひどい言い方だなママン…

それからしばらく、この世界でも博識と呼ばれるであろう部類の母から、エイドーロンとこの世界の仕組みについて聞き、自身の知識とのすり合わせを行った。
まず、この世界では15歳になると5つの公国の中央、皇帝直轄領にある全寮制学院、通称学園と呼ぶ、ヴァイナモイネン貴族学院に通うこと。
私はあと1週間ほどで領地を出て向かう手はずになっているらしい。
…若い見た目だなぁと思っていたら、アラサーからJKになっていたのか。
まぁ、学園チュートリアル前っぽい?と思っていた予想が当たったということだろう。
乳児からのやり直しは恥じらいとか色々大変だし、かといっていきなり成人した状態の転生も事情把握がキツイから、正直ベストなタイミングなんじゃないだろうか。
…とはいえ、ゲームは遊べればいい!との考えから学園チュートリアルをスキップしまくりで進めた私は、どんな内容があるのかいまいちわかっていない。
じっくり遊べば学園チュートリアルだけで3か月近く遊べるらしい、と評判の作り込み具合だったので、やっておかなかった過去が悔やまれる。
ちなみに、エイドーロンとして覚醒するタイミングについて統計が取られたことがあるらしいが、やはり学園入学前の方が多いそうだ。
とはいえ、大人になってから覚醒したり、かなり早い段階から覚醒していたり、というケースもないわけではないらしい。
エイドーロンとして覚醒していてもそのことを悟られずに成長し、自領に帰ってから公開して一気に領地を発展させる強者もいないわけではないそうだ。
また、ゲームで人気だった「使い魔システム」も実在するらしい。
これは見た目と若干性格等に自分の性癖を突っ込みまくった独自の「使い魔」を作成できるシステムだ。
学園チュートリアルを終えた後にシステムが候補として出すいくつかの悪魔や魔物、妖精、天使などをカスタマイズして、結婚さながらの契約を結ぶことができるのだ。
ただし、両想いになって激アマ生活を送れるのか、あくまで能力行使時のビジネスパートナーになるのかは魔力やステータス、親密度次第。
…というのは名ばかりの運営にどれだけ貢いだか次第で決まっていた。
こちらの世界は卒業式直前に召喚の儀があり、卒業パーティー後にお披露目をする、というのが学園の習わしらしい。
うーん、ちょっと学園に行くのが楽しみになってきた。
しおりを挟む

処理中です...