黒見山の魔女が消えた日

片上尚

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消えた一人目

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都さんの部屋は鍵がかかっていたが、作りはほとんど怜さんの部屋と一緒だった。
ただ、こちらの机は仕事のものと思われる資料が山積みになっており、書棚には分厚いファイルが並んである。
怜さんが各所を調べている間、立花はやはり部屋の隅で見ていたのだが、書棚に気になるものを見つけた。

「怜さん、これ、さっきのに似てませんか?」

そう、書庫で見つけた手書きの魔法についての資料に似ているのだ。

「え、これ…」

怜さんも驚いているようだ。
中を開いて見せてもらうと、やはり魔法についてと思わしき内容が、几帳面な文字でびっしりと並んでいる。

「都姉さんも私とおなじで、魔法には興味無いと思っていたのですが…」

そう言いながら渡されたノートのページをパラパラとページをめくっていく。
最後のページには30年ほど前の日付がメモしてあった。
つまりおそらく、これは梓さんたちの母親が書いたものであろう。
書庫で見つけたノートも最後のページを確認すると、都さんの部屋にあったものよりさらに2年ほど古い日付となっていた。

立花が探していた場所には、最初の1冊しかなかったということは、もしかして複数冊あったものを持ち出している人がいる…?

「母は、こんな風に魔法についてまとめていたんですね。」

怜さんが感慨深そうに言う。

「もしかしたら梓姉さんの部屋にもあるかもしれません。魔法の資料をたくさん部屋に持ち込んで研究していたようなので…」

そう。梓さんの部屋は以前の取材で入った際も本だらけだったのだ。
もしかしたらもっと詳しい資料があるのかもしれない。
ついついノートに集中しがちになってしまう私に対し、怜さんが

「やっぱり、恭介さんはいないみたいなので、梓姉さんの部屋も確認しましょう。」

と声をかけドアを開けようとした瞬間、大きな雷の音がして、部屋の明かりが消えた。
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