母の豚汁と僕らの食卓

月乃せい

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 おかずとお米、そして最後に豚汁を口にする夕星。
 幸せそうな表情が、豚汁を口にした途端……ガラッと真顔に変わった。

 ……どうだ?

「……これ、お兄ちゃんが作ったの?」

「そうだよ。美味しいか?」

「……うん、美味しい。いや、それよりも、これ……」

「ん?」

「……お母さんの豚汁だ」

 目を真ん丸にさせていた夕星の真剣な表情は、もうひと口を啜った後、にこやかな顔に変わった。

「すごいすごい! お母さんの豚汁の味だ!」

 味の染みた具材を口いっぱいに頬張り、目を垂らして喜ぶ。
 夕星が喜んでくれて……泣きそうになった。
 兄として、泣いているところは見せたくない。

 涙目になっているのを気づかれないように、なるべく下を向いた。

 すると、勢いよく食べ進めていた夕星の手の動きが、次第に遅くなっていくのに気がつく。

「……夕星? どうした?」

「お兄ちゃん、この前はごめんなさい」

「この前?」

「お母さんを思い出しちゃって、泣いちゃったこと」

「そんなの、謝ることじゃないよ。寂しくなっちゃったんだもんな」

「……僕、お母さんが死んじゃったって、ちゃんとわかってるよ。でも、やっぱり信じられなくて……」

 ……夕星のやつ、僕が思っている以上に……成長しているんだな。
 僕を困らせてしまったって、反省しているんだ……。

「いいんだ、気にするな。夕星のために、お母さんの豚汁が作れて良かった」

「……うん! 僕も嬉しい! やっぱりお兄ちゃんは、お兄ちゃんじゃないや!」

「お兄ちゃんじゃない? あ、おねーちゃんって言いたいんだろう?」

「ううん、違う! お兄ちゃんはね……お母さん!」
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