9 / 10
⑨
しおりを挟む
おかずとお米、そして最後に豚汁を口にする夕星。
幸せそうな表情が、豚汁を口にした途端……ガラッと真顔に変わった。
……どうだ?
「……これ、お兄ちゃんが作ったの?」
「そうだよ。美味しいか?」
「……うん、美味しい。いや、それよりも、これ……」
「ん?」
「……お母さんの豚汁だ」
目を真ん丸にさせていた夕星の真剣な表情は、もうひと口を啜った後、にこやかな顔に変わった。
「すごいすごい! お母さんの豚汁の味だ!」
味の染みた具材を口いっぱいに頬張り、目を垂らして喜ぶ。
夕星が喜んでくれて……泣きそうになった。
兄として、泣いているところは見せたくない。
涙目になっているのを気づかれないように、なるべく下を向いた。
すると、勢いよく食べ進めていた夕星の手の動きが、次第に遅くなっていくのに気がつく。
「……夕星? どうした?」
「お兄ちゃん、この前はごめんなさい」
「この前?」
「お母さんを思い出しちゃって、泣いちゃったこと」
「そんなの、謝ることじゃないよ。寂しくなっちゃったんだもんな」
「……僕、お母さんが死んじゃったって、ちゃんとわかってるよ。でも、やっぱり信じられなくて……」
……夕星のやつ、僕が思っている以上に……成長しているんだな。
僕を困らせてしまったって、反省しているんだ……。
「いいんだ、気にするな。夕星のために、お母さんの豚汁が作れて良かった」
「……うん! 僕も嬉しい! やっぱりお兄ちゃんは、お兄ちゃんじゃないや!」
「お兄ちゃんじゃない? あ、おねーちゃんって言いたいんだろう?」
「ううん、違う! お兄ちゃんはね……お母さん!」
幸せそうな表情が、豚汁を口にした途端……ガラッと真顔に変わった。
……どうだ?
「……これ、お兄ちゃんが作ったの?」
「そうだよ。美味しいか?」
「……うん、美味しい。いや、それよりも、これ……」
「ん?」
「……お母さんの豚汁だ」
目を真ん丸にさせていた夕星の真剣な表情は、もうひと口を啜った後、にこやかな顔に変わった。
「すごいすごい! お母さんの豚汁の味だ!」
味の染みた具材を口いっぱいに頬張り、目を垂らして喜ぶ。
夕星が喜んでくれて……泣きそうになった。
兄として、泣いているところは見せたくない。
涙目になっているのを気づかれないように、なるべく下を向いた。
すると、勢いよく食べ進めていた夕星の手の動きが、次第に遅くなっていくのに気がつく。
「……夕星? どうした?」
「お兄ちゃん、この前はごめんなさい」
「この前?」
「お母さんを思い出しちゃって、泣いちゃったこと」
「そんなの、謝ることじゃないよ。寂しくなっちゃったんだもんな」
「……僕、お母さんが死んじゃったって、ちゃんとわかってるよ。でも、やっぱり信じられなくて……」
……夕星のやつ、僕が思っている以上に……成長しているんだな。
僕を困らせてしまったって、反省しているんだ……。
「いいんだ、気にするな。夕星のために、お母さんの豚汁が作れて良かった」
「……うん! 僕も嬉しい! やっぱりお兄ちゃんは、お兄ちゃんじゃないや!」
「お兄ちゃんじゃない? あ、おねーちゃんって言いたいんだろう?」
「ううん、違う! お兄ちゃんはね……お母さん!」
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる