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第50話 ピッチャーなんだよ
しおりを挟む「お前、なんで野球部に戻ってきた。
なんで高校でも野球を続けようと思った。
野球が好きだからじゃないのか?」
「・・・」
「大村に辛く当たるのは、あいつが昔のお前に似てるからじゃないのか?
児玉に辛く当たるのは、あいつがへたくそなくせに
めげずに野球と真っ直ぐに向き合ってるからじゃないのか?
結局、お前は自分にできないことをやってるあいつらを見て
自分への苛立ちをあいつらにぶつけてるだけじゃないのか?」
「うるせぇ!お前に何がわかるんだよ!」
「わかるさ!俺はお前の女房役だったんだぞ!
お前の球をずっと受けてきたんだぞ!」
しばらく沈黙が続いた。
そして、上山が口を開いた。
「お前は大村の球を受けられる。
でも俺はもう、あの球は投げられねぇ」
「上山・・・」
「俺はピッチャーなんだ!ピッチャーなんだよ!」
上山はボールを強く握りしめた。
「すまん・・・
オレはたとえ投げられなくても
お前は野球をやりたいんだと思っていた。
だから野手としての復帰も勧めた。
でも、オレが間違ってたみたいだな」
「・・・」
「だったら、もう辞めろよ。
野球はピッチャーだけじゃない、9人でやるもんだ。
9人じゃなきゃできないんだ」
そう言うと、オレは部室をあとにした。
「くそっ!」
上山がボールを壁に投げつける音が聞こえた。
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