水曜日の彼女

揣 仁希

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悩むリョータの日曜日

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無事終業式も終わり、カラッカラの日差しの中、夏休みが始まった。
大半の生徒は、夏期講習や塾、学校の補習と忙しく過ごすのだろう。
僕は一応、勉強はすると思うが今のところ志望校の合格ラインには楽勝で届いているし推薦もあるのでそこまで焦ってはいない。
気は抜かないけど、まぁ駄目なら駄目で仕方ないと思う。


そうこうしているうちに8月4日、なのだが朝っぱらから僕のうちにはリョータが来ている。

「なぁリョータ、こんな朝早くからからうちに来てどうするだよ?」
「いや~なんか落ち着かなくてな。なんつーか、ほら小学校のときの運動会の前の日みたいな」
「よくわかんないけど、つまり夕方までうちにいるつもりなわけか」
「そうなるな」

朝食と昼ご飯をしっかりと僕の家で食べリビングでゴロゴロしていると時間はあっという間に5時。

「そろそろ行こうか?今日は水曜日だから定時で終わるなら半には来ると思うよ」
「おっ、そうか、よし!なら行こう!すぐ行こう!さっさと行こう!」
飛び起きて玄関から飛び出していくリョータ。

「おーい、リョータ?喫茶店の場所知らないだろー?」


やれやれと思い、やってきたいつもの喫茶店。

ちょっと奥の方のボックス席に座る。
「じゃあ鈴羽たちが来るまで待っていようか?」
「おっ、おう」
「そんな固くならなくてもいいんじゃない?今日くる2人は僕も知ってるけど年も近いし大丈夫だと思うよ」
「そうは言ってもな?あんな美人さんが連れてくる女の子だぞ?緊張するって」

そんなものなのかな?


「あっいたいた。おまたせ~皐月君」
そんな話をしていると鈴羽たちがやってきた。
びっくりした。もう少し時間があると思ってた。

「皐月君、久しぶり!」
「皐月君~元気してた~?」
「お久しぶりです。夏木さん、瀬尾さん」
僕とリョータの向かいの席に3人が座る。

鈴羽はいつものスーツなのだが、夏木さんはショートパンツにニーハイ+サンダルにパーカーとラフなスタイルで瀬尾さんはワンピースにストールとお淑やかなスタイルだ。話した感じも、活発とおっとりで全く違う。

「あっあの、西尾凌太といいます。リョータと呼んでください!よっよろしくお願いします!」
リョータがちょっとテンパり気味で心配だが確かに2人とも可愛いものな。

「リョータ君ね、私は夏木杏奈。杏奈でいいよ」
「私も、名前でいいですよ~瀬尾梓です~」
「このまま喫茶店ってのもどうかと思うしカラオケにでも行く?」
「そうだね、軽く何か食べてからにしようか」

というわけでカラオケに行ったのだが・・


「すごい!すごい!リョータ君、歌めっちゃ上手いんだ!」

そう、リョータはカラオケがびっくりするくらい上手いのだ。最新のポップスからアニソン、演歌まで。さらにロックでもバラードでも器用に歌いこなす。

「これは・・びっくりしたわね」
「うん。僕も知らなかったよ」

最初の緊張は何処へやら、3人で盛り上がってる。
結局3時間のうち、ほとんどリョータに2人がリクエストするカラオケになった。

「いや~久しぶりにガッツリ歌ったな!」
「びっくりしたよ、リョータがあんなに上手いなんて」
「そうそう、バラード歌われると泣けてくるよね」
「うん、かっこよかったです~」
いい感じに打ち解けてよかったよ。
このあと皆んなでケータイのアドレスを交換してこの日はお開きになった。

リョータは2人を駅まで送っていって、僕と鈴羽は僕の家に。
振り返ってこちらを見たリョータの満面の笑顔が今日の満足度を物語っていた。


「結構いい感じになってよかったね」
リビングのソファーに座ってコーヒーを飲みながら鈴羽とゆっくりする。
「そうね、リョータ君、いい子だし。杏奈ちゃんも梓ちゃんも気に入ったんじゃないかしら」
「うん、リョータにも春がくればいいんだけどね」
「でも、2人ともリョータ君のこと好きになったりしないかしら?リョータ君ノリノリで2人を見つめて歌ってたわよ?」
「いや~そんなことあるかな?」
「また明日にでも聞いてみるけど、何となく2人とも・・・うん」

それはそれで究極の選択になるな。僕も明日リョータに聞いてみよう。


「じゃあ、そろそろ帰るね」
玄関のドアの前でいつものようにキスをして鈴羽を見送る。

「リョータ君もかっこよかったけど、私は皐月君だけだよ」

帰り際、振り返ってそういう鈴羽。

「知ってるよ」

「良かった」

今日も気持ちよく寝れそうだ。







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