けいちゃんと私、ときどきうみちゃん

里見しおん

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「さっきの話なんだけど、神の子の夫になれってなに? けいちゃん、本体は男の人だよね?」


 みじん切りにした玉ねぎを炒めながら、隣でピーラーでじゃがいもの皮を剥く慶に聞いた。


「ちゃんと男の人よぉ。あの頃は髪が長くて、白い袴しか着るものも持っていなくて、村では女だと思われていたみたいねぇ。守り神様から言葉を覚えたから、この話し方だし。義父さんったら逃亡途中の峠道で立ちションしたら驚いてたわぁ、おほほ!」

 慶が愉快そうに笑う。
 美人な慶はきっと、たいそうな美少年だっただろう。
 長い金髪の美少女、と思いきや立ちション……そりゃあびっくりである。


「じゃあほんとは、男の人が好きってわけじゃ、ないの?」


 布団を並べて寝たのは、本当は危険行為だったのだろうか?
 七海はちょっとだけ不安になりながら聞いた。


「……うーん、男の人も、好きなのよ。わたしの初恋はかっこよく連れ去ってくれた義父さんよぉ。ナイショよ、ナイショ! じゃがいも、ぜんぶむいたわよぉ。ゆでる?」


「うん! 玉ねぎもうよさそう、どけるね」


 フライパンを持った七海がどけて、慶が鍋をコンロにかける。
 ポテトサラダにするのだ。

「けいちゃん、玉ねぎ冷めるまでテーブルに置いとくから、気をつけてね」


「わかったわぁ」


 ボウルにうつしたほうがいいのはわかっているが、めんどうなのでフライパンごと冷めるのを待つ。
 まだ夕飯には早いし、ゆっくりでいいのだゆっくりで。


「そろそろいいかしらぁ」


 のんびりと冷たいお茶を飲みながらじゃがいもの茹で上がりを待つ。
 時間を見て慶がじゃがいもを皿にひとつ取り、菜箸で刺す。


「まだまだ」

「あらっまだ?」

 鍋に戻してまたしばらく茹でる。


「そろそろ」

「まだまだ」

「あら、まだ?」

 慶がそわそわし始めた。
 きっと慶の家のポテトサラダはこんなに長い時間茹でないのだろう。


 もう一回まだまだのやり取りをし、鍋を傾け湯を捨てる。
 その鍋を火にかけ、水分を飛ばしていく。


 へらで潰せるほど柔らかくなったじゃがいもにマヨネーズを混ぜると、慶は「これ、ポテトサラダ? コロッケの具じゃない?」と戸惑っていた。

 母の味である。

「お母さんのポテトサラダなの」


 切ったハムを入れ、最後に塩胡椒。


 お兄ちゃんも大好きな、お母さんのポテトサラダ。
 母を忘れた晃は、今では七海のポテトサラダは最高だよなって笑って言うのだ。






 それが、いつもとても悲しいのだ。
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